見出し画像

手をつなぐ

数年ぶりに合う学生時代の友達とのランチの後
わたしはひとりで駅ビルの中の本屋に向かう

ちょっと気になる本を立ち読みに
わたしの母校の話が載っている

友達はその本を買って読んだという

さらさらとわたしは立ち読みでいいや

読み終えてビルの中から
歩いて降りようと思ったら
ちょうどエレベーターがくる
一階だけだけど乗ることにする

わたしが降りると
上りに変わるエレベーターに年老いたお母さんと手を繋ぐ娘さんが待っていた

あぁ、胸がずきんとする

母を思い出す

このビルは母とよく買い物にきた場所だった
母が旅立ってからはあまり近寄らない

手を繋ぐ姿をみると
わたしの手にも母のぬくもりがよみがえる

かなしくなり
家に帰り
また落ち込む
何にもしたくなくなり

ぼおっとソファーに座りこむ

楽しかったはずの友達とのランチもいつの間にか消えている

「お母さん、会いたいよ」
母の写真に話しかける

本当はいつも隣にいるのよ
見守っているのよ
手を繋いでいるのよ

わたしにも見えればいいのに

この記事が参加している募集

ふるさとを語ろう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?