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5分でそこそこ把握できる2023年版中小企業白書(後半その2/事業承継編)

 2023年版中小企業白書のナナメ読みもようやく真の後半戦。第2部・第2章に突入(p297~p422までの約120ページ、白書全体は760ページ)。本当に、ナナメ読みするにも骨の折れる文書です、これ。

第2部・第2章に書かれているのは”事業承継”を変革のチャンスにすること

第2部のタイトルは「変革の好機を捉えて成長を遂げる中小企業」。その第2章は「新たな担い手の創出」(第1章についてはこちら)。120ページを貫くメッセージは、”事業承継”をきっかけに、会社を変えよう!

もったいないに価値はあるのか。黒字での休廃業・解散(300ページ)

 2022年の休廃業・解散企業は約5万社。データのとり方によってばらつきはありますが、ここ最近は横ばい傾向だと思っていていいでしょう。そして、その5万社の5割強が黒字で休廃業・解散しています。業績は好調なのに、ということです。

出典 2023年版中小企業白書(300ページ)

 私の本家のりんご農家もそうですよ。りんごの生産・販売自体は好調で、このまま伯父が身体の続く限り農家を続ければ、農地も拡大して、栽培方法を見直して生産性も向上できて、増収増益間違いなしでした。ところが、2年前に廃業。理由は高齢&後継者不足です。伯父の年齢80歳、娘2人は嫁ぎ、甥っ子(私)は県外でサラリーマン。いま、伯父は農地のほとんどを手放し、先祖代々の裏の畑で、細々とりんごを育てています。
 そこに欠けていたものは何なんだろう。答えはまだちゃんと出せていませんが、パーパス(存在意義)なのかな、と思っています。家業を存続させるには、家業の存在意義が必要で。一家に必要とされなくなった時点で、その家業に存在意義が見いだせなくなった、そういうことかなって、現時点では整理しています。
 黒字なのにもったいない、とは私も思うのですが、もったいないから続けたほうがよい、というのは何だか違うなあと思ったりもして。甲本ヒロトさんがブルーハーツを解散するとき、こう言ったんですよね。「欲しいから手に入れる、好きだから抱きしめる。もったいないからとっとこう、は違う」。もったいない、の時点でパーパスが行方不明になっちゃてるんですよね。これを、従業員や取引先を抱える企業経営にそっくりそのまま当てはめることはできませんが、黒字で休廃業・解散する道を選ばざるを得なかった経営者の方々を想わずにいられません。
 これは、私が中小企業診断士を志したきっかけでもあります。あれ?白書のナナメ読みからかなり脱線したな(笑)

候補者はいるが、本人の了承を得ていない(306ページ)

 2017年をピークに、後継者不足は徐々に解消されてきており、2022年調査では57.2%まで減少(それでも多いね)。そんでもって「候補者はいるが、本人の了承を得ていない」という方々が結構いるんですな。しかも、70歳代以上で2割もいらっしゃるんです。

出典 2023年中小企業白書(306ページ)

 こういうデータもあったりして(↓)。伝えようとしてる(けど伝えてない)、伝えてないが併せて75%...一歩踏み出す勇気、相手もきっと待ってるんだよね。相手から言って欲しい、ってのもあるのかな。事業承継は、親族と従業員が7割。早めに言っといて悪いことはないはずなんだけど、いろんな事情や思いが複雑に絡み合うんだろうな。

出典 2023年版中小企業白書(308ページ)

事業承継を変革のチャンスに(316ページ~)

 事業承継は「第二創業」とも称され(318ページ)とあるように、新社長は会社を生まれ変わらせるチャンスだと捉えよう、と書かれており、その前提は社員の信頼を勝ち取ることだ、と書かれています。

出典 2023年版中小企業白書(321ページ)

 信頼を勝ち取るには、親族内承継の場合は「現場で働く」ことで社員との距離を縮めること、従業員承継の場合は「経営に携わる」ことで経営哲学や手法を学ぶこと、社外人材の場合は「従業員と自社の課題を話し合う」ことで関係性を築くこと。どれも一朝一夕でいかない中身です。

 これができて、先代社長との関係性がしっかりできていれば、あ、ちょっとオブラートに包んだな、先代社長がちゃんと空気を読んでくれれば、うーん、これも分かりづらいな、先代社長がちゃんと一線を退いてくれれば、新社長のもと、社員が自主的に行動してくれる風土ができるそうです。
 ...風土ができるそうです、と一言で言いましたが、省略しないで言うと、新社長のもと、経営方針をしっかり社員と共有して、判断軸を納得してもらって、経営計画を立てたり事業再構築をするときに社員も巻き込んで、当事者意識を持ってもらう、一体感を作る、ことで社員が自主的に行動してくれる風土ができるそうです。何事も、一筋縄ではいきませんね。

出典 2023年版中小企業白書(332ページ)

 無機質な読み物である白書を読んでいたはずなのに、ちょっと前半部分、入り込んでしまいました。ただ、やっぱりパーパスは大事だなって改めて思いました。極論すれば、パーパスがなくたって、日々の仕事はできますが、私がした単純作業にも意味があるとふとした瞬間に思うことができれば、その仕事はきっと、続けていけるはず。あれ、これって一歩間違うと、やりがい搾取に繋がるの?とも思いながら、白書第2部・第2章を閉じました。
                       (この次の後半に続く)

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