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カナだけ

もう四十年じゃ訊かない、Kちゃんとの付き合いはそんなに経つのか

Kちゃんはいつも何気なくわたしの大変な時に必ず現れる
そして黙ってそばにいてくれる
言葉数は少ないが心はとても温かい

一番最初に誘ってくれたのはKちゃんだった
「カナ、神宮外苑に遊びに行こうよ」とイベントに行く

大人しめのKちゃんが誘ってくれた
そこからKちゃんとは仲良くなる
でも入るクラブも違っている

学校帰りにいつもつるむYちゃんたちと喫茶店に行く
学校は厳しいので寄り道なんかして
見つかったら、すぐに始末書だ

地味目に目立たぬように行動をする

ちょっとなにを考えているのかわからない

気持ちを表にあらわさない

でもいつも私が必要な時には寄り添ってくれている

互いに結婚して、子供が生まれて忙しくなる
Kちゃん家の子供たちもスポーツをやってきた
でもどこかで歯車が狂う

Kちゃんのお母さんが亡くなって、Kちゃんはお父さんをひとりにしておけないと下の子だけを連れて実家に帰る 

「わたしは上の子を見捨てた」
そんなことはないはずなのにKちゃんはそう言った

その後、ご主人と上の子は彼女の跡を追うように彼女の実家で暮らし始める

わたしもわたしで夫との仲が上手くいかずにいると言うと

「カナだけは幸せに暮らしていると思っていた」と呟いた

人間、生きていれば色々ある

Kちゃんは昔から良く手紙をくれる

最近では時々メールだったが、そのメールも繋がらない
彼女はラインはやってない

今では家電になる(時代逆行)

「また今度、電話するね」と言うと

「今度は手紙がいいな、手紙をくれるのはカナだけだから…」

頑ななわたしはKちゃんだけには本音を言える

多分、彼女も同じなのか

彼女からの「カナだけ」はわたしの宝物

手紙を書かないと



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