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ぶらりミクロ散歩―電子顕微鏡で覗く世界 (田中 敬一)

 著者の田中敬一氏は鳥取大学名誉教授、顕微解剖学の専門家です。
 自宅に電子顕微鏡を配備した研究所も開設しており、走査電子顕微鏡の世界的権威としても著名な方とのこと。

 著者は、その自宅の電子顕微鏡を駆使して、ごくごく身近な身の回りの世界の中で興味を持ったものをあれこれ覗いてみます。
 アリの口、ミジンコ、納豆、梅干、エビの目・カニの目、湯豆腐、シタビラメの鱗・・・ そこには、私たちの想像を超えたとても興味深い驚きの光景が顕れ出てきます。

 本書は、そういった数々の電子顕微鏡写真を材料にしたエッセイ集です。写真を眺めるだけでも楽しめますし、ユーモアに富んだ著者の小文も秀逸です。

 たとえば、「貝のボタンと模造のプラスチックボタン」を見比べた「シャツのボタン」という小文の一節です。

(p49より引用) その微細構造の美しさという点では、まったく及びもつかないことがわかった。つまり、このことに関しては、人間の技術は「有殻軟体動物」の力に到底かなわないということである。
 ・・・動物の系統図では下等とされる動物が、人類に真似のできない素晴らしい能力をもつことを知る機会になった。

 百聞は一見に如かず、顕微鏡下に現れる興味深い姿を目にすると、生物の造型の深遠さを思わずにはいられません。
 電子顕微鏡の素晴らしさは、立体像を確認できることですね。ミクロの世界のリアリティは圧巻で摩訶不思議です。



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