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スマホのワイヤレス充電は使わない?。

【ワイヤレス充電は便利】
YouTubeなどを見ても、スマホなどのワイヤレス充電は便利、という動画は多い。ワイヤレス充電に関わるほとんど全ての動画がそういう動画だ。スマートウォッチなど、小さくてコネクターなどのスペースも惜しい、スマホより小さな機器ではワイヤレス充電しかできないものも多い。

【簡単に:ワイヤレス充電の仕組み】
ワイヤレス充電の仕組みは、電源供給側(クレードル側)の電源内部で直流を交流に変換し、さらにコイルにその交流を流すことで、強力な電磁波を発生させる。「電力の受け側」のスマホ内部では、その強力な電磁波を受けるコイルがあり、今度はコイルで受けた電磁波を交流から直流に変換し、スマホの充電の電源に使う。この強力な電磁波は、スマホが通信に使う周波数とは違うので、通信には影響を与えないものの「電磁波(電波)」でエネルギーの転送を行っている。つまり、この充電方式では、

電気 → 電磁波 → 電気

という変換を行って、電力をスマホなどに供給している。電磁波は空中を伝わるので「ワイヤレス(Wire Less - Wireless - 線がない - 無線)」になる。

【伝送損失というのがある】
通常の充電は、有線(Wired)なので、

電気 → 電気

という経路(電線 - 厳密に言えば無視できるほどではあるが小さな損失はある)を大きな電力を持った電気が通るために、電磁波にする、という過程が無い。

しかし、ワイヤレス充電では、「電気 → 電磁波」「電磁波 → 電気」という変換が行われ、さらにこの間にある「電磁波 → 電磁波」という経路でも、電力が失われる。失われた電力は「熱」となって空間に吐き出される。自動車を動かすときの「排気ガス」のようなもの、という考え方もできるだろう。この「(充電という)目的」以外で失われる電力」のことを「損失」と言い、特にこの場合は「電力を伝えるところで起きる損失」ということで「伝送損失」と言う。英語であれば「Transmission Power Loss」ということになる。

※余談:しかし、英語は便利だねぇ。「power」は、電気の分野では「電力」、政治であれば「権力」とか、分野が違っても同じ単語で本質が語られるので、分野が違っても文章の意味が結構つかみやすい。

【実際に数字にしてみよう】
これらの「電力の伝送損失(空気中に無駄に熱として排出されるエネルギー)」は、どのくらいか?を考えてみよう。

この記事によれば、多く見積もっても、スマホの充電時の効率は約70%ということになる。ワイヤレス充電では、スマホに送ったつもりの100の電力のうち、30が「充電時に失われる」ということだ。

多くのスマホでは現在大きいときは5000mAhの充電池が使われているので、その充電池を満たす5000mAhの電池を満充電にするためには「有線充電」では、5000mAhの電力を使えばいいが、ワイヤレス充電では、7500mAhの電力が必要になる、ということになる。

【世界全体で見ると】
この「1つの機器としては非常に小さな電力損失」でも「チリツモ」であることは言うまでもない。以下、本当にざっくりした概算ではあるけれども、世界全体でこの数字を調べてみよう。2022年の現在、毎年出荷されるスマートフォンは、おおよそ15億台と見込まれている。また、スマートフォンの「寿命」は内蔵の電池の寿命による、と考えると、おおよそ2年前発売のスマホまでが稼働している、と考えることができる。であれば、現在ふつうに稼働しているスマートフォンは世界で30億台くらい、と思われる。この台数のうち、約1/3くらいが「ワイヤレス充電機能を持ち、ワイヤレス充電されている」と考えると、約10億台が毎日ワイヤレス充電されている計算になる。

スマホの充電池の平均電力は最大では5000mAhだが、多くは4000mAhくらいが平均と考え、さらに、毎日、その半分の充電がされていると考えると、10億台x2000mAhの電力が毎日世界でワイヤレス充電によってスマートフォンに充電されている、ということになる。そして、この充電を行うために、1000mAhの電力が毎日失われているとすると、1000mAh(1Ah)x10億=10億Ah。そして、充電電圧が平均で5Vとすると、50億Wh、電池の電圧がリチウムイオン電池の平均であるとしても、3.8Vなので、38億Whの電力が毎日熱になって空気中に無駄に排出されていることになる。更に少なく加減したとしても、30億Wh(300万kWh)の電力が毎日世界で失われている計算になるのではないだろうか?。

※実際には、上記の数字は概算で、ところどころわからないことは独断で増減させているため、様々なところで疑問が出てくるものもある。「僕の持っているiPhoneでは。。」なんてのを根拠にする人もいるかもしれないが、日本で4十数%のシェアを誇るiPhoneの世界シェアは約13%だ、ということも考える必要がある。

【冷蔵庫で考える】
毎日家庭で稼働している冷蔵庫。この消費電力は現在のところ、かなり省エネが進んでいて、250kWhほど、と言われている。つまり、全世界で、冷蔵庫1万2千台を稼働させる事ができる電力を、スマホのワイヤレス充電で失っている、という計算になる。

【ワイヤレス充電どうする?】
これを多いと見るか?少ないと見るか?は人それぞれだろうが、SDG'sが言われ、省エネが言われ、この冬には、日本でも電力不足が既に言われている。さらにこの失った電力で誰かの命が救えたかも知れない、と思うと、やはりワイヤレス充電は自分は使わないなぁ、という結論になる。

【ただし、ってこともある】
ただし、こういう計算で「ワイヤレス充電で無駄に失うエネルギー」以上のエネルギーを、ワイヤレス充電の利便性によって、あなたの仕事で作っている、という確信があれば、当然、こういうことだけではない物の考え方ができる。今はただエネルギーを無駄にしているだけでも、将来、大きなエネルギーを産む、と考えてもいい。時系列でもエネルギーの収支を考える必要もあるだろう。

物事は多面的に見て答えを出さないと間違える、ってこともある。1つのことに集中するあまり、他のことが見えないために、結果として更に大きな損失を出す、というのは「視野狭窄」と言うのだ。これは太陽光発電などの議論でも見られることなので、注意深く物事を広く深く見る、ということが重要だ。できれば、自分だけではなく、自分以外の人の意見も聞いて、ということも必要になることもあるだろう。

【ワイヤレス充電は遅い、とか】
あと、個人的なことではあるが、ワイヤレス充電の充電時間はワイヤレスではない場合に比べて長くなることが多い。これも、自分の使い方での利便性を考えると、使わない理由になっている。加えて、ワイヤレス充電ではスマホが熱くなることが、ふつうの充電のときよりも多いと感じている。電子機器は、高温だと部品の寿命が短くなる(故障が起きやすい)ことが一般的に知られているので、故障を減らす、という意味でも、ワイヤレス充電は使わないことが増えてきた。なにもしていないのに、ワイヤレス充電のときのほうがスマホ本体が熱くなるのに、不安を覚えるからだ。

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