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欲いっぱい

手紙にはいつも自分の欲望だけが書かれている

それは仕方のないことなのか
病院を早く出たい

無理矢理に入院させられて
自由を奪われる
「わたしには自由がない、自由が欲しい」

本当は優しいはずの彼女なのに
どこからかずれている

それはずっと前からのこと
自分勝手、えて勝って
都合の悪いことはスルーする

そのずれ具合が異常なほど
わたしを苛立たせる

まともなことを言うけれど
「あの子はまともだよ」と母も晩年には言っていたが

何かが違う

出たい、出たいと言っている病院だってあなたを守ってくれている

自由になるのはいいけれど
その自由さと引き換えに
また不自由を手に入れる

生きるってそんなもの

何かに折り合いをつけながら
生きて行かないと

この間は病院の作業療法で作った
とても手の込んだバッグを送ってくれた

嬉しいからすぐに電話をする
わたしとだけのふれあいが
姉に拒否されたつながりを
満たすのか

人間ってさみしいね

彼女の人生って何なのだろう
ちょっとかなしくなる

また手紙が送られてきたら
わたしは苛つくはずなのに

自分の欲望だけが書かれた手紙を見て


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