大場紀章 エネルギーアナリスト/ポスト石油戦略研究所代表

世の中を化石燃料から記号消費に至るエネルギーの変換過程と捉え、技術や文化などなんでも分析対象にしています。 ポスト石油戦略研究所代表 無料ニュースレター登録はこちら↓ www.postoil.jp

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    LNGに頼り過ぎることの脆さと、今後の対策について

    電力卸売市場(JEPX)の1月8日受渡 平均価格は驚異の99.9円/kWhになりました。時間帯によっては120円をザラに越えてきていますし、時間前市場では高値がずっと200円になっています。過去のJEPX平均値が10.9円、家庭用の電力小売価格がおよそ25円と考えると、いかに異常な値かがわかるかと思います。 JEPX 24h average http://www.jepx.org/market/index.html 広域機関が最大出力運転を指示することは極めて異例のことで

      • 【再販】P2P電力事業の可能性とはなんだったのか

        P2P電力取引事業等を先駆けて手掛けていたものの、2023年2月に操業停止となってしまったLO3 Energy。同社に勤めていた大串康彦氏による回顧記事が日経エネルギーnextに昨日掲載されたことをうけ、2018年11月24日に実施した第3回大場サロンで実施した大串氏との対談原稿(当時は前後編で1000円で販売していた)を、改めて値下げして再販することにしました。 身の上話から始まり、当時のブロックチェーン技術に対する関心の高さや期待感と懐疑みたいなものが感じられ、今読み返

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        • 我々はなぜ脱炭素しなければならないのか?

          数日前にTwitterで以下の様なアンケートをとりました。 我々はなぜ脱炭素しなければならないのか? 1.  地球・人類のため 2. 日本の責任だから 3. 日本経済のため 4.  実は脱炭素すべきではない 結果は以下のリンク先の様になりました。せひご覧になる前に一度考えてみてください。 私のTwitterフォロワーというバイアスはあるとはいえ、中々興味深い結果になったのではと思います。5000名を越える方に回答頂きました。ありがとうございました。連ツイでも書きました

          • サウジ石油の人民元決済は実現するか?

            中国の習近平国家主席は2022年12月9日、訪問先のサウジアラビアの首都リヤドで湾岸協力会議(GCC)首脳やアラブ諸国首脳との会議に出席し、「石油や天然ガス貿易の人民元決済を展開したい」と述べ、中国がエネルギーを輸入する際に人民元建ての取引を広げたいとの意欲を表明した。 中国が中東産油国との間で石油等の人民元決済について協議するのは今回が初めてではない。例えば、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子兼首相は、2016年に初めて訪中した際に、当時のアル=ファーリハエ

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          • 「負の原油価格」後の世界
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            ロシア原油輸入禁止の余波としての輸送問題と米シェールオイル生産の停滞

            4月14日、ニューヨークタイムズ紙はEU当局がロシア産原油の輸入を禁止する計画の草案策定に着手したと報じた。記事によると、輸出禁止は8月から段階的に行なわれるという。このようなやや緩慢なアプローチが検討されているのは、拙速な輸入禁止に慎重な、ロシア依存度の高いドイツやハンガリーといった国々に配慮し、代替供給先を見つけるための猶予期間を確保するためと考えられている。また、当局筋の話として、フランスのマクロン大統領の再選に影響がないように、フランス大統領選が終了する4月24日まで

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            過小評価される石油会社

            米国の石油ガス探査・生産関連の指標の一つとされるXOP(ETF)は、米国の原油価格指標WTIの年間上昇率58%を上回る、62%の上昇を記録し、2021年の市場の勝者の1つとなった。 しかし、それでもコロナ直前の水準にようやく戻った程度で、従来の原油価格とXOPの関係からすると、いまだに相当安い水準に留まっている。例えば、2018年1月の原油価格は、現在の100ドルより40ドル安い60ドル/バレルだったが、XOPは今より50%高かった。原油価格が100ドル/バレルを超えていた

            ブルー水素は天然ガスより環境に悪いか?

            8月16日、英国水素燃料電池協会議長のクリス・ジャクソン氏が自身のLinkedInでの投稿で突然の辞任を発表した。投稿は英国政府が「水素戦略」を発表する数時間前であり、ジャクソン氏はこの政策の内容に同意することができず、辞任を決断したという。

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            総裁選候補者のエネルギー政策のまとめとコメント

            まだ告示前ですが、現時点で岸田氏、高市氏、河野氏の3名が自民党総裁選の候補者として正式に名乗り出ていて、様々なところからこれら候補者のエネルギー政策について論評して欲しいとの声を頂いていますので、限られた情報の中ではありますが、可能な範囲で書いてみたいと思います。 (申し訳ないですが今回は諸般の事情で有料とさせて頂きます。現時点での3者のエネルギー政策を網羅的に取り上げた上で、他では読めない内容を盛りだくさんにしましたので、関心ある方はぜひお読み頂ければと思います) 1.

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            石油会社の歴史的敗北 世界のエネルギー供給の責任を担うのは誰か

            5月26日は石油産業の歴史に残る日となった。世界に名だたる石油メジャー3社が、偶然にも同じ日に「環境系活動家」に敗北した。この日は一部の石油関係者から「ブラックウェンズデー」と呼ばれている。 (参考動画:【IEA“石油投資ゼロ”の衝撃】石油業界の脱炭素化 その弊害と代償(エネルギーアナリスト 大場紀章さん)-ひろこのスペシャリストに聞く!)

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            EUが2035年にハイブリッドも販売禁止へ

            2050年脱炭素を目標とすると10年以上寿命のあるガソリンハイブリッド車の扱いの論理的な帰結はこうなる。 これが吉とでるか凶とでるか。(いつの誰にとって?) 中国は2060年脱炭素なので、同じ計算をしてもハイブリッド禁止は例えば2045年になる。そのマーケットをどう考えるか。 日本メーカー(というかトヨタ)とすれば、中国のハイブリッド市場を捨てる経営判断はない。 そこに現在の米欧による中国封じ込め政策、米中関係が今後どのように影響するか。 域内販売をやめることと、域

            イラン核合意交渉と原油市場の行方(4月の記事)

            ブレント原油価格は昨年11月からおよそ70%上昇し、1バレルあたり60ドルを超え、コロナ禍以前の水準を取り戻した。投資銀行のゴールドマン・サックスは、原油需要の回復に対しOPECやIEAよりも楽観的な見通しで、夏までに日量200万バレルの需要が戻り、現在の過剰在庫は解消され、1バレル80ドルまで高騰するとの見通しを発表している。 ゴールドマン・サックス社が原油価格に強気姿勢であるもう一つの理由は、イランの核合意問題が数ヶ月以内に解消し、イラン原油輸出が短期的に市場に流入する

            「ビットコインは環境に悪い」説の真相レポート

            最近しばしば「ビットコインは消費電力が大きく環境に悪影響を与えている」という話を耳にする。以前にも簡単なコメントを書いたが、今回もう少し定量的な評価をしてみた。私として総力を上げて書き上げたレポートで、内容には自信を持っているが、個人的な見解を多分に含みあまり拡散したくないので、いつもより少し価格設定を高めに設定させていただいたことをご了承願いたい。日本円やコーヒー?との比較など、オリジナルな分析が含まれている。ご購入頂いた方のコメント・メッセージにはできる限りお答えします。

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            “開戦”も覚悟?したカナダ-アメリカパイプライン闘争の顛末

            バイデン大統領は、1月20日の就任のわずか数時間後、15件もの大統領令に署名した。その中には「パリ協定への復帰」など大きく報じられたものもあるが、カナダから米国をつなぐ石油パイプラインプロジェクト「キーストーンXL」の建設許可を取り消す大統領令も含まれていた。 キーストーンXLとは、2005年にTCエナジー社(当時はトランスカナダ社)によって提案されたもので、カナダのアルバータ州を起点に、同国のサスカチュワン州、米国のモンタナ州、サウスダコタ州、ネブラスカ州までをつなぐ、約

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            46%削減はどれほど難しいか

            先日の気候サミットで、菅首相が「2030年までに46%削減(2013年比)」を宣言し、いよいよ脱炭素も待ったなしの状況になって来ました。 この数字のシルエットなど決まり方の問題や、米国のケリー特使からの圧力など外交的な意味について、などなど様々論点はあると思いますが、まずはこの46%という数字がどれほどのものなのかというところを見ておきたいと思います。 まずその水準についてですが、昨年10月に菅首相が「2050年カーボンニュートラル」を既に宣言していますので、現在の排出量

            世界の「水素ブーム」とその実態

            ほんの数年前まで、「水素」と言えば日本とドイツと米カリフォルニア州などの限られた地域で行われている燃料電池車(FCV)のための補助金プロジェクトの事を指していたが、今や世界中の政府が競うように水素戦略を打ち出す時代となった。まさに世界的な「水素ブーム」の様相を呈している。 そのきっかけでもあり、そして象徴でもあるのが、2020年7月に欧州委員会から発表された「欧州気候中立のための水素戦略」である。同戦略発表に前後して、韓国、オーストラリア、ドイツ、ノルウェー、フランス、スペ

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            製造時CO2をカウントする事の本質的な意味について

            誰も言わないから言いますが、製造時CO2をカウントするという考え方は、これまで私たちが「温暖化問題」と呼んできたものの根底を覆すほどのゲームチェンジです。 これまで、京都議定書、パリ協定などで知られるCOP会議などの国際交渉で、「○○%削減」などと国毎に数値目標を定め、それを条約で約束するというやり方できたわけですが、全ての根底には、1992年に締結されたUNFCCC(気候変動枠組条約)があり、COPとはこの条約締約国の会議という意味です。 この条約の考え方は、各国がその