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ハナの魂

父方の祖母の名前は『ハナ』といいます

ハナさんは偏屈親父の自分しかかわいくないじいさんを夫に持ち、黙って夫について来た明治の女でした

何が楽しくて生きているのか
わたしには分からない
ちょっと腹黒な面もありました


子供は五人産んだけれど、女の子が育たない家と言われていました

父の妹は幼くして亡くなって

父の姉みっちゃんも二十歳の頃に結婚して、一番しあわせの絶頂期にあの世に還っていきました

ハナさんはいつも
「みっちゃんが夢にてでこない」と言っていたそうでした

ある時父は何気なく
「みっちゃんはここにいるのになぁ」と母に呟いたそう

物事を多く語らない父はその時そばにいたわたしをちらっと見たらしいのです

勘の良い母はその時に気付きました
娘がみっちゃんの生まれ替わりだと 

わたしが自分がみっちゃんの生まれかわりなのかな?と感じるようになったのは二十一歳で死にかかった時でした
ベッドの上から自分の身体を見つめてる、幽体離脱してからです

死ぬはずのない、じいさんと同じ皮膚病を患い、強い薬をガンガン使われて死にかける
UVA波、レチノイド、ステロイド、コールタール、その他色々やってみたがリバウンド

恐ろしい、恐ろしい

そうだった、前世で死んだ年に死にかかることがあるという話しを聞いたことがありました

とりあえず前世の記憶はないけれど
わたしはみっちゃんとの縁を感じます

ハナさんはじいさんの建ててくれた父の実家の離れで楽隠居した途端に脳梗塞になりました

それからはじいさんにやれ温泉、やれ病院と連れ回されて、再び二回目の脳梗塞を起こして、こぎれいな病院に入れられました

母と母方の祖母、わたしの三人で見舞いに行くといつもいつも
「うぞい人生」と涙を流していました

楽隠居できると思った途端の脳梗塞、身体は不自由になり、家からは追い出され病院に入れられる

そんな人生でした

わたしの父はハナさんよりも伯母に当たるヤヰさんのことをよく話してくれました

ヤヰさんは賢い女性(ひと)だったようです
長男の父のことを可愛がってくれていました

けれどヤヰさんが亡くなり、父の両親は父の弟を跡継ぎに据えました

どうしてなのか
わたしには分かりません

多分叔父は両親の言うことを聞くだけの人間だと思ったのでしょう


父はいわゆる利かん坊でしたから

ハナさんは彼の世に還ってから七年で生まれ変わってきたようです

それは私の息子として
魂は男も女もなく

生まれ変わる

ある時からその息子はことある度に
「オレはお母さんの親じゃない」
その言葉を聞くたびに私は思う

実は君は前世で私の親だったんだよと言いたくなる

でも言わない

生まれた時の目つきはまるでハナさんだったから

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