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組織を天才にするには?|52冊目『Organizing Genius-The Secrets of Creative Collaboration』

Warren Bennis, Patricia Ward Biederman(1997,  Basic Books)



英語の本に挑戦!

数年前から年1回、TOEICにチャレンジしています。
もともと英語は得意でも好きでもなかったので、中学英語の基礎からやり直してみました。

リスニングは徐々に点数が取れるようになってきたのですが、リーディングの点数がまったく上がりません。
日本語でもときどきそうなのですが、おそらく僕は勘が悪過ぎるのでしょう。
単語の意味はわかっても、それが文章になると「チョット何言ッテルカワカンナイ」ってなってしまうのです。
一回で理解できないから読むのに時間がかかり、だいたい毎回、リーディングテストは100問中、15問くらい残してタイムオーバーです。

これは、今までに読んだ英語のボリュームが圧倒的に足りないんだろうなと思いました。
そして、これから積極的に英語の本を読むことにしました。


自分は経営学では組織論が専門なのですが、昨年『産学連携教育イノベーター育成プログラム』を受講して以来、リーダーシップ論についてもう少し学びたいと思っていました。
まあ、組織とリーダーシップの関係は深いですから。

リーダーシップの研究者、ウォーレン・ベニス先生の本を読もうと決め、ちょうど良いと思ったので、英語版を探して電子書籍で購入しました。

その本の内容に興味があれば、たとえ英語であっても頑張って読もうという気になって、苦痛にはならないだろうと思ったわけです。

加えて、Kindleには英和辞書の機能がついていて、読んでいてわからない単語があれば、Kindle上で単語を選択するだけで、その場ですぐに意味を調べることができます。
家や職場などWiFiが飛んでいるところなら、翻訳機能やWikipediaも使えます。

とはいえ、日本語で読む3倍くらいの時間がかかって、(そして半分くらいは内容を理解できていないのですが)ようやく読み終えることができました。


7つのグレートグループ

この本の電子書籍版の発行は2007年なので今から17年前ですが、本の中身が書かれたのは1997年なので、今から27年前となります。

グレートグループとして紹介されている7つの企業や組織。

ウォルト・ディズニースタジオやAppleなど、誰もが名前を知っている組織もありますが、PARCやスカンク・ワークス、ブラック・マウンテン・カレッジなど、あまり自分には耳馴染みのない会社やグループも登場します。
それがかえって新鮮でした。

PARCはコピー機のゼロックスが1970年に開設したパロアルト研究所(Palo Alto Reserch Center)のことで、PARCは頭文字を取った略称です。
かのアラン・ケイが在籍していた研究所です。

スカンクワークスはロッキード・マーティン社の一部門です。
ロッキードと聞いて思い出すのはロッキード事件ですが、ロッキード社とマーティン・マリエッタが合併してできたのがロッキード・マーティン社で、ステルス戦闘機の開発・製造で有名なのだそうです。

ブラック・マウンテン・カレッジとは初めて聞いた大学の名前ですが、なんとジョン・デューイの教育論が基盤となっている大学で、バウハウスが1933年に閉校した後、その影響を受けて1933年から1957年まで24年間教育活動を行なっています。
実験音楽家、作曲家のジョン・ケージもブラック・マウンテン・カレッジで教鞭を取っていました。

他には、1992年のビル・クリントンの大統領選を支援したチームと、第二次世界大戦中の原子爆弾開発計画、オッペンハイマー率いるマンハッタンプロジェクトの事例が紹介されています。

軍事関係や政党関連の組織が半分で、そのラインナップを見たときに、チームとして優秀なのかもしれないけれど、倫理観、道徳観と、そこからつながるモチベーションはどうなのだろうと思いました。

 


Organizing Genius


27年前に書かれているので、だいぶ昔のアンケートですが、「今後10年間で組織に最も大きな影響を与えるのは誰か?」という問いに対して、一人のリーダーと回答したのは14%で、その数字を大きく超える61%の人がリーダーチームと答えたそうです。
一人のリーダーではなくて、リーダーグループを創造できるリーダーの登場が昔から望まれていたようです。

僕は50歳代後半ですから、少しは管理職の経験もあります。
とはいえ、大きな企業にいたことはなくて、我が道を行く出世しないタイプでもあり、せいぜい4、5人のチームをまとめていたに過ぎません。

チーム力や集合知というものをまるで信用していなくて、なんでも自分でやろうとするダメなリーダーでした。
自分自身のスキルや能力を上げることだけにフォーカスして、チーム力はいつも軽視してきました。

しかしようやく今になって、単独の個人能力の限界とチームづくりの価値に気がつきました。
そんな気持ちの変化から、天才の集まりのチームではなくて、Organizing Genius:組織を天才にするという考え方にはとても興味を持ちました。


グレートグループの15の原則

7つのチームの事例が紹介されているのですが、英語を半分くらい理解できていないので、その内容が、チームを肯定しているのか否定しているのか、今ひとつ明確でないまま読み進めました。

最終章は「These are the fifteen top take-home lessons of Great Groups」で、「偉大なグループからこんなことが学べます」ということが説明されています。
あらかじめ何が良いのか、結果が前提としてわかっていれば、英語も理解しやすいと思いました。

15の原則の原文は一番下のメモ書きの写真にある通りです。

まず、第一に偉大さは優秀な人々からはじまるとあります。
そして優秀なチームには偉大なリーダーが必要で、偉大なリーダーは能力がある人々を好み、そうした人たちを探してくるのだそうです。

もともと優秀な人たちが集まったチームですが、リーダーとメンバーはお互いを尊敬し合ってさらに高め合います。

そして神から与えられたミッションを果たすため、誇りをもって働きます。

というのが前半の6項目に書かれている凡そのことです。

たまたまなんとなくそこにいるスタッフたちで何かをするのではなくて、チームのミッションに基づいて、それに相応しい才能ある人たちを集めてチームをつくるって発想は、『オーシャンズ11』や『コンフィデンスマン』など(詐欺師ばっかり😅)を想起させ、映画的で、ドラマチックで、自分が会社をつくるならそうしたい!と思っていましたが、そもそもリーダーとなる自分に才能があるかという問題もあるし、能力のある人を集めるには、リーダーやそのチーム、あるいはチームのミッションに魅力がなくてはならないと思います。

才能を集めるのではなくて、自分の目の前にあるチームのメンバーそれぞれの強みを引き出し、チームとして創り上げ、チームが発揮する力がメンバー個々の能力の単純な合計を超えるものにするにはどうしたら良いかが気になるところです。

そんなことが書いていないかなと思いながら、後半の項目を見ていきましょう。

グレートグループは孤島として独立しているが、本島と橋でつながっている。
偉大なグループは自分たちを勝ちに向かう負け犬として捉えている。
グレートグループにはいつも敵がいる。
グレートグループのメンバーは目隠ししている。
グレートグループは楽観的であり、現実的でない。
グレートグループはメンバーの適材適所を理解している。
グレーグループのリーダーはメンバーを不要なことから解放する。
Grate Groups ship
偉大な仕事はそれ自体が報酬。

グレートグループはイノベーションを起こすチームであるので、凡庸な理屈でその芽を摘まれないように孤島として独立させて守る必要があります。
よく聞く話です。

「underdogs=負け犬」と卑屈になる意味がわかりませんが、IBMに立ち向かうAppleの例が出されているので、巨大な権威に立ち向かうチャレンジャー精神みたいなことを言っているのかと思います。

「グレートグループのメンバーは目隠ししている」というのもよくわからない表現ですが、仕事に取り憑かれて、仕事が楽しいあまり他のことが見えなくなっているという意味のようです。
でもそれっていいことなんでしょうか?

楽観的であるべき、適材適所、雑務を整理して重要なことに注力させるというのはその通りだと思います。

「Grate Groups ship」というのは、一番わからないのですが、「成功する協働は夢もあるけど締め切りもある」という話からはじまって、最後はスティーブ・ジョブズの「Real artsists ship」ということばで締めくくられています。
才能を運ぶ船という意味なのでしょうか。

そして「仕事自体が報酬である」ということは理想ですね。
とても共感できます。


こうして見てみると、なかなかグレートグループへの要求は高く、厳しさがあって、そしてなんとなく軍隊的なイメージがあるなと感じました。
書かれた時代のせいもあるのでしょう。

昨今求められている、心理的安全性とか人的資本経営とかち切り口が違う印象を持ちました。

特別なリーダーのもとに特別なメンバーが集められて、特別な働き方をしているからグレートグループのようです。

地位や名声のためじゃなく、ミッションの実現のためプライドとチャレンジ精神を持ってがむしゃらに仕事する。
そんな仕事の仕方は理想なんでしょうけど、ハードルも高いですね。

グレートグループの15の原則


最後までおつきあいいただきありがとうございました。
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