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第3話 同じやり方ではもたない、横割り分業制の導入

ベテラン営業社員が大量に退職。

会社は、事務所、自動車など、一定の固定費がかかっているので、辞めた社員へ支払っていた給料が減るからといって、売上が激減していいわけがない。

どうやって売り上げをあげていくか?


残った営業の社員は経験の浅い若手社員ばかりだ。

この仕事は、お庭のコンサルティングのようなものだから、知識と経験がなくては、お客様からご信頼も得られず、案件をいただくのが難しい。


そこで考えたのが、営業が最初から最後まで関わる、今までのいわゆる縦割り体制から、営業、事務担当、現場監督、現場職人と、業務を4つに分業化して、いわゆる横割りの体制に変更することだった。

さらに、その細分化した営業の部分も、お客様窓口は営業担当が行なうものの、僕や現場監督が相談に乘り、質の高い提案内容に仕上げて、営業がお客様にお持ちする形にした。


少ない営業メンバーで、今まで同様のお客様訪問数を維持するには、営業の1案件への携わり時間を減らし、できるだけお客様窓口に割ける時間を確保することを考えたのである。


営業社員が経験が浅いと言っても、コミュニケーション能力の高い社員を採用してきたので、お客様ときちんとお話することは出来た。

この結果、営業は、内部事務の作業や、現場監督の負担からだいぶ解放され、その分、案件をしっかり考えたり、お客様とお話する時間が増え、なんと、成約率は、以前より高くなった。

ただ、仕組みの改善には、メリットもあればデメリットも発生する。

そのデメリットの1つが、業務を横割りにした場合の、各特化した部分のやりがい問題である。

営業はやりがいを感じやすい。なぜなら、お客様からご信頼をいただき、完成すれば、たくさんの感謝のお言葉をいただけるからである。古今東西、いろいろな仕事があるが、「お客様の笑顔」は共通して、仕事のやりがいの最高の源泉だと思う。

事務担当も、CAD(図面作成ツール)で図面を作ったり、見積書を作ったりと営業の裏方の仕事にはなるが、たとえば、出来上がった素敵なパースにお客様が感動して成約したと聞けば、喜びも感じやすい業務だと思う。また、営業になるには、この事務担当が登竜門になるので、営業を志す方には、少々の面倒な作業は頑張れる。

現場職人も、そもそも物作りが好きで始めているし、今回のことによる、業務内容に大きな変化が発生したわけではない。


問題は、現場監督である。

今までは、現場監督専任はいなかった。営業が兼務していたのだ。ただ、営業にお客様窓口とプラン作りに専念させるためには、この部分を営業から取り除く必要がある。

現場監督は、営業と現場、あるいはお客様との間に入って、各所からの要望、不満を上手にバランスを取って現場をおさめる調整役なので、ストレスが溜まることが多いポジションだ。

それに、手を上げてくれたのが、現場職人のリーダーをやってくれていたTさんである。彼は、前職で現場監督を長くやっていたので、現場監督としては、最適任である。

ただ、彼は現場でものを作りたくて当社に入ってきているので、会社の危機だからやむを得ないという思いもあって引き受けてくれたと思う。

早く彼の後継者を育てて、また彼を現場に戻してあげたいと思う。彼が、このポジションを引き受けてくれなかったら、この仕組みは成り立たなかったし、会社の存続も危うかったと思う。本当に感謝している。



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