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日本語レッスン:不自然な文を教えよう!

*みん日第14課ぐらいを勉強している学習者とのレッスン開始時の会話
私「こんばんは。お元気ですか?」
生徒「元気です。ノラ先生もお元気ですか?」
私「はい、元気です。ありがとうございます。今日のお仕事はもう終わりましたか」
生徒「いいえ、終わりませんでした。午後9時からインドと会議があります。」

教科書に沿って教えていると、どうしても不自然な表現を教えたり、使わせたりしてしまうことになりますよね。

特に初心者に教科書を使って教えていると「教科書のこの表現、不自然だけどこのまま教えていいのかな。」「いま生徒が使った表現、不自然だけど、自然な表現はまだ教えていない文法を使うことになるし、どうしよう」と不安になることがあると思います。

私はあまり気にしていません。教科書に出てくる不自然な表現は後から修正可能だし、不自然な表現になってしまっても知っている文法でどんどんしゃべらせることで、その文法が定着し次のレベルに進めるからです。

レッスンのみで日本語を学ぶという前提が間違い

今日何をしましたか?
この後何をしますか?
昨日見た映画はどうでしたか?

「みんなの日本語」なら12課、「げんき」なら5課までの文法で、以上の質問に答えられるようになります。ここまで答えられれば、学習者も自分で成長を感じやすいし、日本語のドラマやアニメで少しずつ文章が拾えるようになってきます。

趣味で学んでいる学習者は、アニメやドラマ、映画を好き好んでみている人たちです。仕事や進学のために学んでいる方々は日々、職場や学校で生の日本語に触れています。

基本的な文法や単語がわかれば自走できるのです。

ある程度文法を理解したうえで、学習者本人が、「私が使っている表現とアニメの表現が違うな、なんでだろう」と自分で疑問に思って、私に質問をしたり、自分で修正してくれるのが理想的です。

レッスンで、「自然な日本語」にこだわりすぎて、動詞を覚えたばかりの人に「9時からインドと会議があるんです」という表現を教えて「んです」形を説明したり、「お元気ですか?」はあまり使わないと教えても、それは生徒の記憶に残りにくいでしょう。

時間が限られている中で、バラバラに教えて情報過多になっても、生徒が混乱してやる気をそぐだけかと思います。

自走してもらう

成長が実感できれば、学習意欲もわいてきて、「漢字も勉強しようかな」「日本語のPodcast聞いてみようかな」「ドラマで日本語がすこし聞き取れるようになった!」とレッスン以外の勉強もはかどって自走し始めます。

そして、生の日本語の表現と、レッスンで習った日本語の差に気づいて「アニメで見たんですけど『お前が悪い』ってどういう意味ですか?」などと質問も出てきやすくなります。

本人は使われたシチュエーション付きで覚えているので説明しやすいです。

「『あなたが悪いです』のカジュアル表現です。レッスンでまず学習する文体は『です・ます体』と言われていて、一番汎用性は高いですが、親しい間柄で使うには少しフォーマルすぎます。」などと説明をします。ここで軽く頭出しをしておくと、のちのち、短縮形(宿題をしましたか。=>宿題をした?)の導入もスムーズです。

何回をレッスンをして、教科書の表現が定着している場合には、不自然な表現を直すこともあります。

生徒、講師両方にウィンウィン

いくら自然な表現とはいえ、最初から応用の利かない定型表現を教えても広がりがありません。私は、教科書通りに教えて最短で生徒が自走できる基礎をつけるのが最優先だと思っています。また、教科書通りに教えればいいので、教える側にとっても楽です。


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