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LNGに頼り過ぎることの脆さと、今後の対策について

電力卸売市場(JEPX)の1月8日受渡 平均価格は驚異の99.9円/kWhになりました。時間帯によっては120円をザラに越えてきていますし、時間前市場では高値がずっと200円になっています。過去のJEPX平均値が10.9円、家庭用の電力小売価格がおよそ25円と考えると、いかに異常な値かがわかるかと思います。

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JEPX 24h average http://www.jepx.org/market/index.html

広域機関が最大出力運転を指示することは極めて異例のことです。緊急事態宣言で社会全体も大変ですが、電力は全国ほぼすべてのエリアで綱渡りの状態が続いています。どこかの発電所でトラブルがあれば、即ブラックアウトになるリスクが常にあるような状態です。

今回、電力危機と緊急事態宣言が被った事で、政府は節電要請を躊躇しているのだと思います。確かに寒いのを我慢するのは健康上の危険もあるので簡単ではありませんが、できる限り電力の使用総量を抑えたい所です。

↑の記事でも書きましたが、基本的にはLNGが足りなくなっていることが問題です。各社タンクが底をつきそうなので、出力を抑えています。かといってフルパワーで発電すれば、燃料が尽きて近い将来にもっとヤバイことにもなりかねません。

要因は中国が12月に爆買いしたり、韓国が石炭火力を止めたり、カタールやオーストラリアでトラブルでLNG輸出が止まったり、パナマ運河が渋滞してたり、東北・北海道で太陽光パネルが積雪で発電しなくなったり、コロナでリモートワークが増えて換気しながらエアコン使ってたりと色々ありますが、より根本的には震災後に原発を止めてから、LNG火力に頼り過ぎてきた(2010年度29.0%→2018年度38.3%)ことにあるように思います。

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LNGは文字通り天然ガスを冷やして液化したもので、保管するにはマイナス162度に冷やし続ける必要があり、一般的には長くても1-2ヶ月しか保管しません。したがって、在庫をできるだけ持たないように運用されます。だいたい日本の発電事業者のLNG在庫は2週間分程度と言われています。

また、天然ガスのパイプラインよる供給と、巨大な地下ガス貯蔵設備があるヨーロッパやアメリカとは、ガス供給のリスクがまるで違います。

日本で備蓄義務のある燃料は石油だけです。これまで、「電気は足りてるか」「中東依存度を減らせ」といわれることはありましたが、「LNG在庫はあるか」と問われることは稀でした。

そして、気候変動問題から石炭火力をやめろという議論のなかで、LNGに頼りすぎない世界を描くのは難しいです。

今後、どのような対策が考えられるかと言えば、

■LNG備蓄を増やす(無駄とコスト増)
 -LNGタンカーを停泊させ洋上備蓄を行う
 -備蓄義務を課す(国が維持費を払う)
 -燃料備蓄の価値を市場評価する

■石炭火力の負荷追従運転を行う(石炭火力の増設か原発稼働増と組み合わせ、批判されやすい)
 -石炭ミルの安定性向上により、九電松浦石炭火力で15%の最低負荷運転が実現している
 -IGCCで使われている濃縮微粉炭搬送技術を使えば、LNG火力を超える負荷追従運転を行うことができる(15%/分とか、東大金子祥三先生談)

■備蓄できる新しいゼロエミ火力用燃料を増やす(コスト増だか将来的にこれしかないかも)
 -アンモニア(天然ガスor石炭+CCS、再エネより)
 -MCH(メチルシクロヘキサン)からの水素、等

■原発の比率を上げて必要なLNG備蓄量を減らす

などの方策が考えられます。

後は、住宅の断熱ですね。経済産業省が定める最も断熱性能が高い等級の窓でも、欧米基準では人間用に使うことが禁止されているレベルです。巣ごもり時代には住宅断熱は喫緊の課題になるでしょう。

追記:石油ストーブある人は出来るだけ使いましょう。リフォームしなくてもある程度窓断熱性を高める方法(断熱シートやカーテンなど)はあるのでホームセンターやネットで探してみてください。

今回の電力システムの危機は、根源には菅直人が超法規的に全国の原発を止め、簡単に再稼働できない仕組みにしてしまった事もありますが、その後の安部政権が中途半端な状態(いつかは動く)を続けてしまった為に招いた危機とも言えます。動かすなら動かす。動かせないならないで取れた対策もあったと思います。

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