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今昔物語集 (日本の古典をよむ 12) (馬淵 和夫)

 「今昔物語集」は、平安時代末期ごろに編纂された古代の説話集です。
 全31巻、1,000を超える説話が、「天竺」(インド)、「震旦」(中国)、「本朝」(日本)の3部に分けられ採録されています。また、その各部は仏法部と世俗部に大別されています。

 本書は、今昔物語集の入門書として、巻11以降の「本朝」の部から37の説話を紹介しています。
 芥川龍之介の「羅生門」や「鼻」「芋粥」といった作品のモチーフになった説話も含まれています。能の「道成寺」、浄瑠璃の「道成寺現在蛇鱗」、歌舞伎舞踊の「京鹿子娘道成寺」につながる説話(巻14ノ3「道成寺の僧、法華経を写して蛇を救うこと」)も有名です。

 説話のカバレッジは広汎で、仏教説話から有名人の伝記・武勇伝、怪奇・滑稽譚等々・・・、公家・高僧から庶民、また鬼や龍といった超自然的存在・想像上の生物も登場し、とにかくバラエティに富んでいます。

 今回読んで初めて知ったのですが、聖徳太子や弘法大師空海、清少納言の夫の橘則光、紫式部の父親の藤原為時、陰陽師の安倍清明といった歴史上の有名人にまつわる説話も見られます。

(p16より引用) 今昔、聖徳太子、此朝に生れ給ひて、「仏法を弘めて此の国の人を利益せむ」と思給ければ・・・

 千年前の説話集ですから、当時の歴史・社会背景を反映したその時代ならではの感覚・感性の表れもあります。反面、千年という時の隔たりを感じさせない「いつの世も同じ」といったテーマのものも数多く見られます。(こちらの方が面白いですね)

 さて、多くの作品の中で、特に興味を惹いたものを強いてひとつ挙げるとすると、私の場合、巻28ノ1「近衛の舎人の重方、稲荷詣で女に会うこと」でした。内容は、・・・、どうぞお読みになってください。

(p253より引用) 妻、「穴鎌ま、此の白物。・・・」と云てぞ、妻にも被咲ける。

 こちらは、「いつの世も同じ」という内容です。


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