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ケニアにて

30年くらい前に、憧れのケニアに行ったときのこと。それは旅行会社のモニターツアーで、貧乏だった当時の私でも、何とか行ける料金だった。

貧乏だったから、持っていける現金も少なかった。ツアーだったので、行く先々のお金は既に払っている。現地で使うのは、お土産代金とチップ代金のみ。

さて、ツアーの初日。そのツアーは、ナクル湖国立公園とマサイマラ国立公園を訪れる内容。お昼ごろナイロビに到着し、国立公園には2日目へ向かうことになっていた。なのでその日は、移動はなしでナイロビ泊。

泊まるホテルは、かなり高級。廊下にはふかふかの絨毯、入口には動物の彫刻があって、もし日本に同じホテルがあったら、泊まれないレベル。日本で貧乏とはいえ、当時のケニアの人からしたら、私たちはかなりお金持ちに見えたんじゃないかな。

おまけにそのツアーは人気がなかったのか、私と友人のみでの催行だった。そのおかげで、ガイドと運転手は、私たちの「専属」になっていた。

夕方までは決められた予定がなかったので、ホテル近くをぶらぶら見て回った。初日の夕飯は、ホテル近くのレストランが予約されていた。昼は良いけど夜の治安が良くなかった当時のナイロビでは、ホテル近くのレストランでも、その往復には運転手さんが同行してくれた。

そのレストランは、ワニなどの特殊な肉料理のお店。たぶん海外からの旅行客向けなんだろう。肉の種類は変わっていたけど、とてもおいしく頂いて、翌日からの国立公園の話で友人と盛り上がった。

食事を終え、運転手さんが迎えに来たので、そのままレストランを出ようとすると、ウェイターの様子がおかしい。聞くと、ウェイターから「チップ」のことを言われ、お金を何も持って来ていないことに気付いた。

普段、チップの習慣がないこと、既にお金を払っている場所だったから、パスポート以外を、全てホテルに置いてきていた。それは友人も同じだった。

盛り上がっていた気持ちも一転、「ああ、困った。どうしよう。。。」

すると、見かねた運転手さんが近寄ってきて、現地の言葉で何かを話しながら、私たちにお金を差し出した。何を言っているのかは分からなかったけど、「貸したるよ」って感じ。あのとき、運転手さんがいなかったら、どうなっていたことか。

今、思うと、それに加えて、お金をまるごとホテルに置いてきていた私たちもどうかしていたな。


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