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「簡単・わかりやすい」では生きられない

【半導体不足で見えたこと】
マスコミの多くの報道でも話題だが、半導体不足だという。「半導体不足ならぼくの生活は大丈夫だよね」と思っていたら、それは全てのものの不足になり、ものやサービス(電気とかガスとかのインフラも含む)の値上がりにつながっている。Amazonや楽天などの通販でも1か月前は考えられなかった納期の遅れがある製品が出てきた。価格も上がっているものも多い(2021年11月末時点)。「こんなになるなら、もっと早く頼んでおけば良かった」という気持ちになった人は多いだろう。結果は「半導体不足」ではない。「すべてのものの不足」だ。そしてこの傾向は今後も拡大するという。

【「風が吹けば桶屋が儲かる」思考】
要するに何かが起こり始めた初期に「風が吹けば桶屋が儲かる」的な複雑な物事の組み合わせを知っていて頭に入れていて(つまり勉強を常に怠らないでいて)、それをもとに小さな事実から、世の中全体の動きを予測し、できるだけ早く「これからなにをしたらいいか」を決め、自分の態度や、やることを決め、自分の責任で実行する。それが重要な「生き残りの鍵」になる時代になったのだ。いままでのように数十年間同じで良かった時代ではないから、いままでのままでは生き残れなくなった。そしてこの実行までの時間をできるだけ速くする必要がある時代にもなった。スピードも重要なのだ。

【複雑なものを複雑なまま頭に入れ理解する】
世の中は複雑だ。これまでは、多くの人は「上の人の言うことをきいていればいい、なんとか生きていける」と思っていた。「上の人」はそれだけの責任を負う代わりに給料が高く待遇が良かった。だから多くの世の中の部分の責任を負うための情報を必要とする人に「複雑なことを簡単に解説する」という商売が繁盛した。マスコミの「解説」とはそういうものだ。しかし、マスコミの中の人の全てがそれをできるわけもなく、スピードも遅い。解説できるようになるまでの時間を待たず変化は起きている。複雑なことを簡単に解説するとウソも混じる。それを聴くほうも、鵜呑みにしたら判断を間違える。結局、マスコミの解説を待っている時間がない。自分の頭で考えて、自分の結論を出し、自分の責任で行動を起こすしかなくなった。勉強を怠らず、自分の頭のなかに、複雑なものを複雑なまま整理して入れておき、それを必要なときに引き出せる力が重要な時代になった。

【サプライチェーンの切断】
「サプライチェーンが切断されている」という。この一言が私たちの生活にいかに重要なことなのか?ということがわかるためには、非常に複雑化した現代の製造業の国境を超えたサプライチェーンを理解していなければならない。「半導体不足」という現象が示す事柄が、やがて「スパゲティの値上げ」になぜ至るのか?を一瞬で理解し(そういう判断ができる勉強を常にしておき)、行動を起こすことに大きな価値が出てくるのが、現代という時代だ。

【現代の製造業のサプライチェーンの姿、ってこんなもの】
例えば、だが、Appleは米国に本社を置く会社だが製品は中国で作っている。中国の製造業者は中国国内だけでなく、アジア各国、日本から、台湾からも部品を買って製品を作っている。日本から買う部品は例えば「スマホの中のカメラ」がその一例だが最近は台湾製のカメラも多くなってきた。そのカメラのレンズはXXが作っているものを使い、手ブレ補正機構のための磁石はXXで作っている。その磁石は別の国で産出する鉱山からできている鉄を使い、磁力を強めるための鉄に混ぜる混合物質は更に別の国のXXという会社で作っている。さらに、磁石の原料の鉄の更に原料となる鉄鋼石の採石場はXX国にあり、その採石場では日本のダンプカーが活躍していて、そのダンプカーを作っているのは。。。と、延々と続く。それが現代の製造業だ。どれ一つをとっても「単純」ではない。

【今の時代に限らないが】
こういったことを理解する能力は、いままでは経営者などの多くの人をまとめて人の組織を作る人には必須のことだった。しかし、現代にあっては、リーダーでなくとも必要な力になった。一言で言えば「乱世」になったからだ。いま、目の前にある小さな出来事や情報から、世界を想像し、自分の行動を決める必要が誰にも出てきた。

おそらく、私たちの多くが抱いているであろう「置いていかれるかもしれない」という感覚は、この現代の様相から来るものだろう。「勉強すること・自分の頭で考えること」を怠れば、やはり置いていかれるしかないのだろう。

【シンプル・ライフの罠】
この複雑さにうんざりする人は当然増える。そしてあなたに囁く。「ほら、複雑なものより簡単な方が楽でしょう」と。人は怠惰な生き物なので、その囁きについ頷く。そこには新たな問題が横たわる。それを商売にする人がいる。必要なのは、複雑さを、避けることではなく、いかに複雑さと共に生きるか、だろうと、私は思う。


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