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【第65回岸田國士戯曲賞候補作を読む】その9

いよいよ最後の候補作、横山拓也さんの『The last night recipe』
本作も実際の上演を鑑賞している(感想はこちら)。

候補者について

横山拓也[よこやま・たくや]
1979年生まれ。大阪府出身。iaku主宰。
今回が初の最終候補。

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候補作について

昨年10月~11月、iakuの公演として東京・兵庫で上演。今年1月にNHK BSプレミアム「プレミアムステージ」でも放送された。

■時代、場所
 2019年7月末~2021年5月。関西地方。
 1~3 2021年3月、夜莉と良平の家
  2019年7月、コーヒーショップ/ながい軒
  2021年3月、夜莉と良平の家
  2021年3月中旬、夜莉と良平の家
  2019年8月、早田のオフィス
  2020年4月下旬、夜莉と良平の家
  2021年3月下旬、駅から夜莉の実家に向かう道
 10 2020年1月15日、駅の改札
 11 2021年4月上旬、夜莉の実家近くの道
 12 2019年8月中旬、ながい軒
 13 2019年8月中旬、早田のオフィス
 14 2019年秋、2021年春
 15 2021年4月上旬、早田のオフィス
 16 2021年4月、夜莉の実家
 17 2020年7月上旬、夜莉の実家
 18 2019年9月、ながい軒
 19 2021年1月中旬、路上
 20 2021年5月中旬、夜莉の実家
 21 2019年12月下旬、ながい軒の前
 22 2020年1月下旬、夜莉の実家
 23 2019年2月中旬、早田のオフィス
 24 2020年4月上旬、謙介の行きつけのスナック
 25 2020年1月下旬、コーヒーショップ
 26 2021年1月下旬、夜莉と良平の家
 27 2021年5月下旬、ながい軒
 28 2021年2月、夜莉と良平の家
 29 2021年5月下旬

■登場人物
 村崎夜莉 30歳/女性 フリーライター
 村崎良平 25歳/男性 夜莉の夫(旧姓・永井)
 村崎雅一 55歳/男性 夜莉の父
 村崎晴美 55歳/女性 夜莉の母
 永井謙介 52歳/男性 良平の父・ラーメン屋店主
 三宅綾  40歳/女性 フリーライター
 早田達也 32歳/男性 人材ソリューション企業経営者・夜莉の元恋人

■物語

 2021年3月。フリーライターの村崎夜莉(より)はワクチンを接種した後、気分が悪くなり、帰らぬ人となる。夜莉は1年前から「ラストナイトレシピ」というブログで夫・良平と食べた昨晩の料理を紹介していた。良平と出会ったのは2年前、先輩の三宅綾から紹介された「関西ラーメン選手権」の取材で良平の父・永井謙介が営むラーメン屋ながい軒を訪れたときだった。母親亡き後、父親の言いなりになって働いている良平のことが気になり、ルポルタージュの題材にしようと思い立つ夜莉。その後、良平を父親のもとから引き離すべく結婚した2人だったが、夜莉が亡くなったことを伝えるハガキが誤って謙介に届いたため、謙介は夜莉の両親に良平を返すようにどなりこんでくる。

総評

 ようやく横山拓也さんが岸田の最終候補に残ったかという感じはあるものの、本作は『粛々と運針』とか『あつい胸さわぎ』に比べると見劣りがするので少々複雑なところ。
 今回、改めて戯曲を読んで、夜莉がワクチンを接種したその日に亡くなるのがまさに今、2021年3月なのねと気づく。コロナ禍を踏まえたやりとりも出てくるけど、恐らくこの辺りは最初からそういう設定だったのではなく、上演するにあたって書き換えたところじゃないかなという気もする。

 てなわけで8作読み終えての最終予想は……

 本命 長田育恵『ゲルニカ』
 対抗 小田尚稔『罪と愛』
 大穴 金山寿甲『A-②活動継続・再開のための公演』

 んー。いや、近年の受賞作の傾向から行くと、やっぱり小田さんが取るような気もするなぁ…。ま、楽しみに結果を待ちましょう。
  お付き合いのほどありがとうございました。

                                 

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