Books from Denmark2021年上半期の選書リスト(ノンフィクションと児童書)――『つきのぼうや』を輩出したデンマーク発、判型、めくる方向が独特な絵本にご注目を
早いもので、季節はもう秋ですが、前回に引き続きBooks from Denmark2021年上半期の選書リストを紹介いたします。今回はノンフィクション(大人向け)と児童書です。リストを作っているのは、デンマーク文化庁。つい先日、世界の翻訳者を集めて翻訳者セミナーをデンマーク第三の都市オルボーで行ったばかり。執筆者(枇谷)も参加したかったのですが、コロナの状況を鑑みて泣く泣くキャンセルしました。
後日、セミナーの写真とビデオを見て、びっくり! 皆さん、マスクなしで、楽しそうに笑っているではありませんか! 無理もありません。セミナーのテーマはユーモアと方言。デンマークは9月10日、コロナ対策のための規制を全て解除、コロナ収束を宣言したそうです(9月13日の時点でデンマークの総人口のおよそ74%が2回のコロナワクチン接種を完了)。
日本も早くコロナが収束して、マスクなしで笑える日がやって来ますように!
(ノンフィクション)
空白の時代――私の母親達が新たなことを成し遂げた時
『空白の時代――私の母親達が新たなことを成し遂げた時』(Et åbent øjeblik- Da mine mødre gjorde noget nyt)は1970年代、女性運動が盛んだったデンマークで、女性だけのシェア・ハウスで暮らしていたフェミニストやレズビアンの女性達の生き様、女性解放運動の様子が、そのシェア・ハウスでラディカル・フェミニストだった母に育てられた著者の視点から描かれた作品。著者のパニッラ・イプセンはアメリカのウィスコンシン大学マディソン校のジェンダー、女性学、女性史教授をしています。
四人目の騎士――感染症の1万年史
『四人目の騎士――感染症の1万年史』では、歴史上、人々の命を戦争以上に奪ってきたのは、感染症であったことが書かれています。感染症は帝国の没落を幾度ももたらすと同時に、新たな世代が覇権を握るチャンスをも、もたしてきました。旧石器時代に蔓延した感染症から、現在私達を苦しめる新型コロナ・ウィルスまで、人類の歴史がどう感染症に左右されてきたかが描かれています。
ノンフィクション作品は他に4冊、全部で6冊、選書されています。
(児童書)
リトル・ヌーと一番小さなモー
『リトル・ヌー』は2005年から長く続く大人気絵本シリーズ。最新作である本作では、デンマークを代表する児童書作家であるハンネ・クヴィストと画家ハンネ・バートリンのコンビに、スウェーデンのグラフィック・デザイナー、マリア・ルデーンが加わり、これまで絵本の典型とされていた、横開きでなく、縦開きになりました。
この特有の開き方、横長の判型を存分に生かしたストーリー展開がされているそうで、注目です。本シリーズは韓国、中国、チリ、スウェーデン、ドイツに版権が売れているそうです。
日本では細長い判型の絵本と言えば、読み聞かせで大盛り上がりの『100かいだてのいえ』シリーズが特に有名でしょうか。通常サイズ版は縦長で縦開きですが、読み聞かせ用の大型版(ビッグブック)は、縦長、横開きです。
大型版(ビッグブック)を小学校で読み聞かせたことがあり、大人気でした。縦長、横開きのこの本。1人でめくるのが難しく、児童1人に補佐してもらった記憶があります。
デンマークの巨匠、イブ・スパング・オルセンの『つきのぼうや』も縦長の絵本で、日本でも評価が高いですよね。こちらは邦訳では横開きですが、デンマーク語版は横開きと縦開きの2種類があります。
縦長で縦開きってさらに開きにくくならないですかね。気になるところです。
横長、縦開きの『リトル・ヌーと一番小さなモー』も、ぶきっちょな私が読み聞かせに使ったら、またきっと手が滑って、おっとっととなるのでしょう。それを見た息子がきゃっきゃと笑って手を貸してくれて、一緒にページをめくるところを想像して、ちょっぴり楽しくなりました。
『リトル・ヌー』シリーズの物語と絵がとても素敵なのは、以前から知っていたのですが、今回の『リトル・ヌーと一番小さなモー』、判型もすごく気になります。子ども達は絵本の物語はもちろん、ページをめくるのも大好きですね。
参考 福音館書店松居直さん講演会、横長絵本の誕生について、サイト内PDFの19ページあたり
児童書は他に9作、全部で10冊推薦されています。
(文責 枇谷 玲子)
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