作家ミカエル・ヴィアンデル氏へのインタビュー
今年の1月25日、私は東京にいらしたスウェーデンで大人気の児童文学作家、ミカエル・ヴィアンデル(Michael Wiander)さんにお会いしました。
ヴィアンデルさんは、『デクステル・オルソンの冒険』というスウェーデンで小学生に大人気のシリーズを書いてらっしゃいます。
この本は、主人公の小学生デスクテルが発明家のお祖父さんと一緒にコストロフという敵を相手に戦い、世界中を旅する冒険物語です。日本では残念ながらまだ出版されていません。
ヴィアンデルさんは、今人気のある児童文学が呪術や残酷なシーンの出てくる少々恐ろしい本が多いことを憂いており、子どもたちが読んでも怖がらない楽しい物語を書こうと考えたそうです。568ページもある長い本ですが、あちこちに笑いのネタが仕掛けてあるので、子どもたちはクスクス笑いながら読むそうです。中には本が終わってしまうのが悲しくて、泣いてしまうお子さんもいるのだとか。
さて、私はヴィアンデルさんに会って、スウェーデンでの児童文学をめぐる出版状況についてインタビューさせていただきました。
スウェーデンでも出版事情が厳しいのは、日本とあまり変わらないようです。本を読んで楽しむ子どもたちの数はかなり減ってしまっているとか。ネットゲーム、Youtube、Tiktokなど、魅力的なメディアがたくさんある以上はしかたがないのかもしれませんが、『長くつしたのピッピ』や『ミオよわたしのミオ』をワクワクしながら読んだ身としては、やはり寂しいものがあります。現在、児童書がベストセラーになるのは30年前よりずっと難しいのだそうです。それはきっと日本でも同じですね。
スウェーデンの出版社側もかなり手控えていて、すでに有名な既刊書があったり、フォロワーが何万人もいるようなブロガーでなければ本を出版してもらうことも難しいのだそうです。
ヴィアンデルさんが語っていたのは、作家自身が積極的に自分の本を紹介すべきだということ。いかに本が面白くとも、人々が手に取ってくれなければそれは伝わらないからです。
スウェーデンで作家さんがよくおこなっているのはブックトークだそうです。作家さんが学校や本屋さん、図書館に行って本について話します。ヴィアンデルさんは週に1度はそういったイベントで、講演し、子どもたちと交流します。ストックホルムのNKデパートの中にある本屋さんには、ブックトーク用のスペースがありました。
また小学校や図書館などに献本をするのも重要だそう。子どもたちにどれだけ自分の本が面白いのかを、まず知ってもらうことが第一歩なのだそうです。
日々SNSでご自身の本や、本について子どもたちと話したことなど発信することもとても重要だそうです。特にInstagram はお互いに友だち申請をしていない人にも情報が届くため、重要なツールだそうです。
スウェーデンの作家さんの手法として面白いと思うのは、ファーストフード店とタイアップすること。
2017年に『デクステル・オルソンの冒険』が出版された時には、スウェーデン国内のダンキンドーナッツとタイアップし、各店舗でこの本が売られたとか。
バーガーキングとタイアップしている作家さんもいらっしゃいます。
私たち翻訳者も、自分が大好きな本を出版社の皆様にご紹介し、心を込めて翻訳するのですから、このような作家さんの姿勢は見習うべきかもしれませんね。お一人でも多くの方が手に取ってくださるように。
本をアピールする重要さを話してくださったヴィアンデルさんですが、一番大事なのはやはり子どもたちの声を聞くことだそうです。子どもたちが喜ぶものを一番知っているのは、やはり子どもたちです。ヴィアンデルさんはブックトークや学校訪問で子どもたちと会うたびに子どもたちと話をします。今どんなことに興味があるのか、どんな瞬間に面白いと思うのか。さらにご自身のインスタグラムやホームページでご自身の本を読んでくれる子どもたちを募集し、原稿を試し読みしてもらって意見を聞かせてもらうのだとか。このように多くの子どもたちの声を丁寧に拾い、ご自身の本に反映させていくそうです。後からヴィアンデルさんの本を読んだ子どもたちは、自分がヴィアンデルさんに伝えたことが登場人物のセリフになっていたら喜ぶでしょうね!
文責 中村冬美
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