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アイデアをパクられないために、実行してみた3つの作戦

モノを売ったり、サービスを展開していると「パクリ問題」がとても身近に感じられます。

自分たちの商品の模倣品や類似品が出回ることもありますし、同業の仲間がやられてしまって困ってる、なんて話もよく聞きます。

中には下調べが不十分だったせいで結果的に似てしまったものもあるでしょうけれど、残念ながらアパレル、食品、家具や生活雑貨などなど、あらゆる業界で「あからさまな模倣」が後を絶たないのが現状です。


なぜパクるの?


それにしても、どうしてよそ様のアイデアをパクる行為に走るでしょう。僕にはどうも理解できないのです。

だって、もしも自分がパクる側にまわったら、次のような事態につながることは明らかだからです。


・社会に対して倫理観がないと見なされる
・モノづくりへの敬意がないと見なされる
・積み上げてきた信用とファンを失う
・業界内外に敵を生み、立ち回りにくくなる
・結果、自分達のビジネスがやりにくくなる


こうしたリスクを負ってでもやる価値のあるパクリなんて、この世の中にどれほどあるのでしょう。

違法だからとか、道徳的に許されないとか以前に、損得で言えばほとんど得なし。自分で自分の首をしめるだけで、目先の利益と引き換えに失うものの方がはるかに大きいのではないでしょうか。


それでもなくならないパクリ


それでもパクリは後を絶ちません。

実際、僕もオリジナル文具を企画・販売するメーカー業を続けてきて、自社商品の模倣品や類似品を見かけなかったことがないくらい、さまざまなお店やネットで目撃してきました。

そのたびに耳から荒い鼻息が飛び出していました。

もちろん、学ぶの語源は「真似ぶ」という説がありますし、「模倣は創造の母」とも言われます。良いと思うものを積極的に吸収し、自分なりに咀嚼してアウトプットすることはむしろ向学心のある褒められるべき態度です。

かつてシャープ創業者の早川徳次氏も「他社が真似するような商品を作れ」と社員に発破をかけていたそうですが、真似されてこそ一流という考え方は一理あります。自分にそう言い聞かせていた時期もあります。

ただ、想像してみてください。

自分が経営者で、あるいは商品の開発者で、わが子のように大事に生み育てた商品をどこぞの誰かに真似されたとしたら。自分たちが正当に得るべき利益や評判を横取りされてしまったら。

やっぱり悔しいものです。


パクられる前にできること


ただ、腹を立てる前に「やれること」はあるはずです。

パクられてから騒ぎ立てる前に、そもそもパクられないよう自衛することも大事です。

そこで一例として、僕の経営している会社が WORKERS'BOX という書類収納ボックスをリリースするにあたって実行した「真似されないための3つの作戦」をお話ししたいと思います。

発売から3年経って、模倣品の類は耳に入っていないので、今のところは奏功していると言えそうです。


【作戦その1】 知的財産権を押さえた


いくら真似をされても、知的財産権を取得していないのであれば文句のひとつも言えません。鍵を開けたままでは泥棒が入りやすくなるのと同じで、戸締まりはきちんとしなければいけません。

知的財産権には商標権、特許権、実用新案権、意匠権などがありますが、出願・審査・登録を経て、特許庁のお墨付きをもらっておくべきです。「この登録証が目に入らぬか!」と言えるかどうかで、その後の立場がずいぶん変わってきます。

それでも真似することで利益を得ようと、ギリギリのラインを狙ってくる手練れの会社もあるのですが、少なくとも「ちょっと真似てみようか」くらいの軽い気持ちで手を出す会社に対しては抑止力になります。その程度の会社なら「係争してでもわが物にしたい」とまでは考えてなさそうですし。

というわけで、WORKERS'BOX も取れる権利はすべて押さえました。正直、結構なコストがかかりましたが、商品の可能性に賭けた先行投資でもありました。


【作戦その2】 価格をぎりぎりまで下げた


模倣品、類似品を作るのが得意な会社のひとつに「100均」があります。名指しをしてしまって大変申し訳ないのですが、あまりにも目に余るので許してください。

もちろん100均の会社さんは多店舗展開し、圧倒的なスケールメリットを活かしてコストを抑える企業努力を重ねています。結果、庶民の味方になっていることも事実です。「よくその値段で販売できるね」と感心してしまうことも数知れません。

でも、だからといって、真似していいわけではありません。

そこで僕が実行したのは、彼らに真似することをあきらめさせること。具体的には、自分たちの販売価格をぐっと抑えたことです。

たとえば1,000円で売られていた商品が、もしも「100円で買える」となったら、お客さんは多少の品質の差はあれ飛びつきます。

でもその商品がもともと300円だったら「100円で買える」のインパクトは限定的です。「だったらクオリティーの高い本家のほうがいいや」という消費者心理が働くこともあるでしょう。

だから100均の立場からすると「旨味が少ない」。わざわざ模倣品を作るメリットが生じません。

そういう効果を狙って、WORKERS'BOX の販売価格をぎりぎりまで下げました。今のところは模倣されてはいませんが、このnoteで目をつけらないよう祈ってます。


【作戦その3】 同業他社と仲良くした


これは結果論なのですが、人に助けられたことがありました。

小耳に挟んだところ、ある会社さんが WORKERS'BOX の類似品を出そうとしていたそうです。ところが運のいいことに、お知り合いがその会社で働いていて、社員に向かって「私の知り合いだからやめてあげて」と進言してくださったそうなんです。

これは正直、助かりました。

これは文具業界に限った話なのかもしれませんが、同業他社はライバルであると同時に同志なんです。

会社の規模にもよるとは思いますが、少なくともうちのまわりのメーカーさんとは、お互いの取引先を紹介し合ったり、委託工場を紹介し合ったり、ノウハウの共有なんてことも当たり前のようにやっています。

こういう「善意のネットワーク」が事前に広がっていたおかげで、思わぬところで援護射撃が入ったのでした。もしあの「やめてあげて」がなければ、今ごろ WORKERS'BOX は類似品の山に埋もれていたかもしれません。

同じ地球で、同じ時代に生まれて、同じような仕事をしている人たちは、敵というより仲間です。同業者と積極的に仲良くなるのは、実はいいことばかりなのではないかと僕は思います。理想論すぎますかね。


さいごに


そこまでやっても、残念ながら、いい商品やサービスは真似されてしまうのだと思います。

対策を打ち、ときに戦い、やれることをすべてやったら、あとはもう自分を誇りましょう。そこまで人を本気にさせるものを世の中に生み出したのだと自負しましょう。

そして、アメリカの医学者ジョナス・ソークの言葉を思い出すのです。自身が開発したポリオワクチンの特許について訊かれたときの言葉を。


「これはみなさんのものだ。特許は存在しない。だって、太陽に特許は存在しないでしょう?」


【ハイモジモジ PROFILE】
2010年創業。「Kneepon from Nippon!」を合言葉に、思わず膝を打つアイデア・プロダクトを日本から発信している。キーボードに立てる伝言メモ「Deng On」、耐洗紙のメモ「TAGGED MEMO PAD」でグッドデザイン賞を受賞。人気シリーズ「WORKERS'BOX」好評発売中。

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