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在宅ワークの何が自分をダメにしたか

在宅ワークは人をかんたんにダメにする。それは、なぜなのか。何が人をダメにするのか。

身をもって経験してきたひとりの人間として、ここにまとめておきます。

まだ独身だった20代のフリーライター時代の話です。


すぐに寝られるベッド


ワンルームの狭い賃貸マンションに暮らしていると、必然的にデスクとベッドが近距離になります。

目が覚めるとデスクに座り、疲れたらベッドで横になる。移動距離にして1メートルもありません。一度も床に足をつけずに、椅子とベッドを往復することだって可能でした。究極の職住近接。

もちろん住居と事務所が同じだと、家賃や光熱費を最小化できるメリットはあります。とくに駆け出しのころはとにかくお金がありませんから、固定費をできるだけ低く設定することは大事です。

ただ、この「起きて半畳、寝て半畳」状態はズボラな人間にはいい面もある反面、「昼寝の誘惑」との戦いでもあります。

ほんの数分、休憩するつもりで体をベッドに横たわらせたら、いつの間にか日が暮れていた、なんてこともしょっちゅうありました。そして「なんで自分はダメなんだ」と自己嫌悪に陥る無限ループ。

もしも住んでいるところがワンルームでないのなら、「職場」と「寝床」は部屋をわけるのが吉です。


着替えない寝巻


テレビ会議をする日は別として、自宅で仕事をしている姿は誰にも見られないので、服装は見た目よりも快適さを重視するようになります。

とくに男性は椅子に長時間座っていると股間が圧迫されてしまうため、できるだけ締めつけのゆるいパンツを履きがち。イージーパンツとも、ジャージとも言いますね。

快適さを求めていくと、最終的には「寝巻のまま着替えない境地」に行きつきます。寝るときの格好がもっとも快適なのですから、さもありなんです。

ゆるい服装をしているということは、すなわちいつでも寝れてしまうことと同義です。デスクのそばにベッドがありますし、わざわざ寝る用の格好に着替える手間もありませんから。

そんな自分がイヤになって、家の中でも「外出用のデニム」を履くようになりました。

外出時に履いているものだから、お尻が汚れていたりします。なので「そのまま布団に入りたくないな」「布団が汚れそうだな」という心理的なハードルが「すぐ寝る自分」を一瞬拒絶してくれるのです。

まあ、それでも寝るんですけどね。


身体を痛める硬い床


汚れた服のまま布団に入りたくないと思っていたら、とうとう床で寝るようになりました。

これは良い面もあって、身体が痛くてすぐに目が覚める効果があります。

ほんの15分ほど寝たいだけなのに、ベッドの上で寝てしまっては現世に戻ってくるのが困難になりますから。

なのでその日のうちに提出しないといけない仕事がまだ残っているときは、フローリングの硬い床で昼寝をするようになりました。

ただ、若いうちはこれでもいいのですが、27歳くらいから疲れが取れなくなりました。リフレッシュするための昼寝なのに、かえってダメージを負ってしまうのです。これでは全然リフレッシュできません。

余談ですが、あるとき床で昼寝をしていたら、鼻をつんざく臭いが飛び込んできて、ぎょっとして目が覚めたことがあります。

なんだろうと思ったら、鼻先10cmのところに謎のおどろおどろしい液体が流れてきていました。なんとダンボールに詰めてあったジャガイモが夏の暑さで腐ってしまい、溶けだしていたのです。

あの「死臭」は今でも忘れられません。本当にダメな生活です。


朝や昼に寝る生活


これほどまでに眠かったのは、そもそも不規則な生活をしていたからです。

昼間は取引先から電話がかかってきたりして、なかなか業務に集中できません。それでなくとも集中モードに入るのに時間がかかるのに、何度も寸断されてしまっては、はかどるものもはかどりません。

なので仕事に集中する「コアタイム」を夜の12時から朝の6時と決めました。

つまり、取引先が寝静まってからが勝負。誰にも邪魔されない深夜の静寂の中で自分と向き合い、集中力を高め、一気に片をつけてやるのです。

そして朝の5時を過ぎると、朝日が昇ってきます。スズメがちゅんちゅん鳴き始め、「そろそろ寝なよ」と背中を押してきます。

ただ、調子がいいと、そのままお昼近くまで集中力を維持して仕事を続けてしまいます。なので朝6時に寝ることもあれば、昼の12時まで頑張る日もあって、眠りにつく時間が日によってバラバラなのでした。

それでいて取引先から電話が鳴ったら、早朝だろうが深夜だろうが「必ず3秒以内に出る」という謎の使命感を当時は持っていたため、眠りも浅かったです。そりゃあ、昼寝もしたくなります。

ただし、こんな生活ができたのは20代まで。30代以降は無理です。


深く沈みこむ椅子


ほとんど自宅で過ごしていたので、座る椅子にはこだわろうと思ってました。椅子は腰に履く靴みたいなものですからね。あるとき、仕事ができる風の「イケてる椅子」を家具屋さんに探しにいきました。

当時、愛用していたのは黒いソファーチェアでした。2万円くらいだったかな。

肌ざわりのいいファブリックで、ずっと座っていられる快適さがあり、またくるくる回るタイプでもあったので、くるっと振り向いて立ち上がりやすい点も気に入っていました。

ただ、この椅子のせいで、ひどい腰痛になりました。

というのも深く沈みこむタイプで、座っているときの背中の角度が鋭角になるのです。長時間、お尻を突き出すように座ることになるため、腰に大きな負担がかかってたんですね。

このとき発生した腰痛にはその後、10年以上苦しめられました。

結局「イケてる椅子に座りたい」という軽薄な動機が災いして、病院、整体、カイロプラクティック、スイミングなど、腰痛を改善したくて駆けずり回った費用はすべて自分持ち。

もはや腰を治すためにお金を稼いでいるような状態で、何のために働いているのかよくわからなくなりました。

椅子を選ぶなら見た目や座り心地ではなく「腰痛になりにくいもの」という観点で選ぶといいのではないでしょうか。

ちなみに今はKOKUYOのingを使ってます。腰痛、治りました。


というわけで、在宅ワークでダメにならないための秘訣をまとめます。

・デスクとベッドの位置を離そう(できれば別の部屋で)
・寝巻はさすがに着替えよう
・床で寝ない
・夜に寝て、朝に起きよう
・腰痛になりにくい椅子に座ろう


今、20代や30代で、多少無理のきく体をお持ちのみなさん。どうか健やかに。

ありがとうございます。励みになります。