見出し画像

賢者が教える25の物語 (植西 聰)

 この本もタイトルが気になって読んでみたものです。

 内容は・・・といえば、かなり物足りないと感じる人が多いと思います。
 25の物語といっても、ごく簡潔な小文で、その中から抽出された教訓も極めてステレオタイプな指摘に止まっています。また、紹介されている実例も、言い方は適切ではありませんが、稚拙なものが多く切迫感が感じられません。

 とはいえ、本書を読んで改めて思い起こす教訓ももちろんありました。
 たとえば、沢庵禅師の「傾聴」について採り上げた章から。

(p69より引用) 彼はよく弟子たちに向かって、「聞くとは、人を尊ぶための妙法なり」を口ぐせにしていたといいます。・・・
 その観点からいえば、相手の話を親身になって聞くという行為は、まさに目の前の人を大切にするための最善の方法といっていいのかもしれません。

 あと本書で気になったフレーズといえば、孔子(論語)からの教えである「万象我が師」でしょうか。

 子の曰わく、我れ三人行なえば必らず我が師を得
 其の善き者を択びてこれに従う
 其の善からざる者にしてこれを改む

 「万象我が師の精神で生きる」という姿勢を薦めるこの言葉は、シニカルな言い様ではありますが、本書を読むことの意味としても振り返るべき箴言です。

 さて、最後に正直な感想です。

 本書を読むのであれば、本書に登場する人物、すなわち、釈迦をはじめ、孔子・老子・空海・道元・一休・天海・沢庵・白隠・良寛・林羅山・徳川光圀・新井白石・荻生徂徠・水野南北・吉田松陰・二宮尊徳・福沢諭吉・中村天風らに関する本を、なんでもいいので1冊手に取った方がためになると思いますね。

 部分的な引用から過度に一般化・大衆化された教訓的フレーズを求めるのは、やはり安直です。本人の著作丸ごとでなくてもいい、簡単な解説本でもいいので、その人物の思想を辿ってみることは大切だと思います。



この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?