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現在にあてはまるシナリオが、すでに20年以上前に|11冊目『シナリオ・プランニングの技法』

ピーター・シュワルツ 著(2000, 東洋経済新報社)

ウッディ・ウェイド氏のシナリオ・プランニング作成メソッド

RBS(立教大学ビジネスデザイン研究科)在学中、安田先生の「コーポレート・ストラテジー」の授業でシナリオ・プランニングについて学びました。

何人かでグループを作り、シナリオ・プランニングのワークを実際にやってみるという宿題が出され、2030年の自動車業界について考えたのが以下のスライドたちです。

図1

何の資料を参考にしたのか今や不明なのですが、その手順を見る限りでは、おそらくウッディー・ウェイドさんの『シナリオ・プランニング 未来を描き、創造する』のメソッドを参照したのだと思います。


ピーター・シュワルツのシナリオ・プランニング

シナリオ・プランニングといえばロイヤル・ダッチ・シェル(現シェル)ですが、ロイヤル・ダッチ・シェルのシナリオ・プランニングチームを率いていたのがピーター・シュワルツさん。肩書きは未来学者です。

シナリオ・プランニングの背景や、コンセプトをもう少し理解したくて、本家本元(なのかな)であるピーター・シュワルツさんの著書を読んでみました。

うちの弟になんとなく似ちゃったシュワルツさんのイラスト。


シナリオ作成プロセス

シナリオ作成プロセスとしては、まずは自分が行わなければならない意思決定を明確にすることです。
何のためにシナリオを書くのかといえば、組織の意思決定のためですね。
そして情報を集めます。
情報は例えば人口動態などすでに決まっている要素がありますし、不確実な要素もあります。
シュワルツさんは未来のシナリオに重要な要因をドライビングフォースと言っています。
社会的、技術的、経済的、政治的、環境に起因するーつまりPEST分析(環境も入っているからPESTELの方が良いかも知れません)を行ってーいくつかのドライビングフォースに着目をし、そのドライビングフォースによる未来を想像します。
ウェイドさんの手法ではPEST(またはPESTEL)分析を行って、それを影響の大きさと不確実さの軸を引いた図(図2)上にマッピングします。
そしてあらかじめ決まっている要素を意識した上で不確定な要素の中から、特に重要と思われる項目を2つ選び、その項目を2軸にしてマトリックスをつくり4つのシナリオを作りました(図1)。

図2

「勝者と敗者」「挑戦と変化」「進化」などのいくつかのパターンをフレームとして持ちながら筋書きを作ります。

シュワルツさんのチームは「楽観的」「悲観的」「現状維持」のマインドセットで大凡3つのシナリオを用意するようです。

その3つのシナリオをもとに未来をリハーサルします。
シミュレーションと言ってもいいでしょう。
3つのシナリオのすべてが起こりうると想定して意思決定の準備をします。
つまりプランA、プランB、プランCを用意しておくということです。

情報の集め方

情報の集め方として、「科学と技術」や「社会の意識」に着目するというのはもっともですが、「音楽」を時代を示す文化として重視するという考え方を興味深く思いました。

ブルースやパンクやテクノなど、音楽から読み取れる時代的文化性は確かにあると思います。
それでは、現在を象徴する音楽と言えばなんでしょう。
コロナ禍の影響でプロアマ問わず感性の高いDTMミュージックが生まれている気がします。
同じような意味で、オルタナティブミュージックがさらに多様化しているとも思います。

2005年のシナリオ

この本は20年以上前の2000年に発行された本ですが、2005年のシナリオ・プランニングがされています。

シナリオは「新しい帝国」「市場の世界」「進歩なき世界」とやはり3つ用意されています。

「新しい帝国」と「市場の世界」のどちらが楽観的でどちらが悲観的なのかはわからないですが「進歩なき世界」は現状維持かと思いきや、案外に悲観的なシナリオだったりしています。

興味深いのは「市場の世界」でした。
書かれたのは2000年なのですが、2005年をはるか通り越して、現在にあてはまるようなシナリオが、すでに20年以上前に書かれていたことは驚きです。

数百万の人々がプロフェッショナルとして働いており、継続的に新しい雇用主を求めて移動する。多くの人が、自宅で働いている。

数年の間に、ある産業全体が勃興し、衰退する。その労働者は、当然再教育を受ける。より教育水準の高い労働者は、新しい市場を作り出すー新しいメディア、新しい衣類、新しいタイプの食物、そして新しい娯楽という「一瞬のトレンド」が、世界を席巻する。

環境もまた被害を受けているーしかし、人々がおそれていたほどではない。毎年、エネルギーの効率化が大きな進展を示し、ほとんどの会社が「持続可能な成長」原則のもとに経営されている。

市場の世界は、ユートピアではない。これは一つのシナリオであり、そこでは、ほぼすべてのことが可能で、革新と変化が王様である。しかし新しいますます豊かな世界は将来に向けて全力疾走するため、取り残される人がたくさんいる。

2000年にも環境のことは当然考えられてはいたと思いますが、SDGsが制定されたのはその15年先になります。

環境破壊による地球のダメージはおそらくシュワルツさんらが考えていた以上に深刻だったのではないでしょうか。
「市場の世界」のシナリオでも「人々がおそれていたほどではない」とシミュレーションされています。
ところが、実際には「人々がおそれていたほどではない」ではなかったため、異常気象による自然災害が多発していますし、世界の景色を変えたCOVID-19パンデミックも環境破壊と無縁ではなかったと思います。

2013年のシェルのシナリオでは環境破壊がもっと深刻に捉えられています。↓

今シナリオを作るとすれば、やはり、自然災害、COVID-19、SDGsがドライビングフォースとして重要な要因となるんでしょうね。

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