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オールマイティから極振りの時代へ

 「今日社会なかった、理科だった」と悲壮な声が朝から鳴り響く。娘の声だ。

期末テストが今日から始まるらしく、ここ数日遅くまで勉強しているのは知っていたが、どこかで時間割りを見落とし、まさかの教科違いで勉強していたようなのだ。

社会は「ない」と言うよりは後で必ずあるので勉強自体は無駄にはならないが、問題は理科だ。ノーマークだったので、当然詰めの勉強はしていない。まさに目の前にある危機。僕も妻もお互いに顔を合わせ、ため息をつく。

しかし当の娘はあっさりしたもので、先ほどまでとは一転「ま、いいや、理科はあきらめた」と涼しい顔。「国語と社会と保健体育(!)が好きだから、そこに全集中する」と言い放ち家を出ていった。

そんな様を見て、「保健体育ってテスト科目にあるのか」という地味な驚きとともに、ある種切り替えの速さは僕ゆずりなのかも知れないな、と苦笑した。

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 僕も妻も娘も、わりと「今を生きている」タイプだ。過去に対する執着も未来に対する妄想的な不安もあまりない。

反省はするが、基本的にその時その時の選択を後悔することはない。

僕自身もあまり成績が良い方ではなかったし、一夜漬けの勉強ばかりの日々だったので、今さら娘に偉そうなことを言えない。言えたとしても「できることの選択肢が増え、日本のシステム上ステータス的に有利になる」くらいだ。自分ができなかったことの肩代わりをさせてしまうのが一番嫌なので、不条理な二世代ローンだけは組みたくない。

というよりも、"好きなことを見極めてそこに全力であればそれで良い" と思っている。

もちろん、勉強が大切なことは重々承知。知識と教養の幅が増えることは、前述のとおり思考の選択肢が格段に増える。

学歴というより、生きるために必要なものなので、決して否定しているわけではないが、特に今の時代はオールマイティにバランスを取る必要もないかなとは思っている。

好きなことに対してちゃんと情熱と愛情を注げば、それなりに運命がうまく回り、人生なんとかなるものだと思いながら生きている。そしてそれは、今のところおそらく叶っている。

 ただ、娘よ。大事なときの時間割りはしっかり確認してほしい。父からのささやかな願いだ。

今日はこんなところで。

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則宏史(noreason studio)
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