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「教師が働きやすい職場とは2」責任をみんなでシェアする仕組みづくり☆ゲスト 広木 敬子 先生 /今窪 一太(いまくぼ かずた)トークセッション#005

ES-TV note 【2022.6.27ライブ配信】

学校大好き、いつも笑顔の広木校長先生

ES-TV第4回のライブ配信では湘南学園、学園長の住田昌治先生をお招きしてお話をうかがいました。

その住田先生が永田台小学校の校長先生だったときに、教務主任を務めていたのが広木敬子先生。

第5回のES-TVでは、横浜市立上寺尾小学校の校長先生として、住田先生の教育論を具体的に実践されている広木先生をゲストに迎え、お話をうかがいました。


給食が毎日食べられる仕事でいいな

ーー広木先生は笑顔が素敵で、本当に楽しそうに学校のことを話してくれるのですが、そもそも先生になろうと思われたきっかけは何だったのですか?

広木:すでに小学校1年生のときには、「先生の、あの感じがいいなあ」って思っていました。
いろいろ特別な物を持っていて、例えば、子どもたちにシールを配ったりとかして、子どもはベタって一人一枚貼ってもらえるだけですけど、先生はたくさん持っているじゃないですか、シールを。
だから、いいなあって、たくさん持っていていいなあと思ったんですよね。
それから、給食が毎日食べられる仕事でいいな、とか。

私は高校生のときから同じ美容室に行っているんですけど、高校生のときから先生になる夢を語っていたので、「なんか、広木さんて、本当に自分の夢叶えたよね」と言ってもらっています。

先生になると決めたら、苦手な算数とかも勉強しなきゃいけないんだなと思って勉強しました。
小学生のときから何も疑わずに先生になる夢をめざしてきたので、大学生のときにはさすがにちょっと不安になりました。
「なりたい」という思いだけでここまで来たけど、このまま本当に先生になって良いのかと心配になり、恩師の勤務する学校を訪ねて、一日見学させてもらったんですよ、教育実習に行く前に。
そうしたら、やっぱり楽しくて。

学校は毎日違うことが起こるじゃないですか。
その毎日が違うことが起こる予感というか、雰囲気がずっと好きで、学校の物語性とかドラマ性みたいなものに憧れを感じて、学校の先生になりたいと思うようになったのだと思います。

ーー恩師の先生に会いに行ったとのことですが、どなたか先生の影響で先生をめざすようになったということもありますか?

広木:もちろん、何人か思い出せる印象深い先生はいらっしゃいます。
よく今の学生さんとかに質問をすると、そうした先生に出会ったことが教員をめざした動機になったといいます。
しかし、私の場合はどちらかといえば、先生よりも、友だちとか仲間が、先に頭に浮かびます。
自分も将来、こういう先生になりたいと特定の先生に憧れたというよりも、学校という空間を、自分の職場としてイメージしていたのだと思います。

とはいえ、物理的な空間だけではなくて、もちろん、そこにいる人への関心は高いです。
人に対しては大いに興味があります。
そして、誰にでも話しかけたいという思いがあります。

ーー学校にはいろいろなタイプの人、大勢の児童や先生がいます。そうした人たちが成長していくことも含めて、学校の中で起こる様々なできごとの予感ににワクワクしているという感じでしょうか?

広木:そうですね、心配なこともないわけではありませんが、良い方向に変わっていくよろこびは大きいですよね。
問題の解決に向かって先生たちや児童も頑張って、チャレンジしてみたことがことのほかうまくいったりとかして、「ああ、すごいね!!」って言ってあげられることがやっぱりたくさんありますよね、学校って。
それが、私のエネルギーみたいになっているところがあります。

就任当初は「保護者の方ですか?」といわれていました

ーー今の学校で校長先生になられて2年目とのことですが、1年目と比較して、学校が変わってきたと思うことはありますか?

広木:校長という立場は、なかなか声が聞こえてこないポジションで、こちらから積極的に聞いていかないとわからないんですね、実は。
ただ、知っている子どもたちがどんどん多くなっていって、自分がさらにどんどん学校を好きになっていっているということは言えますね。

児童の学びが良くなった実感があると、あのやり方が良かったかな、このやり方が良かったかなと振り返ります。
先生も同じで、なんか、あの先生いきいきとしてきたなと思ったら、どの接し方が良かったのだろうかと考えます。
もちろん先生の場合は、相手が大人で、一人ひとりの背景が違うので、そこを考慮して丁寧に考えるようにはしています。

最近、「校長先生」って子どもたちに呼ばれることが増えました。
就任当初は「この人誰?」って感じで、私もちっとも校長らしくなくて、町の人に「保護者の方ですか?」と聞かれて「これでも校長なんです」なんて答えていました。
それが、今ではちゃんと「校長先生、おはようございます」と子どもたちにあいさつされるようになりました。

学校には朝会という良い機会があって、今はコロナでテレビを使った朝会なので、紙芝居風にして、本を、今はこういうご時世なので、平和に関する本を紹介するなど、私が本当に思っていることを短い時間だけど伝えようとしています。
そうしたら、話しかけてくれる子が多くなり、紹介した本を貸して欲しいなんてやりとりが何人かとはできるようになり、その子が友だちを連れてきたりして、少しずつ広がっていきます。
それで、話しかけてくれる事が多くなってきたのだと思いますが、それはうれしいことですね。

先生たちに対しては、とにかく面談の中でどう感じているかを丁寧に聞いて状況を確かめています。
一年目に比べると、先生たちが開示してくれるようになった感じはあります。
はじめの頃はやはり距離があって、たいへんな状況をどうやって助けようかと気をつかって話しかけることが多かったのですが、一年経って、「○○先生ってこういうとこあるよね」と言えるようになりましたね。

そうやって、本心から感心したり、褒めたときにでも、「いやいやいや、とんでもない」と返事をされる先生が多くいます。
謙遜していることもあるのでしょうが、それよりも本当に自信がないというか、経験不足を気にしているといったことを感じます。
若い先生たちには自己肯定感をもっと持ってほしいと思っています。
「私はいいと思うよ、この調子。子どもたち、こうやって変わってきたね。」と、なるべく具体的な話をして元気を出してもらおうと思ってます

今窪:広木先生の話を聞いて思い出したことがあります。
先生を直接褒めるのも良いですが、児童を褒めることによって間接的に先生を褒めるということも効果があり、大事です。
私が高校にいたときは、前の週に一番出席の良かったクラスを毎週、表彰していました。
そうすると、生徒もうれしいですが、先生もうれしいですよね。


「責任」や「難しさ」はみんなでシェアをする

ーー学校を働きやすい職場にするために心がけていることはありますか?

広木:具体的にはいっぱいあります。
基本的には、無駄な事はあまりしないようにしています。
例えば会議は、以前は会議スタイルに着席をして進行し、記録の人がいて議事録をとっていました。
今は、丸型のホワイトボード、『円たくん』を使って、それを囲んでわいわい話し合う会議が主流です。
記録は『円たくん』に書かれたことを撮影して提出してもらっています。

それから、職員会議や運営委員会などは事前の準備である程度情報を共有しておいて、本当に話し合う必要があることに集中しています。
それでも議題によっては会議が長引くときがありますので、できるだけ他の日で調整することにして、「早く帰れる日は早く帰るようにしましょう」と言っています。
まあ、なかなかそうもいかない状況が多いのですが。

ーー私たちは学校を外から支えていきたいと思っているので、応援したいです

広木:応援されていることは心強いですし、うれしいです。
結構、たいへんはたいへんなんですよ、先生の仕事は、やっぱり。

それでも例えば、「たいへんを抱えてしまっている先生は周囲との関係性がうまくいっていない」とか、具体的にどこか抜け道というか、カギ穴というか、課題となっていることを理解するヒントを見つけてあげられたら変わると思うんですよね。
変わることを繰り返して学校はあるべきです。

一人の子どもがうれしい気持ちで家に帰ると、その子どもの家族がみんなうれしくなります。
おじいちゃん、おばあちゃんまでうれしくなれば、すごいたくさんの人をよろこばせられる仕事だと思うのです。

だけど反対に、誰かが悲しいとみんな悲しくなります。
そうならないようにするためには、たいへんを抱えた先生が、何かこうサインを出してくれたときにそれを見逃さず、大切にするということを忘れないようにすることです。
でもそれを一人で抱えるべきではないので、私はそれをチームでやりたいと思っています。
「責任」や「難しさ」はシェアすることができます。
「よろこび」をシェアしても、「よろこび」の量は減らないと思います。
しかし、「責任」の量は分割することができます。
「責任」は一人で抱えると重いので、みんなでシェアできる仕組みを作っていきたいと思って実践しています。

ーーもし小学校時代に戻れるならば、こんな素敵な校長先生のいる小学校に通いたいと思いました。
広木先生、今日は本当にありがとうございました。(MC:善福 真凪)

●広木 敬子(ひろき けいこ)さん プロフィール
横浜市立上寺尾小学校 校長
共著『読書家の時間(改訂版)』(新評論 , 2022)

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