起業の3つの新勢力。起業の民主化が始まった
見出し画像

起業の3つの新勢力。起業の民主化が始まった

ここ1年で、日本でも起業がググッと身近になってきました。

毎週のように、スタートアップの大型調達やIPOのニュースが流れていますが、何よりも変化を感じるのは、「人の動き」です。

以前であれば、起業したり、独立したり、スタートアップに転職したりしていなかった人たちが、ついに動き始めたように感じます。

主に3つのグループが、起業の世界に参入し始めたのです。

大企業エースクラスが動き出した

一つ目は、日本の大企業出身者です。

以前から、外資系出身者はスタートアップに参入していましたが、日本の大企業出身者は限定的でした。しかし、大企業のエースクラスが動く例が周りで増えてきました。

なぜ潮目が変わってきたのか?

先日、日本のスタートアップに詳しい斎藤祐馬さん(トーマツベンチャーサポート社長)にこの質問をぶつけたところ、「リスクとリターンのバランスが変化したから」と言っていました。

すなわち、「大企業にい続けるリターン」が下がる一方、「スタートアップに参入する」リターンが上がっているのです。

「大企業にい続けるリスク」が上がる一方、「スタートアップに参入するリスク」が下がっているとも言えます。

多くの大企業では、上の世代が詰まっているため、なかなかリーダーの地位に立てない。運よく出世できたとしても、その仕事があまり魅力的に見えない。コロナショックがあっても、会社が一向に変わりそうにない。

であれば、転職が難しい年齢になる前に、起業や独立やスタートアップ転職に挑戦した方が、幸せな人生を送れるのではないか。そんな思いを耳にすることが増えました。

起業型キャリアがお得に

しかも、「起業=成功率は万に一つ」という時代ではありません。

起業の成功率は、1000分の1、100分の1と言われることがよくあります。確かに、競争の激しい飲食店立ち上げなど、あらゆる意味での起業を含めれば、勝算は高くないでしょう。

しかし、ベンチャーキャピタル(VC)などから資金を調達する、成長志向スタートアップに関しては話が別です。

過去7年、スタートアップ業界でさまざまな起業家を取材してきた実感値として、仮にエグジット(IPOやバイアウト)を“最初のゴール”と定義した場合、成功率は50%を越すのではないでしょうか。

そもそも日本は競争環境が緩い上(特にデジタル分野)、資金調達や人材採用も以前より容易になっています。実力と実績があって、強いメンタルとチームを持つ起業家であれば、成功を計算しやすい時代になってきたのです。

しかも、起業のタイプが多様化したことにより、自分に合った起業のかたちを選びやすくなりました。

拙著の『起業のすすめ』では、起業型キャリアを以下の5つに分けましたが、自分の興味や適性やライフステージに応じて、会社員キャリアと、起業型キャリアを組み合わせやすくなってきています。

1) 成長志向スタートアップ型
2) プロフェッショナル独立型
3) スモール&ミディアムビジネス型
4) スタートアップ幹部型
5) 大企業イノベーター型

すなわち、やりがい、自由度、収入、キャリアアップ、社会的インパクトなどを総合したときに、起業型キャリアが“お得な選択肢”になってきたのです。

起業の中心は40代

2つ目の新規参入は、ミドルエイジ起業家です。「起業年齢の民主化」と言い換えてもいいでしょう。

私は41歳で起業しましたが、同世代の知人の中で、起業独立したり、スタートアップに転職したり、起業に関心を持ったりする人が明らかに増えました。

自ら起業してみてわかりましたが、40代の起業は大ありです。年功序列の色が未だ強い日本では、米国以上に「ミドルエイジ起業」は有利だと思うのです。

私自身も若い頃は「40歳ともなると、体力的にもガタが来るのかなあ」と恐れていたのですが、いざこの歳になってみると、体力面の衰えはさほど感じません。食生活に気をつけて、定期的に運動していれば、40代も最前線で十分戦えます。

起業先進国のアメリカでは、ミドルエイジ起業家の層がとても分厚い(欧州や中国でも、ミドルエイジ起業は珍しくありません)。

MITスローン経営大学院のピエール・アズレー教授らの著名な分析によると、起業家の創業時の平均年齢は42歳です。

ハイテク系スタートアップに限っても、40代前半が平均でした。ソーシャルメディアなどの、B2C向けサービスでは若い創業者が目立ちますが、起業の中心は40代なのです。

言い換えると、大企業やスタートアップで経験や実力や人脈を鍛え上げてから起業したり、シリアルアントレプレナーとして何度も起業したりして、成功を手にする40代創業者が多いのです。

分析レポートでも、「起業の実績は年を重ねるにつれて大きく向上し、40代後半で頂点に達する。年齢以外に何の情報もない起業家2人と向き合ったら、たいていの場合は年長の創業者に賭けたほうが賢明だろう」と結論づけています。

40代になると利他的になる

ミドルエイジ起業には、「経験」や「人脈」など多くのメリットがあるのですが、地味に重要なのは、「自我に食われにくい」ことです。

人にもよりますが、40代ともなると自分のことを考えるのに飽きてきて、自分を超えた「誰かのため」「業界全体のため」「社会のため」という視点が濃くなってきます。ソーシャルシフトしていくのです。

ハーバードビジネススクールのノーム・ワッサーマン教授は、2.7万件のキャリアデータをもとに、年代別に「起業の動機」の違いを調べています。

その結果を見ると、40代の男性起業家と、20代の男性起業家の起業動機には明らかな違いがあります。

男性の場合、20代も30代も「権力および影響力」「自律性」「人を管理すること」「経済的利益」が4大動機ですが、40代になると突如、「仕事の範囲が広いこと」に加えて、「利他心」が浮上してくるのです。

画像1

ちなみに、女性起業家の場合、20代から「利他心」が4大動機に入っています。ワッサーマン教授は「利他心に関しては約20年、男性起業家は女性起業家に遅れている」と記しています。

周りを見ていても、自分を超えた何か、世のため人のため、ノーブルな目標を掲げる人が、40代を超えると増えてきます。ハングリーさとノーブルさの塩梅が良くなるのが、40代なのかもしれません。

新フリーエージェントの時代

3つ目は、副業起業家の勃興です。

これは日本オリジナルの起業スタイルであり、日本の一大勢力となるでしょう。

最近、ダニエル・ピンク氏の『フリーエージェント社会の到来』を読み返しました。

これは20年前に出版された本で、「アメリカの労働人口の4人に1人が、フリーエージェントの働き方を選んでいる」ことを世に知らしめました。

米国から20年遅れで、日本にもフリーエージェント社会が到来しようとしています。

ちなみに、フリーエージェントの定義は、フリーランス、臨時社員、ミニ起業家ですが、日本の場合は、これに副業起業家を加えたいところです。

副業起業家は、大企業などで働いて安定収入を得ながら、副業で新しいことにチャレンジします。債券と株式で運用するポートフォリオのようなものです。

副業がうまくいって、「そちらに集中しても食っていける」と思ったら、副業を本業にすればいい。副業で独立して、フリーランスで活躍した後、また組織で自らを磨きたいと思えば、組織に戻ればいい。

働き方を柔軟にピボットしていくのです。

今後は、大企業社員、スタートアップ社員、副業社員、フリーランス、起業家などのポジションを、ライフステージや興味に合わせて、移り変わっていくことが普通になるでしょう。

もちろん、バラ色の話ばかりではなく、自由を得るためには、知恵やスキルセットや人脈を常に磨き続けるマインドセットが大切です。

企業側も、起業型人材に社内で活躍してもらえるよう、新会社や新規事業を立ち上げられるチャンスをよりふんだんに提供するはずです。

その中から、JR東日本の阿久津智紀さん(TOUGH TO GO社長)のような「大企業イントレプレナー」がどんどん生まれてくるでしょう。

起業コンテンツの民主化を

これから起業の裾野をさらに広げるために欠かせないのが、起業コンテンツの民主化です。

今回、起業するにあたり、起業や経営の本を100冊以上読み漁りましたが、『起業のファイナンス』のようなバイブルにまでなっている本は希少です。

教科書的な本は翻訳本が中心です。もちろん、翻訳本もヒントに満ちていますが、日本市場にそのまま当てはめるとリアリティーのない話もあります。

かつ、起業情報は日進月歩のため、古くなりやすい。起業家やスタートアップからのリアルな情報発信も増えてはいますが、まだまだ量が足りません(起業家はとにかく忙しいため、発信する時間がなかなか取れません)

そこで今回、私自身が起業するまでの半年間で学んだことを、本として出すことにしました。

「なぜ今、起業なのか」

「起業するメリットとは何か」

「起業の誤解とは何か」

「社内外で起業家として生きるにはどんなキャリアがあるか」

「起業に成功するポイントは何か」

起業が皆さんにとって身近なものであることを知ってもらうべく、起業の過程で私が学んだこと、感じたこと、100人以上のプロや先人に教えてもらったことを本書に詰め込みました(自分だけで独り占めするのはあまりにもったいないですので)。

「自分が起業する時に、こんな本があったらよかったな」と感じた本を、自ら創ってみました。

「おいおい、佐々木さんの新会社は、まだプロダクトも出してないのに、本なんて書いている場合かよ」というツッコミが来そうですが(笑)、現在進行中の今だからこそ書く意味があると思いました。

今、私が経験していることは、いずれ陳腐化するでしょうし、そもそも数年経ったら、起業当時のことなんて忘れてしまうでしょう。だからこそ、経験したてのホヤホヤの内容を世に出そうと思いました。

本書はいわば、私自身の起業リアリティーショーみたいなものです。

この本を読んで、「ぜひ起業しよう」と思う方がいたら嬉しいですし、逆に、「こんなに大変なんだったら、やっぱり起業はやめておこう」と思い留まるのも大歓迎です。

起業はあくまで手段。起業すること自体が偉いわけではありませんし、起業以外で幸せな人生を送ったり、世の中に貢献したりする道はいくらでもあります。

今後立ち上げる経済コンテンツアプリ「PIVOT」でも、起業コンテンツを記事や動画や音声で配信していきます。

スタートアップのコンテンツや、組織内外で活躍するアントレプレナーのストーリーを楽しみたい方は、ぜひPIVOTのアプリをダウンロードしてみてください。

ぜひこれから訪れる「起業黄金時代」を存分に楽しみましょう。

追記:PIVOTの創業期メンバーも絶賛募集中ですので、ご興味のある方はぜひご応募ください!


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
1979年生まれ。東洋経済オンライン編集長、NewsPicks創刊編集長などを経て、2021年にPIVOTを創業。現在、経済コンテンツアプリを準備中。著書に『日本3.0』『米国製エリートは本当にすごいのか?』『編集思考』など。10月24日に『起業のすすめ』を発売