離婚することにしました。17

私が頂いたプロポーズの言葉は、
ずっとそのままで変わらないで
気の強いところも一生変わらないで欲しい

私は産後のことがあってから、より一層家の中でイライラし笑うことが出来なくっていった。
機嫌がいい時はもちろんあるのだが、ちょっとしたことで怒った。
完全に配偶者を舐め腐り、ていのいい下僕にしか思わなくなってしまった。
義母を追い出してしまった罪悪感はあったので、配偶者に保育園での子供の出来事などを話し、夜ご飯は沢山のおかずを並べた。

配偶者は、
“俺の母親を追い出した女と我慢して話してやっております“
おでこに書いてあるよ!と突っ込みたくなる上辺だけの態度だった。
出産から3か月程度で職場復帰した私は、仕事では平気なそぶりを見せ、毎週末の土日は高熱を出して寝込んだ。
心は復活せず、体も限界な状態は続いていた。
それでもなんとか夫婦として形だけでもやっていこうと思っていた。
子供がいるのだから幸せな家庭を築かなければならない。
私の父親みたいに暴力で母親を制していたような家庭にしてはいけない。
子供が居るのだから仲良くしていないと。
配偶者を心底信用していない状態にも拘らず、なんとか形だけでもと踏ん張っていた。

私に変わらないでと言った配偶者が私の性格に対して、もうやってられない!とブチギレたのは1016年7月31日の夕方4時だった。
原美術館の帰り道にブチ切れられた。
私が「美術館のチケットは私が奢るから!」
そう言った瞬間だった。
配偶者は間髪入れず、
『なんなんだよ、もうやってられない!』
怒気を含んだ声で小さく叫んだ。
家の近所の、変なパンダ柄の柵がつけられた小さな公園を通り過ぎる時だった。
私は変に冷静で、あ!怒ってる!と吹き出しそうだった。
配偶者の怒りを重要視していなかった。
重要視していなかったが、その日の空の色も来ていた洋服をも夏の夕方の空気の匂いも何もかも覚えているのだから、それなりに衝撃な出来事ではあった。

今書きながら思うに、配偶者は住宅ローンを組んだことが非常に重圧だったのだろう。
俺は住宅ローンを抱えて苦しんでいるのに、チケットごときでおごってやるよ発言とは、と。
それまで色々我慢してきたであろう配偶者の、我慢に我慢を重ねた末の怒りを爆発させるのには充分な着火剤だったようだ。
あまりこの怒りを重要視していない私は、適当に詫びた。
配偶者は怒り続け、そこから口を聞かなくなった。

周りの空気を敏感に感じ取ってしまう私は、一緒に暮らす人が怒り続けている事がとにかく苦痛で家に居るのがしんどくなってしまった。
それと同時に、お前は私の一番つらい時に寄り添うこともせず母親を選んだ男なのだから、私が何を言おうが我慢すれば良い。
何に怒っているんだ?
は?
と心の中でキレていた。
お前は私に変わるなと言っただろう?
私はいつも通りだ。
文句があるならハッキリ言ってくれればいいのに。
言ってこないお前が悪いとまで思った。
とにかくふんぞり返った自分もいた。

しかし、なんとかこの状況を打破しようとも思った。
子供がいるのだから形式上だけでもいいから体裁を整えようと必死だった。
私が配偶者をバカにしている事がバレなければいいと思っていた。
保育園のママ友たちに夫婦が破綻しているのが知られて、裏でバカにされて子供のいじめに繋がるのではないか?とまで考え、本当に必死だった。

状況を打破しようとした私は、何故かそこから全く方向の違う分裂した2つの動きを見せた。

私①は仲直りしようと頑張った。
夫婦仲が悪いのは親との関係性にあると聞けば、世田谷区まで片道2時間かけてカウンセリングを受けに行った。
カウンセリングは広い部屋に椅子が円になるように置いてあり、自分が座りたい椅子を決めて座る。
そして、沢山あるぬいぐるみから母親に設定するぬいぐるみを選び、自分の座る椅子の隣にそのぬいぐるみを置いた。
『さぁ、お母さんに思いのたけをぶつけてください!』
カウンセラーは言った。
確かに母親には思うところは多少あったが、さぁさぁ!と他人から促されて滔々と述べるほどではない。
場の空気を読んでしまう私は、カウンセラーが喜びそうな事を並べて叫んで泣いて、ぬいぐるみと仲直りをした。
完全にシュールなカウンセリングだ。
つーか、コントになるよ、これ。
親との関係が夫婦仲を悪化させる要因だと仮定しても、その原因が母親なのか?
判断能力の鈍っていた私は、高いお金を払い帰宅した。
カウンセリングからの帰宅後は、配偶者に頭を下げ、
「私が全て悪いので許してください」と言った。
それでも配偶者は『様子を見る。』とだけ答え、その数日後に些細な事で怒った私を見て、
『全然反省もしていないし、自分を変えると嘘をつきやがって!』
鋭い声で罵ってきた。

カウンセリングとは別に、毎月占星術の先生の家に通って私のオーラを綺麗にしてもらうという、今考えると非常に怪しいことにも傾倒した。
占星術の先生は、
『貴女は配偶者を愛しています。大事にしてもらえない悲しい気持ちを怒ったりせずに伝えてください。無駄なプライドを捨てるのは今です。』
と言ってきた。
先生が無駄だと言うプライドが強がりとか甘えられない事としても、それで生きてきた私は捨てると言われてもどうしたらいいのかわからなかった。
捨てるのが今だと言うなら捨て方を教えて欲しかったが、教えてくれなかった。

もう一人の私②はというと。
①とは全く違い、とにかく配偶者を私から排除することにいそしんだ。
生命保険受取人を配偶者から子供にすべて書き換えた。
結婚指輪を中古用品店に売り払った。
結婚記念で撮影したブライダルフォトDVDとアルバム全てを廃棄した。
配偶者と行った旅行写真が入ったデータ関係や、ありとあらゆる記念になるものを破棄した。
仲が良かった頃の全てを捨てたかったので、捨てた。
配偶者を好きだと思っていた私も捨てた。


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