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みみダンボ    赤と地の会話


昨年初冬。
やっと来たバスは混んでそうだと
乗車口あたりに近づくわたし。

だいぶ離れた所で話しながら待っていた2人のおばさんがいつの間にか私の背後に張り付いていた。

降りる人が一段落するより早く
後から急かされるようにステップを上がらされると1番奥が空いていた。
ほっとした。









「あそこあいてますわ、オクサン!」



私の席に と勝手に思っていたが

おばさんの腹式の大声でキープされてしまった。

座るか、
物を置くか、
席取る手段に種類はあるが 
声という空気の振動も
座席確保の手段である!と教えられた。
おお、こわい。

満員のなか押されながらも
おばさん達をお通しし
私はその前の吊り革を握った。

2人とも75歳以上とお見受けしたが
以下か以上かわからない。
アラカンの上はなんぞや。

腹式大声のおばさんは
どんぐりみたいな黒系ニット帽から銀髪をのぞかせ 男性的な顔立ちに派手な赤のコートを着ておられた。

もう1人は 多分おめかししておられたかもしれないが赤のおばさんが目立つので地味で普通に見えた。

満員 吊り革 ・・・か。

アイデアのメモとりも 居眠りも無理だ。

外の景色も私の立ち位置からは見えづらい。

目的地は随分先だし おばさん達も同じとこで降車らしく席も空かない。

聞く気がなくても 耳が仔象になる。


赤のコートのおばさん→赤
地味に見えるおばさん→地

会話に耳だけ寄せていただきますわ。
   ワタシはダンボ。

地 「バスの中はあったかいですねぇ」

赤 「座れてよかった」  

地 「おおきに。おくさん。ホホホ」
     お礼が必要だったようだ。

赤 「おくさん、粕汁とか食べはりますか?」

地 「はぁ食べますよ。おいしいねえ。あったまるしねぇ。」

赤 「わたし粕汁大好きでね。毎日食べますね ん。酒粕もね、⚪︎⚪︎のが美味しいさかい◻︎◻︎からまとめて取り寄せてますねん。」

地 「へぇそうですか。そこの酒粕美味しいんですか」

赤 「あそこの使こたらね、そこらに売ってるのは美味しいと思えへん。」

地 「美味しいても毎日はねぇ。
よう食べられへんわぁ。飽きはらしませんか?」

赤 「ちーっとも。
いっぺんにドカンと大きい鍋にこしらえといて
2、3日足しながらね。3日目くらいになると 
どろーっとして粕が美味しいんですわ。」

地 「へぇ!

【地味さんは落ち着いた穏やかな感じの人とみた。しかし自分の意見はしっかり持ち、穏やかにそれを発言できる。ちょっと見習いたい感じもある、(知らんけど)ように思った。】

つづけて

地 、、、わたしね、そのどろーっとしたん苦手ですわ。残りカスみたいでね。どろっと気持ち悪て。そうなったら捨てますねん」

否定された感も一切感じることなく

赤 「いやぁ、そうですかぁ。
あれが美味しいのに。もったいない」

♬ひとっそれーぞれこのーみはあるぅーけどぉーだ。

地 「あれ、あきませんわぁ。わたし」

赤 「おくさん、ブリお好きですか?」

話の余韻というものも
話の隙間というものも

赤おばさんには存在しない。

地おばさんは受けて立つ。

地 「ブリねぇ。前はくどいばっかりや、思って嫌いやったんやけど旅行で◯◯へ行った時に旅館で出て来たお刺身がおいしかってね。
それやったら食べられるし好やぁ思てね。」

赤 「◯◯のは美味しいですわ。
  あそこのん食べたらね、そこらへんのは
  くどいばっかりで食べられませんわ。
  ◯◯へ行ったらわたしも食べます。
  お酒も◻︎◻︎の美味しいしね。」

地 「よう呑まはりますの?」

赤 「そんなようけは呑ましませんけど
   美味しいのをそこそこね。」

地 「そうですかぁ よろしいねぇ」

赤 「去年の地蔵盆たいへんやったんちがいますのん?」

地 受けて立つ
「そやったみたいですわぁ。直接には関わってしませんけどねぇ。」

赤 「地蔵盆も子供が少ななったからいうて 
止めてしもたらあかんさかいねぇ。続けていかなあかんいうて、幹部集まったらその話ですわ」

【やはりそうか。そやろなぁ。
この赤おばさんが町内に関わらないことは考えられない。町内に必ず1人は存在するお方とみた。】おおこわい。

赤「ほんでどうでしたん?」

地 「去年、町内のきまりでは『同居の孫だけ』てなってるとこを「娘が孫連れて帰って来るさかい、1人くらい入れてもらえへんやろか」ていう人がいてはってね。
 役に当たったのが 可哀想に若い奥さんでね。
「きまりですしぃ」言うていっぺんは断らはったんやけど しつこうしつこう

「1人くらい入れてくれてもー」てグズグズ言うて来はったみたいでね。

 聞いてみますとなったらしいけど
 そう言う話があるのを耳にした他のとこから ね。「それやったらウチも」てなりますやん。
それで役員とその人らの間でその奥さん板挟みらしかってねぇ。」

赤 「それやったらそれで子供ら入れたげたらあきませんの」

地 「また、それはそれで
もう既に他に予定入れてしもて孫が参加出来ひん人からは文句でますしね。その役の奥さん気の毒でしたわ。」

赤 「ほんで結局どないなりましたん?」

  ワタシはダンボ! それでそれで!

地 「おくさん、次ですわ。前の方行っときましょか」

赤 「ホンマやね。ついつい話し込んでたらあっちゅう間につきましたわ。ハハハ」

  ええ?っうそやん!ハハハて・・・



  きかせてくれよ!その先をー!



ワタシもおりるんだったけど。

おしまい


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