長野まゆみ作品に出会った。


夜啼く鳥は夢を見た (河出文庫)

私が長野まゆみの小説に出会ったのはけっこう最近のこと。

twitter等で上げられてる小説(名刺メーカー使用)の書き手さんが

長野まゆみに影響を受けてると知って興味を持ったからだ。


その方の小説は淡いピンク色と水色の綿菓子のような

夢見心地の良いふわふわで可愛くて癒やされる小説だった。

世界観も幻想的で私には絶対に思い浮かばない想像力の

表現や言葉選びをしていた。


その書き手さんの影響を受けた作家の話を読めばもっと濃厚に

その世界観に触れられるのではないかと

子どもの頃に初めて行く遊園地に期待するテンションで

長野まゆみ作品を触れて行った。


結果、営業終了した夜の動かないメリーゴランドですら

楽しんで乗ってる感じのハマり方をしてる。


フリマアプリで10冊以上と一気に買ったので

最初は装丁が壁に飾ってても可愛い

「少年アリス」から読みだした。


一冊目:「改造版 少年アリス

こちらは初めて銀河鉄道を読んだ時のような

私にとって夢ふわ過ぎて抽象的な表現に目が慣れず

途中で読むのをやめてしまった。

きっと今なら楽しんで読めるけど。

(銀河鉄道は時代とその文化の違いに読んでて置いて行かれた)


私には長野まゆみとの相性は悪いかな~と思ってたけど

twitterで追いかけている名刺メーカーを使って小説を上げている

SS作家さん達が長野まゆみが好きなのできっと何かある…。

私の好きな書き手達が影響を受けるほどの

旨味がどこかにあるはずだ…と

探す気持ちで諦めず読み続けた。


二冊目:「鉱石倶楽部

こちらは私が鉱石が好きなのもあり読み進められた。

最初の方に書いた私の好きなtwitterでのSS書きさんの

ゆめふわ感ある表現に近かった。

鉱石一つ一つを甘くてとろけそうなジュレやケーキ等の

スウィーツに表現しててそれに纏わる幻想的なお話。

とても可愛らしく絵本のような世界観のお話を読んでて

その感動をクレヨンやアクリルガッシュを取り出して

描きだしたくなる創作意欲の湧くお話だった。

私の好きなSS書きさんが長野まゆみの表現力に

影響を受けたのはこれで納得した。

しかし、私自身はまだ長野まゆみの世界の扉の外で様子を見てる感じ。

その世界の外観がとても可愛いですね~とインスタに上げる為の

写真を撮って帰ろうとしてる感じ。

「鉱石倶楽部」はとてもお気に入りの一冊だけど

好きなSS書きさん達が「のめり込む」ほどのものが

まだ私には納得がいかなかった。


三冊目:「いい部屋あります。

こちらはSNS出会った大好きなSS書きさんより

おすすめしてもらった小説。

BL専門の商業BL小説ではなく文庫本で匂わす程度のBL小説(例:月魚)を

読んでみたい!と言ったらこちらをおすすめしてもらった。

匂わすどころかはっきりボーイズラブだった。

ただ登場人物がみんな性格に癖はあるけど長野まゆみの描き方だからか

お上品で可愛いくて優しい男の子同士のやりとりに安心して楽しめた。

甘酸っぱいとか青春とかティーンズ向けとかでは決してないけど。

やっぱり出てくる言葉がファンシーでふわふわしてる。

オムレツやタルトの表現が活字から

その焼き具合までわかる匂いがしてお腹が空く。

食べたい!ってなる。

この辺りで品が良く真面目で育ちの良い登場人物を描く作家なので

長野まゆみも育ちの良いお嬢さんなのかなと勝手に決めつける。

痛々しい・暴力的・治安の悪さがないので

それらが苦手な私のようなタイプは安心して

このほの甘いバニラエッセンスが香る

生クリームのプールのような話は嬉しい。

しかしこのお話も好きな人は

本を見開きに顔を突っ込みたいぐらい好きだろう。

だけどまだ私はまだ…これじゃない感があった。

まだ痒いところに手が届かない。

喉に詰まった魚の骨。上手く飲み込めない。

遊技機だとリーチになったけど

当たりと確変が出てこないもどかしさ。

ドーパミンが出そうで出ない。

次の作品に出会うまでは。


四冊目:夏至南風

これは強烈だった。

本当に凄まじかった。

今まで見てきたどの作品よりも強烈で残酷で官能的だった。

上記の「いい部屋あります。」では

痛々しい・暴力的・治安の悪さがないから安心して読めたけど

これはそれらが全部揃っていた。

だから私も苦手で適当に飛ばした箇所もある。

この小説も強烈なBLだけど怖いのが男の子同士が

息を吸うようにキス以上の関係になる事。

近親相姦、性的虐待、性暴力、いじめ、リンチ、犯罪、少年の死体が

「よくあること」が日常。

どこかの熱気と湿気が高いアジアのスラム街のお話のように思えた。

具体的なことは描かれないまま話は進み終わるので

始終「????」なところは多い。

でもそれでいいかもしれない。


主人公の鈷藍(クーラン)が見た日常光景。

主人公が一体何者かも名前も途中でやっとわかる感じだった。

本名かも正直わからないし。

これを読むまでに読んだ長野まゆみ作品三冊から

かけ離れた作品で驚いた。

ゆめふわ感が完全になくなり

ドロドロで活字から腐った魚の匂いがする。


テーマが「腐敗」だからだろうけど。

こんなショッキングな話でも

非現実めいた昨夜見た朧げな夢のような夏のアジアの夜。

その蒸し暑い夜に浮かび上がる白くて妖しい美少年の碧夏(ビーシア)。

私の長野まゆみに求めていた理想は

淡いピンク色と夕暮れを混ぜた金平糖のような話で

私の知らないファンシーな夢の世界に

ラベンダー色のユニコーンに乗せて連れて行って!が本音だった。

しかしこれは180度違う世界にジェットコースターで連れて行かれた。

ここでやっと長野まゆみ作品でリーチに掛かっていた

私の脳は確変を起こした。

当たり続きとなりドーパミンが溢れた。

もともと沈みたくて自分から浸かりだした

長野まゆみ世界の沼だったけど

気付いたときには空が見えないぐらい沈んだ。

正直これはゾクッとする怖いお話だったけど。


五冊目:夜啼く鳥は夢を見た


長野まゆみ作品の世界に魅了されて

沈んだのは上記の「夏至南風」。

だけど私が求めてた「長野まゆみ感」の理想はこの本だったと思う。

やっと出会えたねって思わず呟いた。

実際にこのテイスト具合が体質的に本当に好きなんだと思う。

夏至南風」ではテーマが腐敗だからか

腐敗した食べ物の匂いや腐刑の犬が所々に出てくるけど

夜啼く鳥は夢を見た」は沼と水蜜桃と鳥の水笛がずっと出てくる。

多分、あの世とこの世と生死の境目のお話なんだと思う。

ここでも長野まゆみ作品には絶対に出てくる

色の白い華奢な美少年の草一が出てくる。

この美少年は本当に私も好きで

長野まゆみの美少年の綺麗さを表現する言葉の数々に

ずっとうっとりしてた。

夏至南風」の世界観の治安をずっと良くして

いい部屋あります。」ほど具体的ではなく現実的でもなく。

この朧気で曖昧な金縛りの時に見る夢のような

小説はとても心地よかった。

謎が多いけどその謎の多さも艶っぽくて惹かれる。

具体的に描かれなかった謎の多い

不思議で孤独な美しい少年の草一には

当分惹かれていると思う。


長野まゆみの作品を読んでて、長野まゆみの多彩な表現力や

その世界に行きたくなる描写のファンシーさも勿論大好きだし

それ見たさで覗いた世界だったけど

私は長野まゆみ作品に出てくる

綺麗な少年達にお熱になったんだなぁと思った。


まだまだ未読の長野まゆみ作品はあるので

これからも読んでいこうと思う。


もっと長野まゆみの世界にぬくぬくと爪先から頭の先まで浸かり

肺までその世界観を吸い込みたい。


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