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ぬくもり

夜のとばりが降りた頃
母と一緒に散歩をする
忘れられない思い出

目の悪い母と手をつなぐ
母は右耳が聞こえない

わたしはいつも母の左側に立つ

フジコヘミングと同じ病気を患った
幼い頃に
それでも母は気丈にも
生きて来た

そのことを思い出したのは先日見たフジコヘミングのドキュメンタリーだった

そうなんだ…
わたしは母の気質を引き継いで
病に負けずに生きて来た

母の大きな心には勝てないが

やさしい、やさしい母の大きなぬくもりに包まれて生きて来た


母のぬくもりを感じたのは
おやもとに還った日

「お母さんが本当に好きなんだね、どうして?」と知り合いに聞かれる

ずっとこころの学びを一緒にしてきたから
いつも母とはなんでも話しが出来たから…
そうだ
「友達が要らない」
と答えていた

聞いて来た人はとても納得をしてくれた

ご夫婦で一緒にご商売をしていた方がご主人を亡くされる
もう何年も経っているのにまだまだ泣いている
やはり不思議に思い、
やはり「どうして?」と尋ねると
「ずっと一緒にいたから友達は要らなかった」と言われたそうだ

「あなたもそうなのね…」

母はなんでも分かってくれるこころの通う友だった
最近はあまり泣かなくなったけど、その時は少し涙が出た

「ごめんね、また泣かせちゃったね」

大丈夫、母はいつも私の側にいる。
おやもとに還る時も母に連れられてゆく
わたしではない、身体が勝手に進んで行く

身体は乗り物に過ぎない

母のあたたかいぬくもりに包まれて
今でも
わたしは生きている

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