スパイス調合の方法
スパイス調合、大きくわけると2つの方法があります。
ひとつは、似たような香りのスパイスを組み合わせる方法。例えば、黒胡椒と白胡椒(同じ植物)とか、シナモンとクローブ(甘い香りが共通している)とか。これはわりと簡単にできるし、失敗も少ない。ワークショップやメディアなどで紹介するのは多くはこっちのやり方ですね。
似たような香り(風味)のスパイスを混ぜると、どちらの長所も活かしつつ、短所(主に、クセや風味が強すぎるという点)を見えにくくしてくれるので、使いやすいものになる。
お菓子づくりに使う甘い香りのミックススパイス(ドライフルーツのラム酒漬けを作るときなんかに使うアレです)なんかも、この方法です。ナツメグやシナモン、クローブは、「甘い香り」が共通していいます。混ぜると、単独で使うより個々のスパイスのクセが出にくく、バランスがととのう。スパイスの香りはしっかりするけど、食べやすいな、という仕上がりになる。
来月定期便でご用意する新商品、「クロワズモンの二味」もこの方法を使って作った、簡単なミックススパイスです。グリーンペッパーと青花椒は、辛味の種類が違うので、スパイスマトリックスのグループ的には違うグループに属するのですが、「青臭い香り」「青々しい風味」が共通していて、スパイスチャートでは似たような位置にあります。
もうひとつの方法は、まったく相反するものを組み合わせる、という方法。この方法を使うと、どのスパイスでも、どの食材とスパイスでも、組み合わせられます。でも、組み合わせるためには、その調合の比率をどうするか、ということと、それだけでバランスが取れない場合は、他の要素の調整が必要になる。
例えば、カレー粉。クミンだけでも十分にカレーっぽい香りがします。そこに唐辛子で辛味を加えれば、「カレー粉的なかんじ」になる。これはこれで、料理になにか、アクセントをつけたいときなんかには、使えるミックススパイスです。でも、カレーのように”渾然一体とした味”を作るには足りない。そこで他の要素を加えてミックススパイス全体のバランスを整える必要があります。さらには、そのカレー粉が主にどんな食材と合わせるのか、万能にしたいのか、でどこに寄せていくか、が大きく変わってきます。寄せ方もいろいろある。ひとつのスパイスにフォーカスするときもあるし(例えば、このカレー粉はアジョワンをきかせたいな、とか)、甘い香りに寄せる(ビーフカレーなんかまさに)ときもあります。
スパイス調合、どうしたらできるようになりますか、っていうのをよく聞かれます。レシピを真似ることはまず簡単にできる。それが好きだったか苦手だったかで、自分の好きなものを残して、ちょっとずつアレンジする、みたいな方法は、スパイスの大まかな特性がわかれば、多少できるようになる。でも、複雑なミックススパイスを一から作るには、やっぱり個々のスパイスの香りの特性や、他のスパイスと合わさったときどういう性格を持つかということ、さらには、料理に落とし込んだとき、どういう調理法でどういう変化をするか、というところまで、想像できていないとなかなかドンピシャでバランスをとることは難しいと思っています。世にバランスの悪いミックススパイスが多く存在するのは、すごく悲しいし、それがスパイス料理、と思われていることもすごくもどかしいことですが、これが現実。みんなもっとスパイスを知ったら、世の中の料理がもっと美味しくなるのにな。
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