【第66回岸田國士戯曲賞最終候補作を読む】その9
最後は山本卓卓さんの『バナナの花は食べられる』。
候補者について
山本卓卓[やまもと・すぐる]
1987年生まれ。山梨県出身。桜美林大学総合文化学群演劇専修卒業。演劇集団 範宙遊泳主宰、劇作家、演出家。
『うまれてないからまだしねない』(2015年)、『その夜と友達』(2018)に続いて3度目の最終候補。
候補作について
昨年3月、範宙遊泳の公演として森下スタジオ Cスタジオにて上演。
■時、場所
第一部
1・2 2018年6月〜7月
3 2018年 秋
4 2020年9月30日午後4時21分/2018年冬
5 2019年 夏(7月3日)
第二部
6 2017年 禁酒会
7 2019年 冬
8 2017年
9 2020年1月
第三部
10 2020年2月? 墓地
11 2020年2月 福井県 カナエ(アリサ)の家
12 2020年2月 福井県 ライブハウス
13 2020年9月30日 午後/同日 午後4時
14 2021年1月1日 オフィス
15 2021年3月24日 午前10時30分 南の方の街
■登場人物(年齢・職業は2018年当時)
1…穴蔵の腐ったバナナ 33歳 個人事業主
2…百三一桜 34歳 マッチングアプリのサクラ 本名・ハヤシ
3…レナちゃん 28歳 セックスワーカー 本名・マユミ
4…クビちゃん 23歳 売春の斡旋、ドラッグ売買の仲介等
5…清水アリサ 36歳 スーパーマーケットのパート
■物語
2018年夏。33歳、独身、彼女なし、アルコール中毒、元詐欺師前科一犯の“穴蔵の腐ったバナナ”は、マッチングアプリ・TSUN-TSUN(ツンツン)に友達を募る書き込みをする。出会い系サクラのバイトをしていた“男”は、釣られているとわかりながら課金してきたバナナに興味を持ち、彼と会ってみることにする。「人を救いたいんだ…」と言うバナナと男はいつしか、僕/俺「ら」になり、探偵の真似事をしながら諸悪の根源を探しはじめる。【公式サイトより】
総評
実際の上演は配信で鑑賞(感想ブログはこちら)。今回の最終候補作は9本中6本を劇場もしくは配信で観たことのあるものだったが、本作が一番実際の上演よりも楽しめた。や、ブログを読んでもらえれば分かる通り、上演が悪かったわけではなく、ちょっと長く感じただけなのだけど、読む分には3時間もかからないからね。笑
改めて感じるのは、山本卓卓さんの書く台詞のうまさ、選択する言葉の的確さ。穴蔵の腐ったバナナの迸るがごとき台詞は読んでいるだけで楽しいし、クビちゃんの台詞がスマホの音声読み上げ機能による音声というのも面白い。
とりわけ僕/俺に「ら」の一文字を加えるだけで関係性をガラッと変えてしまうあたりは、満を持しての岸田國士戯曲賞受賞にふさわしいと思う。
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