十日に一度(わたしだけではない)
「調子はどう?」
母があの世に旅立って
もうすぐ一年
そう言われてもね
「まだまだ立ち直れません」
はっきり答えるとちょっと変な顔をされる
「わたしも母をなくしているのよ」
はい、存じています…
しばらくして聞いてみる
「お母さんを亡くされて何年ですか」
「もう十年」
「立ち直るまでどの位かかりましたか」
「四、五年かな…」
「そりゃそうよ、一人しかいない母だもの」
そういえばこの人も一人娘
いつもお母さんを連れて天命庵に来ていたんだ
懐かしい
あの人もこの人も
みんなみんなあの世に旅立った
母だけじゃない
多分、その人もそう言いたかったんだろう
かなしいのはわたしだけではない
「けれどここで友だちとあって、はなしをすると癒されるから」
ここはこころのふるさとで
やさしいやさしい母のさと
全てをよきこととして受け取りなさい
わたしのことを気にかけてくれるひとはいっぱいいる
目が合えばなにも言わずに手をふる人
最近はあまり声をかけてこないけど気を使ってるひと
みんなが私を見守ってくれている
有難いこと
「明るくなったね」
「笑えるね」
本当はこころの奥の襞の中
かなしみが埋もれているだけなのに
わたしのこころはいたみとくるしみとせつなさで、深みと厚みを増して重くなる
自分でも今まで味わったことのない不可思議な感触に包まれている
十日に一度
やっぱり今日も来てしまった
誰かに呼ばれても
ご縁がなければ来られない
御霊様がいっぱいいらっしゃる
御霊屋に母もいる、父もいる
今日は午後からなのに三回も御神殿にお参りをする
御神殿には寅の剣が四本飾られていた
もう来年の龍の年の準備のようだ
神様の準備はお早いようで…
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