「GIGAスクール構想の現状と課題、これからの展望」について語ります!/今窪 一太(いまくぼ かずた)トークセッション#003
ES-TV note 【2022.3.31ライブ配信】
GIGAスクール構想について、2人のゲストと共に考える
先生を助けることを目的として、外部から学校を支える活動をめざしている(一社)EDUCATIONAL SUPPORT(ES)はその活動の一つとしてES-TVのオンエアをスタートしました。
第3回目ES-TVのテーマは、GIGAスクール構想。
柏市教育委員会 教育研究専門アドバイザーの西田光昭先生と千葉県地域IT化推進協議会データ活用部会長、(株)Colabo-ya代表取締役の白澤美幸さんのお二人をゲストに楽しいトークセッションとなりました。
GIGAスクール構想実現のための具体的な方法と現状の課題
ーーGIGAスクールの構想とは、簡単に言うとどういうことなのかを教えていただけますか?
西田:以前のOECDのPISA調査から、日本では、遊びというかプライベートなところではコンピュータをよく利用しているのですが、学習の場面で使われていないという結果がありました。
これからの子どもたちに必要な能力は何かを考えると、主体的に自分で意思決定をし、行動できるようになって欲しいということがあります。
そのための力をつけたいと考えています。
これからの世の中では、学校にいる間だけ学習するのではなくて、生涯にわたり学習し続けることが必要ですが、そのための基礎づくりのために今、子どもたちに「GIGAの環境が必要である」というのが、GIGAスクール構想の根本になっています。
具体的には1人1台の端末、そして高速なネットワーク、クラウド活用が言われているところですね。
クラウドを使って、学校はもちろん、事情で学校に来られないお子さんや、家庭から、あるいは地域の方も、クラウドでつながることで子どもたちの学習を支えていくことができるんじゃないかと考えられています。
ーー地域や学校間では、どのような状況があるのでしょうか?
西田:先進的に実施できているところと、まだまだ取り組めていないところの差が大きいという現状があります。
過去に、多くの先生たちが経験したことのないことなので、「何はともかくまず使おう」という呼びかけで動き出した学校や地域はあります。
一方で、「どう使ったらいいのだろう」と躊躇し、「問題が起きたら困る」という考え方をしてしまう学校や地域は動き出すことができません。
そうしたマインドの違いによって差がついてきているのが今の状況ではないでしょうか。
それにともなって、子どもたちの学びの環境に非常に差が開いてきていることを感じています。
小中学校は文部科学省の予算で1人1台端末が導入できていますが、高校には予算が付いてないので不安が大きいというところです。
白澤:私は地域の活動から子どもたちの学びに関わっています。
地域でいえば、学童であるとか、地域の公民館とか、そうした子どもたちの学校の外で関わる場所でもGIGAスクール構想は関係していて、子どもたちが学校からタブレットを持って帰ってきているところで、その対応に迫られている状況があります。
高校も含めてなのですが、地域格差というか学校格差はすごく出てきていると私も感じております。
保護者が積極的に支援をすることで、学校のICT化というか、GIGAスクールが進んでいるところもありますし、先生たちが様々なアイディアを出して、ICTを取り込んだ授業になっている学校もあります。
今窪:私が勤務していた学校は、通信制高校なのでそもそもIT機器を使うということについてハードルが高くなかったと思います。
レポート課題等を提出する際には、すべての生徒がネット上で提出をしていました。
GIGAスクール構想が言われる前から、すでにiPadを1人1台購入してもらい、授業で使用していました。
そのため、コロナ禍においても、授業が遅れたりということはなく、比較的スムーズに遠隔授業もできていたと思います。
これからの先生の、子どもたちとの関わり方
ーー学校や地域によって取り組みの違いがあるということですが、先生たちの意識の違いなど、西田先生と白澤さんが思うことはありますか?
西田: 私も教員だったときはそうでしたが、学校の先生は、すべてのことを自分がコントロールしたいというか、うまく動かさなくていけないという使命感を昔から持ってるんですよね。
例えば、私が関わった学校でこんな先生がいらっしゃいました。
図工の先生で従来の図工の指導能力は非常に高いのですがプログラミングは得意でない、得意でないプログラミングを知ったか振りをして、無理に一方的に教えるのではなくて、自分はプログラムは得意ではないことを子どもたちに宣言して、子どもたち同士で学び合わせて、発想を引き出したり、つなげたりするというファシリテーションに徹していました。
こうしたスタイルの関わり方はGIGAの環境での学びに合っています。
最初は先生が何かを教えるところもありますが、あとは子どもたちの活動をどう支えていくかが重要です。
先生が知っていることを子どもに教えるのが教育で、そうじゃないと先生の仕事はダメなんだ、先生の役割はそこなんだ、という従来の考えに固執していたら、現在の環境に入っていくのは非常に難しいと思います。
先生にも知らないことがある、子どもたちをつないで方向付けをしたり、価値付をしたりするところに先生の役割があると考えられれば適応できます。
しかし、その転換が一番難しいのかなと思います。
先生個人だけでなく、学校という組織、教育委員会の課題も同様だと思います。
白澤: 市によってはICT支援員として外部の人を学校に入れて、先生たちのサポートをしています。
しかし先生たちは、ICT支援員にどう質問したら良いのか、何を聞いたらいいのか、聞いていいものなのかいけないものなのか迷っている、という状況も耳にします。
おそらくそれは慣れの問題であり、直に解決するのでしょうけど、新しいことに対する抵抗や、ICT導入など環境の変化によって学びが変わるんだという気持ちの切り替えができていないということを外から見ていて感じるところです。
私たちにできること
ーーEDUCATIONAL SUPPORTが、外部から教育環境を支えていく立場としてできることはあるでしょうか?
西田: 学習の考え方が、学校だけでは完結しない、生涯にわたって学び続けるための基礎力をつけるのが学校なんだ、という考え方に変わってきていると思います。
そうであれば、子どもたちは、学校の中で、社会で起きることを経験しなくてはなりません。
学校であっても、良いことばかりではなくて、悪いことも経験します。
私たちは、悪いことを経験させないようにしようではなくて、もし、望ましくない経験をしてしまったら、それをどう学習の糧にするかと考えるべきなのです。
学びの環境が変化しているので当然、授業のスタイルも変わりつつあります。
それを従来の価値観で見て、よくない授業だ、と思う保護者はいますし、教員でさえ理解できない人がまだ多くいます。
どんな学び方をしてどんな力をつけているのかが理解できるように、EDUCATIONAL SUPPORTのような皆さんに伝える機会をたくさんつくっていただきたいと思っています。
白澤:私は、こうした活動を、先生方とお話をして知る機会がたくさんあったんですね。
しかし、学校でどんなことをやっていて、どんな目標を持って、日々の学校、授業とか学級運営をしているのかということを、保護者や地域の住民が知る機会は多くないのではないでしょうか。
今回のES-TVのような場で、地域の方や保護者の方、先生経験のある方が一緒に話をすることの意義はあると思っています。
学校と地域、学校と保護者の橋渡しができるような活動を期待しています。
今窪:EDUCATIONAL SUPPORTは先生を助ける、学校を助けるをテーマにして立ち上げたわけですが、今日はお二人の話を聞いていまして、地域と学校をつなぐための間に入る、ちょうどいい立ち位置の組織になる可能性が十分あるというヒントをいただきました。
これをきっかけに、地域の方々ともつながっていけたらいいなと思っています。
そしてそれによって、学校にとってプラスに還元できることがたくさん増えたらうれしいなと思います。
ーー西田先生、白澤さん、貴重なお話、ありがとうございました。(MC:善福 真凪)
最後までおつきあいいただきありがとうございました。
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今後とも、EDUCATIONAL SUPPORTのご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
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