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イベントレポート 北欧ヘルスサミット(2022年5月11日開催)

人口当たりのユニコーンの輩出数がシリコンバレーについで世界第2位、European Innovation Scoreboardsなど各種ランキングで高順位につけるなど、イノベーション先進地域としての北欧の地位が世界で高まっています。ここ数年の日本から北欧への投資の増加も注目に値します。

これらの傾向を背景に、北欧のヘルスケア分野のイノベーションと、日本の投資家、産業界、エコシステムを繋ぐ場として、2022年5月11日から13日の3日間、北欧5カ国の駐日大使館商務部とノルディックイノベーションハウス東京の共催で、「北欧ヘルスサミット」を開催しました。

日本と北欧合わせて128社から183名が参加。初日のプログラムデイには会場とオンライン合わせて147名が参加し、続く2日間では145の商談会が組まれました。

初日のプログラムデイは、主に日本の参加者に北欧のヘルスケア分野の最新動向を知っていただく目的で開催しました。

開会の挨拶:高品質な医療の全市民への提供は、北欧諸国の共通点

開会にあたり、スウェーデン公使参事官 レーナ・フォン・シドー氏、ノルウェー臨時代理大使リーネ・アウネ氏、デンマーク大使 ピーター・タクソ・イェンセン氏が挨拶。シドー氏は、日本と北欧諸国はおおよそGDPの10%を保健医療に充てており、市民の幸福と社会の安定に寄与していることに言及。アウネ氏は、北欧諸国は民主主義、オープンな社会、福祉の重視を共通の価値観として持っており、それが人間中心に設計された高品質な医療を全市民に提供する基盤にもなっている述べました。最後にイェンセン大使が、本サミットの意義は明日から2日間に渡って行われる商談会にあると強調し、商談会が新しい協業のきっかけになることを祈願しました。

基調講演:「製薬会社の役割は大きく変わってきている」

基調講演には、武田薬品工業株式会社 タケダデジタルアクセラレータージャパンヘッド大塚勝氏が登壇。製薬会社が担う分野は、従来の治療分野に限定した役割から、予防、診断、治療、そして予後の範囲まで拡大し、大きく変わってきており、デジタルソリューションへの取り組みは一つの要と説明。その中で他社、特にスタートアップとの連携は非常に重要だとも指摘しました。世界のデジタルヘルストップ150社(CB Insights)の中には、北欧の企業も多く含まれており、日本企業にとっても北欧スタートアップと協業するのは一つの戦略だと話しました。

北欧イノベーションを支える研究、協業、オープンなマインドセット

次に、なぜ北欧が優良なスタートアップを輩出しているのかについて、スウェーデン大使館 科学イノベーション参事官、ミカエル・ヤコブ氏と、ノルディックイノベーションハウス東京 コミュニティディレクター、ニコラス・カルヴォネンが対談。R&Dへの潤沢な投資、優良な研究機関や大学の存在、新しい技術の市場ニーズへの転換や誘導に優れていること、新しい技術を抵抗なく受け入れるアーリーアダプターであること、起業当初からグローバル市場を見据えるBorn Globalであること、などの点が挙げられました。

北欧ヘルスケアの動向と、デジタル化とイノベーションマネジメント

続いて北欧ヘルスケア分野の動向と、デジタル化とイノベーションマネジメントについて、フィンランド大使館上席商務官 木村正裕氏、デンマーク王国大使館経済外交ヘルスケア担当公使参事官 トーマス  ホイルンド  クリステンセン氏、ノルウェー大使館通商技術部科学技術・高等教育参事官 工学博士 マイリアンネ・S・ベルグ氏が対談。

労働力が減少する中、保健医療サービスの維持向上にいかに取り組むかという点について、クリステンセン氏は、日本と北欧は同様の課題を共有しつつも、そのアプローチが異なると言及。例えばデンマークでは人口当たりの病床数を減らし(1000人当たりの病床数はデンマーク2.5床、日本は13床)、高水準な医療を担う中核病院を設置し、居住地域によりかかりつけ医を割り当てる制度で効率的な医療の提供を実現したと説明しました。

木村氏は、フィンランドの、超高齢化社会に向けてデジタルソルーションを活用したスマートエージングの取り組み、統合的な電子カルテ情報がヘルスケア分野のイノベーション促進に果たす役割、そしてバイオバンクデータ活用に向けたいち早い法律整備などに言及。

またベルグ氏は、イノベーションは企業からのみ生まれるものではなく、自治体や、時には看病する家族や一人の医療従事者から生まれることもあるため、イノベーションの機会を全ての医療の担い手、受け手が持つことも重要と話しました。

「北欧には活発なライフサイエンス業界がある」

続いてスウェーデンのベンチャーキャピタル、インドストリーフォンデン社社長、ペーテル・ウォルぺルート氏がリモート登壇、北欧ライフサイエンス分野における投資と協業の傾向を説明。北欧のライフサイエンス業界の特徴として、アカデミアからビジネス展開に渡る洗練されたエコシステムが構築されていること、ベンチャーキャピタルからの投資のみならず、市場での資金調達も活発であること、バイオテック関連の特許登録数が人口あたりEU諸国の2倍であることなどを挙げ、引き続き日本からの投資を歓迎しました。

日本と北欧の協業例「北欧は投資しやすい環境が整っている」

コーヒーブレークを挟んで、昨年スウェーデンのフローニューロサイエンス社に投資をした株式会社グローバルブレイン インベストグループ・パートナーの守口毅氏と、スウェーデン大使館商務部・投資部 投資官マグヌス・ブロンデル氏が登壇。守口氏はフローニューロサイエンス社との経験を振り返り、コロナ禍における信頼関係の構築、大使館が協力することの意義、日本や米国のスタートアップと比較して非財務情報が入手しやすかったことなどに言及。北欧は医療データも含めた国民の登録台帳がイノベーションに活用されており、研究の基礎レベルも高く、投資しやすい環境が整っているので、引き続き投資先として注視していきたいと述べました。

EXPO2025大阪、ヘルスケアは柱の一つ

続いて大阪市に拠点を持つアストラゼネカ株式会社イノベーションパートナーシップ&i2JPダイレクター、工学博士 劉雷氏と、公益財団法人大阪産業局イノベーション推進部プロジェクトリーダー、石飛恵美氏が登壇。アストラゼネカは製薬会社の役割が変わる中、オープンイノベーションを促進するためのプラットフォーム、i2.jpの構築を開始、国内外にネットワークを広げ活動中。大阪産業局は、大阪地域の起業家、大企業、投資家などをつなぐ大阪イノベーションハブを運営し、国内外のスタートアップにサポートを提供。両者は、「日本は言語障害や規制などで参入障壁が高いマーケットだと言われることが多いですが、私たちのように然るべきところにコンタクトいただければ、障壁は取り除けます。2025年の大阪万博のテーマは、ヘルスケアとモビリティ。EXPOを一つの契機に、多くの海外スタートアップに参入いただきたい」と述べました。

商談会に向けて:北欧企業 抜粋16社がピッチ

プログラムデイの最後に、今回のサミットに参加している北欧企業の中から16社がリモートピッチに登壇しました。登壇した会社は以下の通り:Idogen, SVF, Herantis, Popit, PainDrainer, MinPlan, Vitacon, Epiguard, Primex, Aker Biomarine, Cerebriu, Hytest, Sprint Bioscience, Nordic Bioscience, Geras Solutions, Amniotics

今後に向けて

閉幕後に行ったアンケートでは、大半の回答者からサミットが有意義だったと前向きな評価をいただきました。回答者全員が、もし来年も開催されたら参加したい意向を示しました。

最後までお読みいただきありがとうございました。北欧ヘルスサミット プログラムデイ 全編録画もどうぞご覧ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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