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嵐電のダイヤ改正について考える【嵯峨野ぐらし39】

 嵐電京福電気鉄道株式会社の鉄道線の通称)といえば、京都市の西の方を走る、ふだんは1両編成で、一部は路面電車の鉄道です。下の路線図のように、京都市の中心部に近い四条大宮嵐山を結ぶ嵐山線と、途中の帷子ノ辻(かたびらのつじ)北野天満宮金閣寺の最寄り駅である北野白梅町を結ぶ北野線からなっています。沿線には嵐山、太秦映画村、車折神社、仁和寺、龍安寺、金閣寺などの観光スポットが連なる観光路線ですが、一方で、四条大宮、西院、北野白梅町、等持院の4駅以外は右京区内にあり、嵐電天神川地下鉄東西線と、西院四条大宮阪急電車と、嵐電嵯峨撮影所前JR嵯峨野山陰線と接続していることから、右京区民が街へ出るときの足のような存在です。(余談ですが、右京区には昔から市電の路線がなく、JRは平成になるまで非電化の単線、地下鉄も平成になるまで延伸されなかったようなところなので、区民にとって嵐電はたいへん貴重な存在でした)

嵐電路線図


 そんな嵐電に関して、去る8月3日にダイヤ改正(8月26日実施)の発表がありました。現在のダイヤは2021年3月に改正されたものですが、そのときはコロナ禍の対応として終電の繰り上げがあった程度の見直しで、その前はいつ改正されたのか、沿線住民の私も記憶が定かではありません。
 コロナ禍の収束により京都の観光地が再び外国人観光客であふれかえるようになって以降、運賃の値上げ、新型車両の導入(24年度以降)など攻めの経営に転じていた感があり、特に運賃はそれまでライバルの市バス(230円均一)よりちょっと安い220円均一にするなど「すき間産業」っぽい設定でしたが、今年の4月から市バスより高い250円均一に値上げするといった攻めに出ています。(おかげで私のバイトの交通費が嵐電で支給されなくなり、市バス均一区間乗り放題定期券に変わってしまいました・・・ 個人的には嵐電の駅のほうがバス停よりずっと近いので嵐電で通いたいのですが・・・)
 しかし値上げ後も嵐電は平日昼間でさえ外国人観光客で大盛況とウハウハのようで、株価もコロナ禍の底値2,650円(2021年5月)から、本日現在4,260円と爆上がりしています。

コロナ禍の緊急事態宣言で私以外にお客がいない嵐電(20年4月)


 それだけに今回の寝耳に水のようなダイヤ改正でどうなるのか、沿線住民としてはとても気になるところです。
 JRや大手私鉄だったらダイヤ改正を細かく分析してYouTubeに解説動画にアップしてくれるマニアがたくさんいるのですが、一見さんの観光客を除けば「右京区民の足」でしかない嵐電のダイヤを分析してくれる人もいなさそうだし、今日は台風のおかげでバイトも休みだし、どこへも出かけられないし・・・ということで、沿線住民を代表して私が嵐電の新ダイヤを細かくチェックしてみました。

ダイヤ改正の公式発表
ダイヤ改正内容の公式発表

 現在は公式時刻表では嵐山線の朝ラッシュのときだけ2両編成(時刻表には記載されていないけれども観光シーズンやイベントのあるときは随時2両に増結)だったのを、平日休日とも午後の嵐山線(嵐山帰りの外国人観光客でいっぱい)を恒久的に2両編成化するのと、北野線の朝ラッシュの増発による輸送力アップが今回の改正の目玉のようです。しかし、公式発表資料を細かく見ると、嵐山線は平日の輸送力が+18.5%も増強されているのに1日の運行本数は▲6.1%だし、北野線は朝ラッシュに増便していると言いながら、1日の運行本数も輸送力も減っているし、なんか怪しげです。細かく見ていきましょう。

今は亡きしまじろう電車
しまじろう電車のシート

1.嵐山線
(1)始発・終電
 始発は西院発 現5:35→新5:30嵐山発5:57→5:53とわずかですが早くなっています。これはありがたい。一方で終電は四条大宮発23:45→23:40、嵐山発0:10→0:07とわずかですが繰り上がっています。
 わずかとはいえ、この「嵐山発3分繰り上げ」は沿線住民(のうちでもウチの周辺だけ?)にとっては厳しい3分です。というのも、京都駅からウチへ帰ってくるときの最終電車は、地下鉄や阪急電車からの乗り継ぎではなく、JR嵯峨野山陰線の最終電車で0:03にJR嵯峨嵐山駅に降り立ち、徒歩で嵐電の嵐電嵯峨駅へ移動して0:11発の嵐電の最終に乗るコースなのですが、駅間の移動に普通に歩いて5分ぐらいはかかるので、今後はJR嵯峨嵐山駅から嵐電の駅を目指して息を切らしてダッシュするも目の前で嵐電の最終0:08発が出発してしまい、泣きながらウチまで歩いて帰るというパターンになってしまいそうです。(徒歩10分ぐらいなんだから歩けよ!)

(2)朝ラッシュ
 平日の朝ラッシュ(現ダイヤ:嵐山発6:56~8:36)は5分間隔の運転で2両と1両が交互に来るダイヤ(四条大宮行の2両の電車は帷子ノ辻駅で北野線からの乗り換え接続あり)ですが、新ダイヤは8分間隔ですべて2両になるようです。現在より輸送力は低下しますが、まあオンライン在宅勤務の人も増えたようで、最近の朝ラッシュは昼間の外国人観光客ラッシュよりもよっぽど空いているので、致し方なしでしょう。北野線も朝ラッシュは8分間隔になるので両線とも8分間隔に統一したことで、乗換の利便性もよくなりそうです。

(3)夕方の観光客ラッシュ&通勤ラッシュ
 平日の嵐山発15:33から19:23は、現在の1両(多客期のみ随時2両に増結)から、恒久的に2両になるようです。これについては、今後中国人観光客が増えることも考えると、もはや1両では対応できなくなるのが目に見えているので、先手を打っておくのが得策でしょう。
 また、現ダイヤでは平日の四条大宮発17:12から19:44は8分間隔の1両なのですが、今回の改正でこの時間帯も10分間隔の2両に見直されます。私のバイト帰りにも、ゆっくりと座れそうです。この時間帯、大阪方面から阪急電車で帰ってきて西院駅で嵐電に乗り換える通勤客が多いのですが、現在のダイヤでは阪急電車が10分サイクル、嵐電が8分サイクルのため、嵐電の乗車率にムラがあるのですが、新ダイヤではどちらも10分サイクルになりムラがなくなりそうです。
 休日は新ダイヤで嵐山発13:33発から17:53発までが2両になるというのが変化点です。とはいえ、今でも公式時刻表では休日は終日1両になっているものの、実際は観光客であふれているので9時台から17時台ぐらいまで2両で運転しているので、実質的に現状維持といえるでしょう。

(4)深夜帯
 今回のダイヤの隠されたポイントは深夜帯にありました。平日の現ダイヤでは四条大宮発23:05までは概ね10分間隔で運転し、その後23:25と23:45で終了となっていますが、新ダイヤでは10分間隔は21:03発で終了、22:15までは12分間隔、その後23:00までは15分間隔、その後23:20と23:40で終了となっており、四条大宮発21時以降の運転本数が3本減になっています。
 休日は現ダイヤでも四条大宮発22:04発以降は15分間隔の間引き運転になっているところを、さらに21時台から減便するので、四条大宮発21時以降の運転本数は1本減になっています。

(5)まとめ
 嵐山線は「右京区民の足」「観光客の足」の2つの面を持つ路線で、これまで2つの両立を図っていましたが、今回のダイヤ改正で「観光客の足」について輸送力を強化した一方で、朝ラッシュや深夜帯といった右京区民しか利用しないような時間帯は減便し、トータルの運行本数では減便するということでバランスを取っているようです。
 まあ、確かに近頃、朝ラッシュや深夜帯はあまり混んでいないし、仕方ないところでしょう。(公式発表で深夜帯の減便について一切触れられていないのは、輸送力増強のカゲで見えないようにしてうまく丸め込まれているようでちょっとイヤですが・・・)

江ノ電塗色の嵐電

2.北野線
(1)始発・終電
 始発は平日・休日とも帷子ノ辻発が現5:55→新5:48、北野白梅町発が6:10→6:03とそれぞれ7分早くなっています。一方で終電は平日・休日とも帷子ノ辻発、23:25で変更なく、北野白梅町発は23:41→23:40と若干繰り上がっているものの、全体的に利便性は若干向上しているようです。

(2)朝ラッシュ
 現ダイヤでは早朝深夜以外は、朝ラッシュも含めてほぼ終日10分間隔の1両編成で運行されていますが、驚いたことに新ダイヤでは平日朝ラッシュのみ8分間隔に見直すようです。帷子ノ辻駅発6:50から8:42は8分間隔で運転し、8:56発まで14分開いたあと21:16まで10分間隔になるというダイヤです。北野線は単線のため、現在の10分間隔ダイヤだと鳴滝駅龍安寺駅で行き違うのですが、8分間隔だと常盤駅御室仁和寺駅等持院駅で行き違うようです。いきなり10分間隔に戻すとうまく行き違いができないので、帷子ノ辻駅発8:42のあとは8:56発まで開いてしまうようです。常盤、御室仁和寺、等持院の各駅は現ダイヤでは行き違いが設定されていないものの、構造上は行き違えるようになっており、こんな裏技も使えたのか!と驚かされています。これらの駅での列車交換、これまで見られなかった光景に鉄ヲタが動画撮影に来そうですね。

(3)早朝・深夜帯
 北野線も嵐山線と同様、右京区民しか乗らないような時間帯は減便になっています。8分間隔運転がスタートする帷子ノ辻駅発6:50よりも前の早朝帯の運行本数は、現ダイヤの5本から新ダイヤでは4本と1本減便になっています。深夜帯は、現ダイヤでは帷子ノ辻駅発22:25以降20分間隔になり23:25発で終了となっていますが、新ダイヤでは帷子ノ辻駅発21:16発以降21:36、22:00、22:25、22:55、23:25と間引き運転になるようです。帷子ノ辻駅発21時以降の運行本数は、平日休日とも現ダイヤ11本→新ダイヤ7本と4本も減便になっています。まあ、夜遅くに北野線に乗ってもお客は自分だけだったり、他に数人いるぐらいの感じなので、これも致し方ないところでしょう。

(4)まとめ
 北野線はこれまで利用者数の偏りに関わらず、ほぼ終日、10分間隔の1両で漫然と走っているようなダイヤになっていましたが、新ダイヤでは朝ラッシュは増便して、早朝深夜は減便するというメリハリを付けたダイヤに見直されており、今回の思い切った見直しは評価できる内容かと思います。

 素人による鉄道ダイヤ解説でしたが、いかがでしたでしょうか。嵐電のダイヤ改正がマニアの方にきっちりと評価される記事がアップされるのを心待ちにしております。ではまた。


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