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SDGsと共鳴する公共善決算

デモクラシー(民主制)を採用する多くの国の憲法には、経済は公共善や公共の福祉に寄与すべき、ということが書かれています。では、その経済活動の大目標がしっかりと測られて評価されているでしょうか? 現在の経済システムは、企業に決算(財務諸表)を作成して提出することを義務付けています。財務諸表で導き出されるのは金銭的利益です。利益は公共善(憲法上の目標)の到達度を測るための指標になるでしょうか? 

私が翻訳させていただいたクリスティアン・フェルバー著『公共善エコノミー』(鉱脈社・2022年12月出版)には、こう書かれています。

「 ……企業が獲得する高い金銭的利益は、下記の事柄に信頼のおける回答を与えることができるか。
- 企業が雇用を増やしているか、もしくは減らしているか?
- 労働環境が人間的になっているか、もしくは過酷になっているか?
- 企業が環境に配慮しているか、もしくは搾取しているか?
- 収益が公平に分配されているか?
- 武器を製造しているか、もしくは地域のビオ食品を生産しているか?
確かな回答を与えることは、まったくできない。高い金銭的利益は、GDPと同様に、1つの使用価値の進展に関しても、人間の基本的欲求の充足についても、または憲法上の価値が履行されているかどうかも、何ら確かな回答を与えることはできない。利益は経済活動の本来の目標から逸れたものを測定している。利益は経済活動の目標を測ることがまったくできない」

利益は経済活動の手段であり、目標ではあり得ません。目標到達度ではなく、手段を測るというこの方法論では、高利益を獲得した成功者が社会にどれだけ良い影響をもたらしているかは測定されません。社会に大きなダメージを与える企業や人が成功者として讃えられる場合もあります。現在の経済機構のシステムエラーです。

「今日の経済システムにおいては、雇用を壊滅させ、環境を破壊し、デモクラシーを地中に埋め込み、無益のものを生産する企業、すなわち社会や環境の問題の悪化に貢献する企業が、成功者でありえる。アダム・スミスが主張した、個々が自分の利益を求め行動すれば、みんなの幸福に繋がる、という自動機構は存在しない」

欧州と南米を中心に35カ国175地域、会員数4500と世界的に広がりを見せる「公共善エコノミー」は、現経済機構(資本主義的市場経済)のシステムエラーを修正するものです。企業は、憲法にも適合した「公共善決算」を作成します。公共善エコノミーの心臓部です。これまでに1000企業が公共善決算を作成し、公表しています。

https://www.ecogood.org/who-is-ecg/ecg-companies/

「利益と公共善の間で連関性が存在する場合もあるが、どんな場合でも自動的にそうはならない。公共善決算によって、その連関性が信用がもてるものとして構築される。アダム・スミスの「見えざる手」への願望は、個体(企業)の成果と集合体(社会)の成果の連関性を確かなものとして構築する秩序立った方法論「見える手」の導入によって、初めて満たされる」

「見える手」である「公共善決算」は、2010年にAttacオーストリアのパイオニアチームが開発し、これまで数回、改定されてきた「公共善マトリックス」に則って行われます。横軸に「人間尊厳」「連帯と公正」「環境持続可能性」「透明性と民主的決議」と4つの基本的価値、縦軸には企業の経済活動の各部門が並んでいます。最高1000点で、マイナス点もあり得ます。

公共善エコノミーはSDGsとも共鳴していて、公共善マトリックスはSDGsの17目標もすべて網羅しています。よって、SDGsの1つの評価ツールとしても使用できます。

https://www.ecogood.org/apply-ecg/sustainable-development-goals/

この実用的で具体的な企業評価ツールには、いくつかの企業や金融業界など、すでに日本でも関心が集まっています。これから有志の方々と、これを日本で導入するための準備をしていきます。

公共善エコノミー・インターナショナルのHPで公表されている各企業の公共善決算は、認定の公共善監査官に外部査定を受けたものだけですが、自己査定ができるツールもあります。下記は、企業用のクイック自己査定の手引書(英語)です。試しにやってみたい方、どうぞ!

https://www.ecogood.org/wp-content/uploads/2020/04/quicktest_ecg_matrix_50_version_012019.pdf

書籍の案内:
『公共善エコノミー』クリスティアン・フェルバー 著・池田憲昭 訳  鉱脈社 2022年12月
ご購入は、最寄りの書店(公共善エコノミー的に推奨)、オンライン(楽天、アマゾン、紀伊國屋など)、直接に出版社(komyakusha@mippy.jp)(送料無料、5冊以上で割引あり)で。




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