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めんどうなことも修行と思えば楽しくなる|42冊目『禅と生きる』

宇野 全智(2017, 山川出版社)



妻のキッチン掃除

妻がキッチンの掃除をしました。
僕と違って隅々まできちんと掃除してあります。
オーブンや炊飯ジャーも、調味料まわりもきれいに拭いてあります。
さすが僕にダメ出しするだけのことはあって、やるときはやります。

ここ何年か、家の掃除は自分の仕事です。

キャリアコンサルタントやNLPプラクティショナーなど、安くはない費用をかけて勉強をさせてもらっていましたが、さらにビジネススクールに通うとなって、「忙しいから家のことができない」と言わないことを条件にしたので、週末の食事準備に加えて、家の掃除は僕がすると自発的に決めました。

家事は妻の仕事で、それを自分が手伝っているのではなくて、家の仕事は家族の仕事で、みんなで分担すると考えるようにしています。

そうとはいえ、せっかく掃除をしても、「ちゃんとものをどかして掃除機をかけていない」とか、「エアコンのフィルターが掃除されていない」とかなんとか、細かいところを指摘されると、「せっかくやってあげてるのに」というなんか押しつけがましい気持ちが湧き上がってきてしまいます。

妻は妻で、週末以外の食事の準備をして、洗濯は全部してくれているし、ゴミ出しだってほとんどやってくれているし、必要なものの買い出しとか、いろんなことをしてくれていて、それをわかっているつもりなのに、「掃除は自分がしている」と家のことを担った気になってしまっていました。

だから、妻の掃除を見て反省しました。
自分は家をきれいにしようとしているのではなく、掃除をしたという事実を示そうとしているだけなのだと。


坐禅をはじめたキッカケ

古い話ですが、『BRUTAS』2017/2/15号の「みんなのZEN」は、禅がテーマでした。
世界的に「マインドフルネス」が流行した時期であり、僕も坐禅にとても興味がわきました。

その当時に、どこか近くで坐禅会などできるところがないかと調べたところ、谷中の擇木道場というところで座禅ができて、夜の座禅会も開催していることがわかったので、仕事が終わってから参加しました。

このときの体験は衝撃でした。
作法の面白さや、参禅者の姿勢、態度、座禅中の場の空気感に圧倒されました。

老師との面談があって、「短い時間でいいので毎日座ることが大事」と言われ、それから6年間、毎日15分ずつ坐禅をしています。

昨年からは、毎月一回、家の近くのお寺の、朝の坐禅会に参加しています。
曹洞宗のお寺さんですが、住職さんは以前、曹洞宗本部で広報のお仕事をされていたそうです。
坐禅会は無料で、社会貢献、地域サービスの意味合いが強いのだと思いますが、加えて坐禅や曹洞宗の広報の意味があるのかも知れません。
朝の坐禅会、夕方の坐禅会と月に1回ずつ開催されています。

その住職さんが紹介してくれたのが宇野全智和尚さんの『禅と生きる』という書籍でした。


掃除もお布施

坐禅やコンパッション、マインドフルネスの本が好きで、よく読みますが、いつも気づきがあり、読み終わると穏やかな気持ちになります。

『禅と生きる』も、もちろんたくさんの気づきがありました。

仏教には六波羅蜜という修行方法があります。
波羅蜜とはサンスクリット語の「パーラミター」が由来です。

6つの波羅蜜の一番最初が「布施」ですが、これは「見返りを求めずに、喜んで与える」ことです。
僕は勤務先で寄付の業務を担当していますが、寄付の広報のヒントにもなると思いました。

お布施といえばお寺に「お支払いするお金」をイメージしますが、布施は金品に限らず、お金以外の布施もいろいろとあります。

具体的には、眼施(まなざし)、和顔施(笑顔)、語施(思いやる言葉)、身施(行いを施す、役に立つことを進んでする)、心施(思いやりの心)、床座施(席を施す、席を譲る)、房舎施(泊まる場所を施す、安心して眠れる場所を与える)という7つの布施があります。

冒頭で家の掃除の話をしましたが、自分は掃除を「仕事」として捉えていました。
ビジネススクールに通わせてもらう代わりに、家の掃除の仕事を自分が受け持つという考え方です。
そのため「仕事をこなす」という感覚になり、時間内に仕事を完了させることが目的となり、家に対する感謝や丁寧さが欠けてしまっていたのでしょう。
その結果、掃除しているという事実のみを重視した雑なものになり、妻にダメ出しされたのです。

それでは、掃除は修行であると考えたらどうでしょう。
修行の中の布施、布施の一つ身施であると考えてはどうでしょうか。

修行なので、誰かのためと恩をきせるべきではありません。
布施は見返りを期待せずに、喜んで与えるものです。
掃除してあげていると考えるのは間違いです。

心を込めて隅々まで丁寧に、家やモノや、妻と家族に感謝をして、そしてそれができることに感謝して掃除に励みたいものです。

いきなりそんなりっぱな人にはなれませんが、掃除がめんどうになったら思い出すようにしたいと思います。

『禅と生きる』

最後までおつきあいいただきありがとうございました。
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