見出し画像

オミクロンはワクチン義務化の追い風になるか?【アメリカのコロナ事情Vol.14】

オミクロンに対するバイデン政権の反応

ワクチン義務化に行き詰まり感のあった、バイデン政権ですが、数日前に彼らのワクチン義務化政策には朗報と思われるニュースが出てきました。突然、騒がれ始めた、オミクロン株です。

ワクチン義務化の行き詰まり:ワクチン接種の義務化は効果があるのか?【アメリカのコロナ事情Vol.13】

感染力の高い変異株が出現した。デルタ株よりも変異のスピードが速い。ワクチンを打って、オミクロンに備えよ!・・・といったメッセージが、バイデン政権からは出されています。

未知の変異株については、もちろん注視が必要です。しかし、あれだけ大騒ぎされたデルタ株は感染力は強かったものの、症状は従来型に比べれば軽症で済む傾向と言われていますし、”デルタ株よりも怖い”と夏頃騒がれたミュー株は、”アメリカに上陸”と報じられた後は、メディアにほとんど取り上げられることもありませんでした。ミュー株に関しての記事は、10月に入って、”あの人(変異株)は今”的な扱いで振り返った記事があったくらいです。ちなみに、ミュー株がアメリカで猛威を震えなかったのは、デルタ株が優位にあったからだと言います。そして、優位になる変異株はあくまでも感染力の強さであり、人間に与えるダメージの大きさではないということも言われていました。

オミクロン株については、専門家らがその脅威についてまだ明らかにできていない段階です。世界的には依然としてデルタ株が優位であるため、ミュー株と同じことが起こる(デルタ株の優位性が変わらず、新しい変異が広まらない)可能性もゼロではありません。にもかかわらず、”ワクチン接種圧”を高めるのは、今回も大した脅威にならなければ、ワクチン接種が進まないため、先にプッシュしておくという作戦なのでしょうか。

バイデン政権は、オミクロン株が出現したという南アフリカと周辺国からの入国を制限することを、あっという間に決定し、実行しました。トランプ大統領が最初に感染拡大国からの入国に制限した時、「人種差別的な措置だ!」と大騒ぎした人たちとは思えない決断力の速さです。もちろん、対応の速さは、感染を防ぐ上では重要であることは否定することのできない事実ですが、これまでのファウチ博士やバイデン政権の動きを見てきた者としては、どうしても勘繰ってしまいます。

ちなみに、バイデン政権は、トランプ大統領の制限措置との違いを次のように説明しています。

バイデン政権が導入した最新ルールは、科学的指針に沿ったもの。新型コロナの新たな変異について研究する時間を稼ぐために、拡散を遅らせる方法として、南アフリカをはじめとする数カ国からの渡航制限を行います。(Biden's South Africa travel ban compared to Trump COVID restrictions he denounced)

・・・トランプ大統領をはじめ、これまで渡航制限を行ってきた各国政府の目的は、まさにこれ(可能な限りの対策を取るための時間を稼ぐ)だったと思うのですが、今さら・・・?

そして、この政策は、南米でミュー株が出現した際の、バイデン政権の対応と大きく異なります。陸続きで入国しやすいメキシコを経由の南米からの不法移民はコントロール不能に陥るほど制限を設けず、入国後もある意味、野放しにしていたにもかかわらず、空路でしか入国できない、つまり感染者の隔離等のコントロールがしやすいアフリカからの正式な手続きをした上での訪問者は、速攻で拒否しているのです。(*野放し:検査が陽性でも、バイデン政権下では、不法入国者の隔離が禁止されていたため、行方不明になる陽性者がたくさんいた)

以前の発言、政策が間違えだったとわかったので、方針を変えるというなら、その説明が必要です。ただでさえ、信用力をどんどん失っている政権なのですから。

そういうこともあり、私はこれは印象操作ではないかと邪推しています。”即座に対策を行わなければならない緊急事態”という雰囲気を醸し出せば、ワクチン接種圧をかけることができます。そして、これは何もバイデン政権やファウチ博士らに対する不信感からだけで、そのように考えるのではありません。出現地とされている南アフリカではもっと冷静な対応がとられているからです。

変異発見の南アの医師:「今のところ症状は軽度のようだ」

南アフリカ医師会の会長であり、オミクロン株を最初に発見した、アンジェリーク・クッツェ(Angelique Coetzee)医師は、「これまでに受診した患者の症状は "極めて軽度 "です」と、BBCの取材に対して答えています(CNBCによる報道)。11月18日頃から、世界的に流行しているウイルスの中でも最も毒性の強いデルタ型とは若干異なる症状を呈する患者を診るようになったと言います。

「この患者は33歳くらいの男性。診察に来る数日前から、疲労感があり、体の痛みや頭痛もあると言っていました。その患者さんは、喉の痛みはなく、どちらかというと『喉がひりひりする』と言っていましたが、咳や味覚・嗅覚の喪失など、以前のコロナウイルスに見られた症状はありませんでした」。

この男性患者にPCR検査したところ、本人も家族も陽性。その日のうちにデルタ型とは異なる同じような症状を呈する患者が増えてきたため、クッツェ医師がメンバーを務める南アフリカのワクチン諮問委員会に警鐘を鳴らしたと言います。ただし、「これらは極めて軽度の症例です。私たちは誰も入院させていませんし、他の同僚にも聞いてみましたが、彼らも同じことを言っていました」。

WHOは、今回の亜種が診断、治療、ワクチンにどのような影響を与えるかを理解するには数週間かかるとしています。先程のクッツェ医師も、ガーディアン紙に対し、「感染力が強いのかもしれませんが、今のところ私たちが目にしているケースは極めて軽度です」という発言の後に、「2週間後には違う意見になっているかもしれませんが、これが私たちが見ている状況です」と付け足しています(ビジネスインサイダー誌)。

個人的には、この最後の一言は、現在のステイタスが調査中という変異株に対するコメントとして、誠実さを感じました。というのも、今回、各国が渡航制限を出したのが、サンクスギビングの休暇中ということもあり、南アにきていた多くの観光客は大混乱。観光客が最も多くなると言われるクリスマスシーズンを前に、観光客が見込めなくなるというのは、回復を目指していたであろう南アの観光業としては大打撃だからです。南アの観光業は、昨年10月時点で、雇用全体の1割近くにのぼる120万人の雇用に影響がでていると言われていました。自国の経済のみを優先しての”オミクロンは軽症”発言の可能性も考えられますが、ここで「(詳細のリサーチ結果が出てくる)2週間後には、見解が変わっているかもしれない」ことにあえて触れています。現場の医師として患者を診察する彼女たちには、確かに軽症に見えるのだと思います。

オミクロンはワクチン義務化の追い風になるか?

画像1

アメリカのワクチン接種完了者の割合は、11月23日時点で59.1%です。アメリカで同割合が50%を超えたのが7月22日でしたが、国民の半数のワクチン接種が完了した時点で接種スピードは鈍化し、その後4ヶ月の間、デルタ株による感染爆発が起こったにもかかわらず、伸び率はわずか9.1%にとどまりました。

画像2

ワクチン義務化はこの頑固な(笑)40%を接種させようと導入したものですが、アメリカの憲法上、バイデン政権(連邦政府)には、国民にワクチンを矯正する権力は与えられておらず、”補助金”や”仕事””契約”等、連邦政府の権力を及ぼすことができるあらゆる方面(病院関係、連邦政府職員や、取引業者等)で、義務化を導入してきました。それでも足りないと、労働安全衛生局(OSHA)を介した大企業を対象とした義務化を導入しようとしたところ、米国第5巡回区控訴裁判所に義務化を凍結されてしまいました。

連邦裁、ワクチン義務化凍結判決、次のステージへ【VS コロナファシズム(2)】

メディアでよく比較される、ワクチン義務化を推進するカリフォルニア州と、義務化を禁止したフロリダ州ですが、ワクチン接種完了者の割合は、前者が62.4%、後者が60.7%と、この2つの州を比べたときの義務化の効果は1.7%。この数字をそのまま全米に当てはめることはできませんが、義務化により接種率が抜群に上がるということは期待できないでしょう。

■ワクチン接種の義務化は効果があるのか?【アメリカのコロナ事情Vol.13】

実際のところ、ニューヨーク州やカリフォルニア州等、ワクチン接種義務化を導入したところ(リベラル州)では、激しい反対デモも起きていて、必ずしもスムーズに導入ができているとはいえないようです。さらに、従来はリベラル派を指示するBMLですが、ワクチン接種に関しては、タスキギー事件等の記憶が残る、アフリカ系アメリカ人が強く反発していることも、バイデン政権が苦戦している一因になっているように思います。

■アフリカ系アメリカ人はなぜワクチンを拒否するのか?:タスキギー事件(1

メイン・ターゲットを再びブースターに変更?

バイデン政権としては、裁判所で闘っているワクチン接種義務化訴訟についても、積極的に対応していくつもりでしょうけれども、実のところ、これ以上の義務化の推進は無理だと思っているのではないかという気もします。それは、バイデン政権が11月19日、全成人対象とした、ブースター接種を拡大したからです。頑固な40%への対策は取りつつも、すでにワクチン接種をしている60%への追加接種と、その子どもへの接種を推進した方が、合計接種数をあげやすくなります。陰謀論?いえいえ、バイデン大統領が本日(11月29日)、発表した、オミクロン・バリアントに関するコメントを聞いたら、この人たちは、とにかくワクチンを広めたいんだなとしみじみと思います。アメリカ人がオミクロンを正しく恐れるための、3つのメッセージとしたスピーチなのですが、結局「ワクチン打て」しか記憶に残りません。ただ、このメッセージの中でも、接種完了者とその子どもに対するメッセージの方がより強調されているような印象を受けましたから、メインのターゲットがシフトしたのかもしれません。このスピーチはある意味おもしろかったので、別のコラムでシェアさせていただきます。

WHO、ワクチンだけに頼らないよう警告!?

WHOのテドロス事務局長は11月24日、各国政府に対し、新型コロナの感染拡大に対してワクチンだけに頼らないよう警告WHO Warn Governments Not to Rely on Vaccines Alone to Tackle Rising Covid-19 Rates)しています。実際、ワクチンは唯一の対策ではありません。イベルメクチンをはじめ、なぜかCDCやFDAが認めないコロナ治療薬もあれば、FDAがEUAを出した治療薬もあります。オミクロン株はその変異の仕方から、ブレイクスルー感染の予測もある中、なぜ、ワクチンばかりを推すのでしょうか?

あのテドロスだって、「ワクチンだけに頼らないように」っと言っているのに、と思い、もう一度、このビデオを見てみたところ、なんとなくスピーチがブツブツカットされた感があります。最初に見たのが移動中で、耳を傾けただけでしたので、記憶が確かではないのですが、もう少し何か言っていたような???この編集だと、タイトルがちょっと合わない気がしましたので、アップロード後、動画に編集を加えたりしたのではないかとも思うのですが、ここは分からずじまいです。

***

余談ですが、未知の変異株に対して、渡航制限は必要な措置とは思いますが、詳細がわかり次第、変異株の実態にあった対応に変更するか、または、渡航制限によるダメージを補填できるような経済支援が必要だと思います。2年間にわたるパンデミックで、どの国も余裕が無くなってきている中、”正直者がバカを見る”空気を出してしまうと、今後、新たな変異株を発見しても、隠蔽してしまう国が出てきてしまうかもしれないからです。オミクロンが、クッツェ医師の見立て通り、”感染力は高いが軽症”である変異株でありますように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?