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部下を伸ばすコーチング-「命令型マネジメント」から「質問型マネジメント」へ (榎本 英剛)

 「コーチング」は数年前に一時期かなり流行りました。最近は一時ほど聞かれませんが、実際、コーチングの重要度は近年の方がむしろ増しているように思います。

 以前にくらべて事業環境の変化は、より早く激しくなっています。過去の成功体験は役に立たず、ますます「答えのない時代」になってきています。
 こういった状況の特徴として、著者は、「マネジメントの答えは、経営者や上司ではなく、社員や部下にある」と指摘します。「答えがある場所」は、上司ではなく部下、生産者ではなく消費者、本社ではなく現場だというのです。「川上と川下の逆転現象」です。

 「答えの所在地」が上司の中にない、個々の社員の中にあるとすると、それを引き出す仕掛けが必要になります。従来型の「指揮命令」は上から下へのベクトルです。これでは押し付けることはあっても、引き出すことはできません。
 本人も気づいていない「内在する答え」を引き出すには、社員一人一人に合わせた「ワン・ツー・ワン・マネジメント」が求められます。その具体的な方法のひとつが「コーチング」だというわけです。

 本書では、「コーチング」の基本コンセプトの説明に続いて、具体的なコーチング技術を略説しています。
 まずは、「コーチング」の基本的なコンセプトを3つの哲学として示しています。

(p55より引用) コーチングには「三つの哲学」と呼ばれるものがあります。それらは、①「人は皆、無限の可能性を持っている」②「その人が必要とする答えは、すべてその人の中にある」、そして③「その答えを見つけるためには、パートナーが必要である」の三つです。

 さらに、著者は、コーチングの技術体系として5つのコアスキルを紹介しています。

 ・質問のスキル
 ・傾聴のスキル
 ・直観のスキル
 ・自己管理のスキル
 ・確認のスキル

です。

 それぞれのスキルの説明には、それぞれ具体的なコーチング(部下と上司との会話)の「良い例」「悪い例」が示されています。この具体例は理解を助けるのに非常に有用です。

 ただ、実際の会社では、この「良い例」「悪い例」の中間的なシーンがでてきます。そういう場合に行き当たったとき、我慢できずに従来型の「指令命令型アプローチ」となってしまうか、「質問型アプローチ」でサポートに徹することができるか・・・
 そこのところの対応如何が、コーチングの成否の分水嶺です。これは、何度も経験して身につけるしかないのでしょう。(私も、つい、「これは、こうだよね」とかと言ってしまいます。まだまだです・・・。)

 コーチングの効用のひとつは、「組織の活性化」です。

(p180より引用) コーチングの導入がもたらす究極的な変化は、・・・その組織の中で働く一人一人が、他人から言われないと動かない「依存型人材」から、自分の持てる能力や可能性を最大限に発揮できる「個立型人材」に変わることです。

 コーチングにより、「指示待ち」「依存型」のメンバが自立して、「自ら考え、自ら動く」人材に変わることは、組織にとっても望ましいことですし、何より当の本人にとってHappyなことです。


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