見出し画像

【スクワット】足関節の運動軸と脛骨外捻からみた、つま先の角度の決め方

スクワットで自然と気持ちよくしゃがめたり、逆にしっくりこずに下半身の力が上手く入らなかった経験をされた方は多くいらっしゃると思います。

その原因は多岐に渡りますが、一つが「足部のポジション」だと考えています。わかりやすく説明するとスクワットをするときの「足幅」「足部の外転(つま先の角度)」です。

特に「足幅」を広くしたり狭くしたりすることで「股関節」の屈曲角度の調整が出来て、大殿筋を含めた殿部の力を上手く働かせることが可能です。股関節が自然に曲がることが出来れば、容易に深くしゃがむことが可能になります。

今回は「つま先の角度(足部の内外転)」に焦点を当てて、足関節の背屈可動域がより自然に出やすく、かつ足底での踏み圧を維持し続けるポイントについて『機能解剖学的』な目線で解説をしていきます。

足関節(距腿関節)の解剖学

まずスクワットの動作を確認する前に、足関節の解剖学について解説をしていきます。

足関節の正式名称は「距腿(きょたい)関節」と呼ばれています。スネの骨である「脛骨」と「腓骨」を合わせて「下腿骨」と呼びます。そして、その下にある足根骨の一つである「距骨」と結ぶことで、「距腿関節」を作ります。

あl

 距腿関節の下腿骨側の関節面は、脛骨腓骨を結んで「果間関節窩(ankle mortice)」と呼び、距骨を覆うように形成されています。そして、距骨の関節面は、「距骨滑車」と呼ばれ名前の通り、滑車にように回転する運動がなされます。

collageっs

この「果間関節窩」は靭帯や、下腿骨間膜と言われる脛骨と腓骨の間に存在する組織により、固定されています。足関節捻挫などの後遺症により、靭帯での支持が弱まり、「果間関節窩」の安定性が低下することで、再負傷しやすくなる原因にも繋がります。

距腿関節の主な運動は、足関節の背屈と底屈になります。つま先を上下に動かす運動になります。スクワットでしゃがむときには、足の裏が地面と接地しているため、下腿が前傾していくときには足関節の背屈運動が起こります。

画像14

足関節の底屈・背屈運動に伴い、下腿骨の関節面である「果間関節窩」に対して、距骨滑車が前後に滑り運動が起こります。

足関節「背屈時」には距骨の「後方滑り運動」が起こり、「底屈時」には距骨の「前方滑り運動」が起こります。

collageっdっd

この距骨の前方・後方滑りの可動域が低下することによって、足関節の可動域制限へと繋がります。原因は多岐に渡りますが、周囲の筋肉の癒着や、下腿骨側の「果間関節窩」の安定性が低下することで発生しやすくなります。

距腿関節の運動軸

距腿関節の運動は足関節の底屈・背屈になりますが、運動軸は矢状面上ではありません。

運動面には、「矢状面」「前額面」「水平面」の3つの面上での運動があります。
・矢状面上の運動は、前後に働く「屈曲・伸展(底屈・背屈も含む)」
・前額面上の運動は、横方向に働く「外転・内転」
・水平面上の運動は、回旋方向に働く「内旋・外旋」
上記の三面上が単一、もしくはいくつかの運動が合わさることで関節が働きます。

距腿関節の運動軸は「足長軸(矢状面)」に対して、直角ではなく約84°回旋しています。これは「脛骨側の内果(内くるぶし)」が「腓骨側の外果(外くるぶし)」より前方に位置しているためです。

collagegfgfっg

さらに、距腿関節の運動軸は、膝関節の運動軸から20°~30°外旋しています。これは脛骨自体に「生理的捻転」が発生しており『外捻』しています。この「脛骨の外捻」があることから多くの方は日常生活で、つま先を20°~30°開いた姿勢が楽になります。
※この脛骨の外捻は個人差や、人によっては左右差があります。

画像12

日常生活で歩いたり、スクワットをするときにつま先を真っ直ぐではなく、外に開くのはこのためです。つま先を真っ直ぐにしたまましゃがもうとしても足首が詰まってしまい、気持ちよく出来ません。それは「距腿関節の運動軸のズレ」「脛骨の外捻」によるものです。

さらに、足関節を後方から見たときには、腓骨側の外果よりも脛骨側の内果の方が位置が高く、下腿の骨軸から約80°の傾斜があります。

うjh

脛骨側の内果の位置が高くなっていることから、足関節の内側の「骨性のロック」がしにくいことから、足関節の内反捻挫が多い要因になります。

距腿関節の運動

矢状面上での足関節の「底屈・背屈」距腿関節の運動軸での「底屈・背屈」では動き方が微妙に違います。

矢状面上で真っ直ぐ挙げて降ろすのと、下記のように足関節の底屈時に少し内方向につま先を向けながら降ろして、背屈時にはつま先を外に向けながら挙げる動作を比べると、動かしやすさが大きく違うと思います。
※足関節の捻挫の後遺症で不安定性がある方はこの限りではありません。

画像8

collageあしくび

先程の運動軸に沿って動かすことで、自然と下腿骨側の「果間関節窩」と距骨滑車の運動がより自然に適合します。

スクワット動作と距腿関節の運動軸の矛盾

実際にスクワットをするときには、「脛骨の外捻」に合わせて、つま先を20°~30°向けることで、自然にしゃがみやすくなります。まれに見かける情報コンテンツでは、つま先を真っ直ぐ向けることが推奨されていることがありますが、解剖学的な目線から見ると不自然な動作になり、気持ちよくしゃがめないことが多いです。

画像1

そして、距腿関節の運動軸での足関節の背屈運動時には、つま先は外に向けながら挙上していくので、足底と地面が接地した状態では、自然と足部ではなく下腿を足関節に合わせにいく必要があります。スクワットでしゃがむときには、ほんの少し膝を内に入れることで自然と距腿関節の運動軸に合わせてしゃがむことが可能になります。

これは片足を前に出して行なうスプリットスクワットでイメージしてもらうと解釈がしやすいです。つま先を少し外に開いた状態から膝を前に出していくと足の裏で自然と踏ん張りやすくなります。逆につま先を真っ直ぐにしたり、つま先に合わせて膝も外に開こうとしたら自然に足関節の背屈運動がなされません。

画像3

ここで矛盾が発生します。スクワットをするときには「Knee-in(ニーイン)」と呼ばれる膝が内方に入ってしまうエラー動作が有名ですが、距腿関節の運動軸に合わせてしゃがむと自然と膝が内に入ってしまいます。多くの人はこのKnee-inのエラーが起こらないように膝を少し開く意識をされていると思います。

スクリーンショット 2021-10-10 10.49.34

ここで重要なのはマクロ(大きな視野)の視点を持つことです。確かに距腿関節の運動軸に合わせるためにはしゃがむ際には膝を内に入れる必要がありますが、スクワットは『股関節の可動域の環境』も重要になります。

足関節の観点(脛骨外捻)からでは、足部の外転20°~30°で背屈可動域が自然に出たかもしれませんが、股関節が自然に屈曲していくためには、少し窮屈です。ここでは深く触れませんが、股関節を深くしゃがみ込む(屈曲可動域)ためには股関節の外旋運動が必要になります。膝を外に開くことで股関節が外旋され、自然と殿部への収縮がしやすくなります。ただ、股関節に合わせて膝を開くと足関節が窮屈になります。

collageっd

これをどう乗り越えていくかですが、それはつま先の角度(足部の外転)を広げることです。20°~30°外転した状態からさらに5°~10°つま先を外に開くことで距腿関節の運動軸に合わせながら、股関節の外旋(膝を開く)運動も取り入れて自然にしゃがむことが可能になっていきます。

collageっv

※女性に多いですが股関節の構造(前捻角の違い)によっては、つま先を外に開いたり、股関節を外旋させると逆に窮屈になってしまうこともあるので、必ずしもこの限りではございません。

まとめ

スクワットを行うときには、「脛骨の外捻」「距腿関節の運動軸」を理解することで、自然な姿勢で足関節の背屈運動が可能となり、足底での踏み圧を維持しやすくなります。逆に足関節の背屈運動がでにくい位置であるつま先を前に向けた矢状面上での動作になると、背屈可動域が低下して、その代償で重心が後方に移動しやすくなり、踏み圧が抜けて腰が曲がったようなフォームに陥る危険性が出てきます。膝を支える大腿四頭筋も機能しにくくなり、不安定なフォームになっていきます。

今回解説した足部の機能解剖学を、頭の片隅に入れた状態でスクワットを行なうことでフォームの再現性が高くなり、理想的なフォームの習得する手助けになると思います。

正しい関節の運動方向で動作を行うことで、関節に負担がない状況下で筋活動を促通できます。その状況下ですら筋肉の活動が出来ないと、その代償で怪我に繋がります。

足関節の背屈可動域を改善するための、「距骨の可動性獲得」や「足部不安定性改善」のエクササイズに関しては、原因も含めて動画にて解説をしています。現在問題を抱えている方は是非参考にしてみてください。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました! 皆様から「サポート」や「シェア」をしていただけると今後の活動の励みになります。