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【50代の大学生日記 第54話】2月も終活旅行(前編 清水港の巻)

 卒業制作の単位が認定され、よっぽどの計算間違いか大きな勘違いがない限り、3月には大学を卒業できそうです。とはいえ、私から「大学生」という肩書を取り上げたら、職業は「フリーター」になっちゃうし、この「50代の大学生日記シリーズ」も強制終了になってしまう。4月からは、『生きているうちに行ってみたかったところへ行ってきた! 終活旅行シリーズ』にでも改めようかと思案している今日この頃です。
 学生バイト(自称)書道用品店の肉体労働全般をやっている私、先日京都の某「外資系超高級ホテル」の和食店から注文があった半紙(そこそこ高級)を納品に行きました。このホテルへの納品は、建物の裏側の地下通路のようなドアから入って、警備員のおじさんに入館証をもらって進んだところにある納場に商品を持っていって検品してもらうのですが、ホテルの納場で私のように半紙の箱をかついでいるような人はまずおらず、いろんな高級食材を納めにきている業者さんが列をなしています。私の前には給食当番のような帽子と服を着たおじさんが、全身から「着替える間も惜しんで、たった今搾ってきたばっかりのエクストラバージンを持ってきましたオーラ」を出しながら、高級そうなビンに入ったオリーブオイルを納品しています。
 この光景に、「自分がこのホテルに泊まったとして、値段相応の高級な時間が過ごせるのだろうか?」と考えていて、ふと、「今このホテルに泊まると1泊いくらなんだろう? コロナ最高潮のときでも1部屋10万円ちょっとでビックリさせられたが、あれでも安かったのだろうか?」という疑問がわいてきました。調べてみると、この日(火曜日)の宿泊費は最安の部屋で1部屋1泊26万円! スイートだと1部屋1泊56万円でした!! これが3月下旬の桜が咲きそうな時季の週末になると、最安で45万円、スイートで89万円となっています!!! 最安の部屋でも1泊でうちの家賃1年分やないか~い! もはや笑うしかありません。
 が、しかし、But、この値段には食事代が入っていないのです! 私が半紙(そこそこ高級)を納品した和食店で、おそらくこの半紙が油取りの敷き紙に使われるであろう天ぷらがついているコースだと、最安でも1人前2万2千円です! 学生バイト(自称)で2万2千円稼ごうと思ったら3日働かなあかんやん。まあ、私が余命1ヶ月と宣告されて、1ヶ月では使いきれないぐらいお金があっても、このホテルのありがたみがわからないので、泊まることはないでしょうな・・・・・・ 
 こんなことを考えていたら、今月も旅行に行きたくなりました。ということで、その翌日から発作的に旅に出てきました。(ほんとはかなり前から計画してました)

 バイト休みの平日、新幹線と在来線を乗り継いで着いたのは・・・・・・

清水駅(東海道本線)

 静岡の清水。清水といえば次郎長。と言いたいところですが、今やちびまる子ちゃんとエスパルスのほうがよっぽど有名ですよね。

清水といえば

 いいお天気なので、駅から雪をかぶった富士山がきれいに見えます。

駅から見た富士山(と工事現場)

 そして、昼間から清水の地酒「臥龍梅」地魚の寿司をいただき、すっかり旅気分。

昼からお寿司

 ちびまる子ちゃんランドもおもしろそうですが、おっさんひとりで入場するほど私はメンタルが強くない。もうすぐランド内のステージでショーが始まるようですが、他にお客もいなさそうだし、おっさんとまる子の1on1では、お互いにこの上なく居心地が悪いだろう。

ちびまる子ちゃんランド

 おっと、ここへ来た目的を忘れるところだった。建物の海側の出口から出ると、海辺にこんなものが建ってます。実は、清水港に来たのはこれを見るためなのでした。
 なんだ、この変な構造物は?
「登録有形文化財」のプレートが飾られています。

テルファークレーン
登録有形文化財

 「清水港テルファー」「日本の貨物輸送を支えた港湾機械」として、日本機械学会の機械遺産にも認定されています。以下、私がかつて会員であった日本機械学会の紹介文です。
テルファーとは荷物を吊り上げて水平レールに沿って移動させるクレーンの一種である。清水港テルファーは1928(昭和3)年に完成し、テルファー形式の木材荷揚げ機械としては現存唯一のものである。ここで認定するものは、テルファーのレールを懸架する鋼トラス構造物とその敷地を含んでいる。
 明電舎製の電動機を用いた捲揚装置(トロリ)と運転手室は東京瓦斯電気工業製の「トカコ電動ホヰスト」で定格容量2トン、施工工事は神戸の内外エレベータ会社が行い、その後に定格容量3トンのものに交換されて、1971(昭和46)年まで使用された。8.4mの高さに架設された総延長189.4mのレールに沿って、運転手室付きのトロリが走行する。現在保存されている2台のトロリは容量3トンのものであるが、運転手室は残っていない。
 清水港テルファーは木材を陸揚げする効率を飛躍的に向上させ、清水港が国内最大の木材陸揚げ港として発展することに大きく貢献した。テルファーは現在も各地に存在するが、清水港テルファーは、ショッピングモールに隣接した公園にあり、港を含めた景観の一部となっている。市民に親しまれている大型機械として貴重な存在である』
 つまり、現在、工場で重量物の移動に欠かせない「ホイストクレーン」の元祖として100年近く前に作られたレガシーなのです。

テルファーと清水港

 こんな無骨な構造物ですが、使命を終えた今、ともすると不似合いな装飾を施されて港に佇んでいます。でもなぜか不思議と海がよく似合いますよね。

 テルファーをあとに、少しばかり歩き、駿河湾フェリーの乗り場へ向かいました。実は私は2010年、愛知県に単身赴任しているときに日帰りで、その当時東静岡駅前にあった「等身大ガンダム像」を参拝したあと清水港に遊びに来たことがあります。そのときに清水から伊豆半島へ渡るフェリーがあることを知り、富士山もきれいに見えるだろうし、伊豆にも行ってみたいなぁと思っていたのですが、10年以上の月日を経て、ようやく海路で伊豆へ向かうことができました。

等身大ガンダム像@東静岡駅前(2010年)


駿河湾フェリー


船より見た富士山

 駿河湾フェリーは清水港から駿河湾を横断して伊豆半島の土肥港までを70分で結ぶ航路です。天気がよいと上の写真のように海の向こうに見える富士山を拝むことができます。
 それにしてもけっこう揺れます。この揺れる船の甲板でたこ焼きを焼いているおっちゃん、尊敬します。こんなに揺れるのは駿河湾の海底地形も影響しているようです。
 伊豆半島は約60万年前にフィリピンプレートに乗っかってやってきた火山島で、それが本州(ユーラシアプレート)にぶつかったことにより、プレートの境界に「駿河トラフ」と呼ばれる深さ2500メートルの海溝を有する駿河湾ができたのだそうで、下写真のように特に伊豆半島側は海岸線の切り立った崖から海底2500メートルまでつづく高さ3000メートル級の断崖絶壁になっています。すみません、私は伊豆半島がこのように海岸線真際まで急峻な崖が迫っているようなところだとはこの年齢まで知りませんでした。

駿河湾の地形

 さて、土肥港に到着すると、私はわき目も振らず、土肥金山へ向かいます。砂金取り体験で一攫千金を狙えるでしょうか? 中編『一攫千金ゴールデンカムイの巻』に続きます。ではまた。

土肥金山


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