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ウルトラマンになった男 (古谷 敏)

 いつも行っている図書館の返却棚にあった本です。

 私は、まさに「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」で育った世代なので、タイトルを見た瞬間に手を出していました。

 著者は、初代ウルトラマンを演じた古谷敏さんです。
 私にとってのTV番組のルーツでもある「ウルトラマン」の製作にまつわるエピソードがそれこそ山のように紹介されています。

 古谷さんは、最初、東宝ニューフェースに合格した俳優の卵で大部屋俳優。その古谷さんは、1966年2月、特撮美術デザイナーの成田亨氏にこう言って口説かれました。

(p30より引用) 「このヒーローは、ビンさんのためにあるんだよ。・・・ビンさん、ただ背が高いだけじゃ、だめなんだよ。手の長さ、脚の長さ、頭の小ささ・・・、全体のバランスのいい人は、なかなかいないんだよ。それに中に入って演技ができないとダメなんだよ。ビンさんがやったら、きっとかっこいいウルトラマンができるんだよ。・・・隊員役は誰でもできるんだよ。でもウルトラマンは、古谷敏にしかできないんだよ

 しかし、ゴムの着ぐるみを着てのアクションはそれは大変だったとのこと、ゴジラ俳優として有名な中島春雄さんとの絡みは特に激しいものだったそうです。ちなみにゴジラを流用したことで有名なジラース(第10話「謎の恐竜基地」)は、やはり中島さんが演じていました。

 また、こんなくだりもありました。

(p130より引用) 「金城さん、最近怪獣を殺すの、嫌になってきました。・・・たまには殺さないで、宇宙に帰してやりたい。金城さん、そんなやさしいウルトラマンがいてもいいじゃないですか

 そして、制作されたのが、第30話「まぼろしの雪山」第35話「怪獣墓場」でした。私にとっても、ウーシーボーズは、今でも強く記憶に残っている怪獣です。

 この古谷敏さん、次のウルトラシリーズである「ウルトラセブン」では、念願かなってウルトラ警備隊のクールな知性派「アマギ隊員」役で登場しています。こういう配役の妙もいいものです。
 しかし、決して演技が上手いとはいえなかったですね、ただ実直で心優しい人柄はその表情に溢れ出ていた印象があります。

 本書もそうです。それこそたくさんの苦労をされたのでしょうが、それを過度に飾るのではなく、さらりと軽く書き流しながら、それでいて周りの人たちへの感謝の気持ちが十分に伝わってくる語り口でした。

 しばらくの空白期間を置きながら、桜井浩子さん(ウルトラマン 科学特捜隊のフジ・アキコ隊員役)やひし美ゆり子さん(ウルトラセブン ウルトラ警備隊の友里アンヌ隊員役)らとの交流が今に続いているのも、当時のメンバのチームワークの良さと古谷さんの人柄によるところなのでしょう。

 ちなみに、この本をきっかけに、ひし美ゆり子さんのブログ(あれから50年…アンヌのひとりごと)を見たのですが、失礼ながら70歳代とは信じられない若々しさで驚きました。



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