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童話「スーパーヒーローレボリューション」/#001

ロボットが代わりに働いてくれる未来、2080年


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 これは未来のお話。2080年、未来といっても、遥か遠い未来のお話じゃなくて、ほんの少しだけの未来のお話です。
 
 僕たちの地球は2030年にターニングポイントを迎えました。戦争があったのです。その戦争は、戦略的で駆け引きのある戦争ではなくて、子どもの喧嘩のように感情的な戦争でした。卑怯な作戦もたくさん使われました。あげくに核兵器や化学兵器がためらわれずに使われてそれはそれは悲惨で最悪の結果を迎えました。戦争を仕掛けた国と、挑発に乗った国と、そこに参加せざるを得なかった国とはもちろん、全然関係のない国も、巻き込まれて被害を受けました。戦争はあっという間に終わってしまったけれど、地球の人口は戦争の始まる前と比べて、なんと半分になってしまったのです。
 
 街やビルや、目に見えるものの多くが壊されたけれど、国家や法律や制度や仕組みなど、目に見えないものの多くも壊されました。
 
 生き残った人たちは考えました。
「これほどいろんなものが壊されてしまったのだから、開き直って、これを好い機会と考えて、合理的で、ずっと続いていける平和な社会を一から作り直そう。」
 
 テクノロジーを駆使して、作業や労働にAI(人工知能)とロボットが極限まで使われました。人間の仕事を機械が奪ってしまうことを予想し危惧された時代もあったけれど、出来上がった社会はこんな社会でした。
 
 重要な判断、意思決定から軽作業に至るまで仕事をするのはAIを搭載したコンピュータやロボット。国家を動かすのも会社を経営するのもAIとロボット。じゃあ人間はどうやって生活費を稼ぐのかといったら、そうしたロボットたちを資産として所有します。自分たちの代わりにロボットが稼いでくれることで生計を成り立たせるのです。お金持ちでロボットを何台も所有できる家庭は収入が多く、そうでない家庭はそれなりの収入を得られるという仕組みと考えてください。ロボットを所有するお金のない人はどうするかといえば、共同で購入して儲けを分配する組合が作られました。ロボットをどこで働かせるのかはそのロボットの性能や機能によってあらかじめ決まっていましたし、経営については計算され尽くしていたので、急に発展する業界や会社は、ほぼないと言っても過言ではありませんでした。つまり元々持っている資産としてのロボットによって、その家族の生活は決められ、未来永劫変わらないということになります。
 
 2080年の社会にある最大手の企業は人間の能力ー機械のようにこの時代ではスペックと言っていますーを遺伝子で管理する会社でした。この業種の企業が世界に数社存在し、上位の会社製の遺伝子プログラムで生まれた人々は一種のブランドとしてもてはやされました。もちろんお金持ちでないと手が届く金額ではなかったのですが、保証書付きという言葉があるように、ブランド会社の遺伝子で誕生したならば生涯が保証されました。世界最大手の遺伝子プログラムの会社は「エターナル・ハピネス社」という社名でEH社と略して呼ばれていました。
 
 遺伝子のプログラムによって人間個人のスペックが決定されます。言語や数式をどのくらい記憶できるのか、計算能力の正確さとスピード、色の配置や形について美しいと認識されるものを判断する能力、他人に好印象を与えて伝えるべきことをきちんと伝えられる能力、走る速さをはじめとする運動能力など、すべての能力が生まれつき決まっているのです。そしてそれはお金によって買えたのですから、お金持ちの家の子どもは頭が良くて、スポーツも得意で、そして顔やスタイルも良かったのでした。
 
 それが当たり前の世の中だったので誰も妬むことはなく、不公平とも思わず、親や家系を恨むこともなく、自分のスペックを受け入れていました。
 
 仕事はAIとロボットがしてくれて、お金も稼いでくれます。会社を経営する肩書きの人間はいますが、会社の意思決定、経営判断はこれもAIが行うので、実際に社会を動かしているのはAIとロボットであり、そしてそれは誤差が少なく、計算され尽くした世の中でした。
 
 そんな世の中にあって人間がすることがあるのかといえば、AIやロボットを使役することによって作られた人生の余暇をどう過ごすかということでした。
 
 遺伝子プログラムによってもともと丈夫に作られた身体で、医療の技術も進歩していて、生活環境も良いので人間の寿命はどんどん延びて、平均の寿命は120歳以上になっていました。その120年の時間、寿命をいかに楽しく過ごすのかがこの時代の大多数の人間のテーマだったのです。



#001を最後までお読みいただきありがとうございます。
#002は1/25(水)に配信します。
次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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