再び、暖流から始まった

 増村保造監督の映画がやってるんだ、若尾文子も観たいけれど、左幸子も迫力ある印象があるし、野添ひとみも名前だけ知っていて映画を観たことがなかったから、よーし、久々昔の映画を観てみるか、と出掛けた神保町シアター。2022年10月27日。大映の女優たち特集の1本として上映されていた、増村保造監督の暖流(1957)。

 昔の映画にハマりにハマったのは、今から25年くらい前のパリの名画座で、繰り返し繰り返し上映されている世界中の昔の映画。〇〇監督特集、〇〇女優特集などなど、フランス語の字幕も全ては読めない当時ながらも、映画の魅力に取り込まれてからは、週に4、5本のペースで観ていた数年間。次から次へと観たい映画ばかりで、主にひとりで観に行っては(前の方に座って観るのがシネフィルと聞いてから、専らかなり前の方を陣取って観ていた)、上映後の興奮も冷めやらぬままの話を聞いてくれる日仏の友人もいたし、昔の日本映画に開眼したのもパリでした。

 あれからあれ程昔の映画を集中して観たことはなかったけれど(人生、人並みにいろいろあって)、増村保造の響きに、あー昔の映画みたいな、実際の生活や大自然以外に、あんなにも心を揺さぶられるものは私はそうも知らないし、魂を揺さぶられるようなあの思いが蘇り、昔見逃した映画、観たことがあるけれどまた絶対観たい映画、パリの名画座ではとても観られないようなメジャー以外の映画が上映されているではありませんか!と、正に自称シネフィルだったあの頃の血が騒ぎ、神保町シアター通いが今秋から始まりました。

 昔の映画の時代に生きていなけれど、日本映画の場合は昔の生活や様子、歴史感などがすんなり入ってくるし、昔の俳優さん女優さんもリアルタイムで知らないから(小さい頃にテレビで観たその年をとった姿しか知らない)、スキャンダルなどもそうも知らないことも多いしで、その分映画の世界にどっぷり入り込めて感動がひとしお。やっぱり映画は凄い!とその震える思いが収まらず、映画愛以外にも心を揺さぶるものの備忘録として、ここに記していこうと決心した2022年の年の瀬。人生は以外と短そうだし、好きなことに臨んでいけるのならば、大いに立ち向かい楽しんで行きましょう(生きましょう)と心した大晦日なのでした。

 ちなみに暖流では、左幸子の観客をかっさらっていくような演技も、野添ひとみの美人でセレブのママ友みたいな雰囲気もよかったし、船越英二!(私が知っている船越英二は、テレビの熱中時代の校長先生役)も、丸山明宏(美輪明宏の動いている若い姿を観るのは初めて)のシャンソンも踊りも観られて、昔観た増村保造監督の印象、泥臭いようなやんわりエロいようなインテリっぽいような映像が健在でした。
 

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