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超凡思考 (岩瀬 大輔・伊藤 真)

 現在、司法試験用の塾を主宰している伊藤真氏と、ネット生命保険会社の副社長岩瀬大輔氏という師弟コンビの著した本です。

 内容は、二人の思考法・表現法等を開陳したHow Toです。
 残念ながら、これといって特に目新しい気づきはありませんでしたが、いくつかのフレーズを覚えに記しておきます。

 まず、「自分の弱点を直視すべき」とのアドバイスにおいて、岩瀬氏が紹介しているある投資家の言葉です。

(p32より引用) 僕は、誰よりも早く間違いに気づくことができるし、また間違いを認めることができる。大切なのは真実にたどり着くことであって、そのための力が必要なんだ

 次に、「専門性を大事にせよ」との主張のなかで述べられている岩瀬氏の一人立ちするための王道です。

(p45より引用) どんなに狭いニッチな分野であっても、そこを極めれば、必ず道は拓けるものだと実感しました。・・・まずは狭い分野で認められることが先決ではないでしょうか。認められれば、その後、必ず世界は拓けて、いろいろな分野に乗り出すことができます。

 どんな些細なことにも全力を尽くす。そこで自信をつけ認められることが次の躍進の第一歩になるという考え方です。特に、入社したての若い人に伝えたい姿勢ですね。

 昨今のネット社会では、玉石混淆の大量の情報を入手することができます。その中から如何にして自分にとって意味のある情報を抽出することができるか。岩瀬氏は、有益な「情報の集め方」についてもコメントしています。

(p122より引用) いかに自分でテーマを設定するかです。ひとつあるいは複数のトピックを予め自分のなかに設定しておくと、さまざまな経験をしたり、読み聞いたりする際にそのトピックに関連する情報が自然と自分に集まってきます。

 そして集まってきた情報に「so what?」と問いかけて、具体的に役立つ点を掘り出していくというやり方です。これは、コンサルタントの基本的なHow Toですね。

 さて、師匠格の伊藤氏のコメントに移りましょう。
 伊藤氏の説く「伝える技術」です。

(p174より引用) コミュニケーションの本質は、相手が聞きたいこと、知りたいこと、欲しているものしか伝わらない点にあります。・・・
 話す力とは、言い方を換えると、相手の求めているものを読み取る力、感じ取る力と同義です。

 伊藤氏は、伝えたいことを確実に伝える、つまり相手に「理解」させさらに「納得」させるためには、内容に「客観性」が必要だといいます。
 その「客観性」をもたせる一つの方法が「リーガル・マインド」の考え方です。

(p192より引用) 法律の世界では、絶対的な真理は端から存在しません。よって、いろいろな考え方に対してまず敬意を払う姿勢が求められます。ひとつの学説に対して、それを唱える学者や識者に対して、一定の配慮を示したうえで、「この説によれば〈確かに〉こうです。〈しかし〉私はこう考えます。〈従って〉・・・」いうパターンでものを考えます。

 著者たちは、最近のベストセラーとなっているビジネス書にみられるいわゆる「仕事術」には懐疑的です。

(p208より引用) 伊藤 結局、いちばん大切なことは、たくさんの知、たくさんの情報のなかで、自分は何を取り入れるべきか。そこの見極めではないでしょうか。・・・
 あくまで自分が主体ということを忘れない。そこをきちんと知る。

  本書も、内容は間違いなく「How To本」です。
 しかしながら、多くのHow To本と一線を画すのは、著者たち自身が「自著の方法論はあくまで参考であり、読者自身で自分に適した方法を見出すことを薦めている」という点でしょうか。



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