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【第67回岸田國士戯曲賞最終候補作を読む】その7 中島梓織『薬をもらいにいく薬』

候補者について

中島梓織[なかじま・しおり]
1997年生まれ。茨城県出身。早稲田大学文化構想学部卒業。いいへんじ主宰、劇作家、演出家。初の最終候補。

撮影:工藤葵

候補作について

昨年6月、いいへんじ二本立て公演として『器』とともにこまばアゴラ劇場にて上演。

■時代、場所
 現在 西荻窪

■登場人物
 ハヤマ マミ カフェ「バヴァール」アルバイト
 ワタナベ リョウヘイ カフェ「バヴァール」アルバイト
 マサアキ ハヤマのパートナー。ハヤマと同居
 ソウタ ワタナベのパートナー
 大学生1・2 カフェ「バヴァール」アルバイト
 事務員1・2 「西荻窪こころのクリニック」勤務
 花屋1・2
 医師
 「西荻窪こころのクリニック」勤務
  阿佐ヶ谷駅から乗り込んでくる
 母親 阿佐ヶ谷駅から乗り込んでくる
 高山ゆず ラジオ番組「Cross Voice Tokyo」パーソナリティー
 斉藤涼子 ラジオ番組「Cross Voice Tokyo」アシスタント

■物語
 西荻窪のカフェ「バヴァール」のアルバイト店員ハヤママミは、仕事中に過呼吸の状態になり、2週間仕事を休んでいた。そこへ同じアルバイト店員のワタナベが店長に頼まれてシフト表を届けに来る。ハヤマは意を決してワタナベに羽田空港までついてきて欲しいと頼む。不安障害を抱え、心療内科に通っているハヤマは薬を切らしていたが、仕事で九州に行っていた恋人・マサアキが誕生日なので花束を持って迎えに行きたいのだと言う。

総評

 本作は『器』とともに実際の上演を鑑賞(こちら)していて、どちらも上演台本を購入済。今回、改めて読んでみて、やはりよく書けているし、いい作品だと思う。
 西荻窪こころのクリニックに通院する主人公・ハヤママミにとって、羽田空港までついてきてくれようとしたワタナベはまさに「薬をもらいにいく薬」のような存在であろう。人は人によって傷つけられもするし、不安にもさせられるし、恐怖を与えられもする。だけど、最終的に人の心を救うのもやはり人でしかないのだということを感じさせてくれる(ラジオ番組「Cross Voice Tokyo」も効果的)。
 今後の作品も楽しみ。

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