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フィンランド映画とサウナ

 もう1ヶ月ほど前になりますが、11月9日から15日までの一週間、フィンランド映画祭が開催されていました。上映された5作品のうち、『ランド・オブ・ホープ』『頑固じいさんとしあわせな時間』『アウロラ』の3本を鑑賞してきました。

 偶然ですが、いずれの作品にもサウナが登場していて、さすがフィンランド…!と思いました。日本でも近年、サウナ人気が急上昇中のようで、フィンランドのドキュメンタリー映画『サウナのあるところ』が今年秋に公開されたり、フィンランド発のロウリュ(熱した石に水をかけて蒸気を発生させるサウナの入浴法)が注目を集めたりしています。


 『頑固じいさんとしあわせな時間』では、娘を心配するあまり束縛気味な両親がサウナに入っているシーンがありました。娘のことをごにょごにょ二人で相談していると、周りにいる人たち(そう、男女混合のサウナなのです!)が口々に、「うちの娘もそうだった」「厳しくしてたらグレてしまったんだ」などなどと独り言のようにつぶやき、それを聞いた二人はしょんぼりしてしまいます。


 また、『アウロラ』では、パンツ(水着?)を履いたままサウナに入ったイラン人のダリアンが「サウナは裸で入るものだ」と言われ、『ランド・オブ・ホープ』では、北カレリアの開拓地にやってきた新婚夫婦が自力で自宅だけでなくサウナ小屋まで建設する姿が描かれます。サウナの中で知らない者同士が交流したり、笑いが起きて友情が育まれたり、3本の映画を通して、フィンランドの日常がサウナと密接に結びついている様子がうかがえました。

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 実は8月の終わりにヘルシンキを訪れたのですが、その際に私もフィンランドのサウナに入ってきました。ロンナ島にあるサウナです。ロンナ島は全長150メートルほどだそうで、はじめに説明を読んだときは(小さすぎないか…?)と自分の目を信じられず、何度も読み返してしまいました。島の中にはサウナと受付の建物のほかに、レストランやカフェがあります。実際、とてもこじんまりとした島で、ものの数分でぐるっと一周できる広さでした。7月には毎週ジャズイベントを催していたそうです。

 サウナは各回2時間の予約制(開始時刻は30分刻み)で、定員はたぶん15人ほど。旅行者は私一人だけで、おそらく周りは全員フィンランド人! ちょっと緊張しながらおとなしく過ごしていましたが、少しすると4人グループで来ていたおばさまが英語で話しかけてくれました。そして「これが醍醐味だから」というようなことを言われ、一緒に海に飛び込み、その後はフロントで買ったビールを飲みながら、サウナの小窓からのぞく海を眺め、のんびりとした時間を過ごしました。もう秋の気配を感じるような気候だったので、じんわりと体を温めることができてとてもよかったです。

 ロンナ島のサウナの様子が、こちらのレポートにとても詳細に記されていましたので、(会とは関係のないサイトですが)ご紹介します。島の全景やサウナ内部の写真もあります。

世界サウナ紀行 Vol.11 Destination : Island of Lonna (Finland)
http://hanatsubaki.shiseidogroup.jp/now/5227/

 今回はサウナだけですぐに帰ってきてしまったので、また夏にヘルシンキに行く機会があれば、次はカフェやレストランに入って、ロンナ島の魅力を堪能したいものです。

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 映画の話に戻りますが、フィンランド映画祭で見かけて気になった字幕はと言えば、『頑固じいさんとしあわせな時間』の「爆買い」です。比較的最近使われるようになった新語ですが(2015年の流行語大賞)、新しい言葉を訳語として採用する時には翻訳者の力量が試されるため、非常に気を遣います。その言葉の鮮度や定着の度合い、作品の雰囲気や観客層、登場人物のキャラクターなど、さまざまな点をよく理解したうえで、その語を使うかどうか検討しなければならないからです。「爆買い」は「中国人観光客が家電量販店やドラッグストアなどで日本製品を大量に購入する」イメージがありましたが、広く一般に「あり得ないほどたくさんの商品を買うこと」という意味で定着してきているようです。この映画の中でも「郊外のスーパーで思いっきり買い物する」という日常の場面で使われていました。頑固じいさんと一緒に過ごす孫娘のソフィアは大学入学を控えた17歳なので、全体的に弾けた感じの若者言葉が印象に残りました。

 ちなみに、サウナと水風呂を何度か行き来してトランス状態になることを「ととのう」と言いますよね。個人的にはそこまでサウナを存分に味わえたことがないのですが、いつか字幕で「ととのう」という言葉を使えたら面白いなと思っています。フィンランド映画なら、そのチャンスがあるかもしれません。

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 そして最後に宣伝です。来年1/13(成人の日!)に、神保町でスウェーデン映画『リンドグレーン』の鑑賞会を開催いたします。みんなで映画を観たあと、その感想やリンドグレーンの作品、北欧文学・映画などについて、ざっくばらんにおしゃべりする会です。すでに映画をご覧になった方は、懇親会からの参加も可能です。

【日時・場所】
2020年1月13日(月・祝日)
13:00〜15:00 映画鑑賞(神保町・岩波ホール)
15:30〜17:30 懇親会(ブックハウスカフェ)

【参加費】
懇親会の場所代として500〜1,000円程度
*映画のチケットは各自ご購入いただきます。

 リンドグレーンの本や児童文学がお好きな方、北欧の本や映画に興味がある方などに来ていただけたらうれしいです。まだまだ受け付けておりますので、少しでもご興味のある方はぜひご連絡ください。お名前とメールアドレスを明記のうえ、TwitterのDMで @fujinoremi まで。どうぞよろしくお願いします。


(文責:藤野玲充

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