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連邦裁、ワクチン義務化凍結判決、次のステージへ【VS コロナファシズム(2)】

連邦控訴裁判所、ワクチン義務化の凍結を再確認

連邦裁、ワクチン義務化一時停止【VS コロナファシズム(1)】の続編です。

米国第5巡回区控訴裁判所は11月12日、バイデン政権のワクチン義務化を凍結するという以前の決定を再確認し、労働安全衛生局(OSHA)が発行したワクチン義務化には”致命的な欠陥”があり、それは”過大な範囲”と”過小な範囲”の両方がある”と、凍結理由を説明しました。

これまでの流れ:バイデン政権は、いくつかの分野に分けて、ワクチン接種を義務づける大統領令を出しています。本件は、大企業を対象としたワクチン義務化に対する裁判です。バイデン 政権は、大統領命令を出していたものの、肝心のルールについては労働安全衛生局(OSHA)が出すとし、1月4日という期限だけ設けられたものの、詳細を発表していないことに非難も起こっていました(ギリギリまで出さないことで、裁判ができないようにしたという説も)。          テキサス州は、州知事令により、ワクチン義務化禁止をすると同時、第5巡回控訴裁判所に提訴。労働安全衛生局(OSHA)が「ワクチン接種とPCR検査に関する緊急暫定基準(ETS)」を11月5日に発表し、連邦控訴裁判所が11月6日、一時的な凍結を発表しました。

第5巡回区控訴裁判所が6日に発表していたのは、100人以上の従業員を抱える雇用主に対し、OSHA規則(従業員がコロナのワクチン接種を完了させるか、定期的なPCR検査を受けマスクの着用について確認することを義務付ける)を一時的に凍結することのみでした。今回発表された、22ページに及ぶ意見書により、その理由を説明された形です。

連邦控訴裁判所は、OSHAが法律上の権限を超えている可能性が高いため、憲法上の問題があり、また、このワクチン接種義務化は、”職場(と労働者)の違いをほとんど考慮していない、画一的な鉄槌”であるとしています。

なぜOSHAを通した義務化なのか?

OSHAについては、過去記事をご覧ください。私の理解では、OSHAでは、仕事中の作業が原因で、病気やケガを負うことがないように企業側に、従業員の健康と安全の担保できる経営を求めたものだと思います。今回、なぜバイデン政権がこのOSHA経由で、ワクチン義務化を企業に求めたのか?といえば、単純に連邦政府にその権限がないからです。

日本と違い”合衆国”であるアメリカは、州の権限が大きくなっています。もともとイギリスの植民地だったアメリカは、連邦政府が強い権力を持たないような仕組みづくりをしたためです。

バイデン政権が義務化の対象として、行政機関と、連邦政府との契約がある企業を指定したのは、憲法違反を指摘されないような言い訳をしやすかったからです。続いて、連邦政府が動かすことのできるOSHAを通した義務化によって、より広範囲におけるコントールを実現しようとしました。

一般的に、リベラルは憲法を可能な限り過大解釈する方向にあり、保守派は憲法の精神に忠実であろうとします。義務化の反対を訴えていたテキサス州をはじめとする原告団の主張は、”OSHAに任された従業員の健康・安全の中に、パンデミックの抑制は入っていない”としています。バイデン政権の主張ですと、原発で働く職員を被曝からだけでなく、パンデミックから守れと、東京電力に命令を出すようなものです。

「ワクチンで感染は防げない(重症化、死亡リスクを下げるために接種は必要)」と、CDCのワレンスキー博士も言及しているので、感染は100%防げるわけではないが、従業員にワクチンを矯正して、パンデミックから守れ!というのも、かなりのトンチンカンです。感染が防げない以上、マスク着用を強要するならば、接種の有無は関係なしで、一律で行わなければ意味がないと思います。

裁判所が指摘する”致命的な欠陥”

裁判所が指摘する”致命的な欠陥”は、他にも、このワクチン義務化が政府の宣告としては珍しく、包括的なものとなっており、ほぼすべての産業における従業員に適用される点をあげています。例えば、1人で夜勤を担当する警備員が直面するリスクと、倉庫で肩を並べて働く食肉加工業者が直面するリスクの明らかに異なりますが、同政策ではリスクを同様に扱っています。そのため前者は過剰、後者は過小となるのです。

99人以上の同僚を持つ従業員を職場の”重大な危険”から救うと称しながら、98人以下の同僚を持つ従業員を全く同じ脅威から守ろうとしない点も、このラインに合理的な説明がありません。

バイデン政権の反撃と、今後の裁判の行方

とはいえ、ここで、ワクチン義務化が完全に凍結されたわけではありません。テキサス州が所属する、第5巡回区控訴裁判所の判決は、早ければ今週にも解消される可能性があると言います。それは、バイデン政権が各巡回裁判所に出されている訴訟を統合するよう要請したためです。

解説記事がありませんでしたので、関連記事からの予測なのですが、巡回裁判所は法的先例を設定しているため、非常に影響力があると言われています。そのためこの先例が作られてしまうことを阻止したかったのではないでしょうか?(法律専門ではありませんので、あくまで素人予想です。)アメリカは地域の裁判所によって、イデオロギー(保守派、リベラル派)の違いから、全く違う判決ができることがあります。抽選で自分たちに有利な裁判所が選ばれるかどうか、わかりませんが、ワクチン義務化を完全に違憲扱いしている第5巡回裁判所よりはマシと思ったのかもしれませんし、このやり方の方が”イロイロ”できるかもと思ったのかもしれません。

ちなみに先週までに、OSHA関連の訴訟(大企業へのワクチン義務化)を起こしている巡回裁判所は、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第11、コロンビア特別区だそうです。16日に行われた抽選により、第6巡回区裁判所が審理を行うことが決定しました。

第6巡回区控訴裁判所とは?

オハイオ州シンシナティを拠点とする第6巡回区控訴裁判所は、保守派寄りで知られており、ほとんどの裁判官が共和党の大統領によって任命されています。ドナルド・トランプ大統領が6人、ジョージ・W・ブッシュ大統領が5人、民主党のビル・クリントン大統領とバラク・オバマ大統領が計5人を任命しています。(NPRニュースより

ただし、共和党大統領が指名したからといって、必ずしも、共和党側が有利になる判決を出すわけではありません。憲法解釈については、本来、同じ保守(憲法を厳密に解釈)の立場にいるはずなのですが、昨年から、保守派でありながら、リベラル的な価値観に基づいた、憲法を拡大解釈する判事も出てきました。

今後、第5巡回区が出した停止を継続、または、解除するかどうかは、第6巡回区が決めることになります。しかし、第6巡回区が迅速に判決を下したとしても、この判決が上訴される可能性は高く、訴訟は数週間から数ヶ月間続く可能性があります。最終的には、この訴訟は最高裁に持ち込まれる可能性もあります。最高裁は、保守派判事が多数を占めているにもかかわらず、ここ1年間の判決はかなり左寄りと言われています。

大雑把に流れをまとめると下記のようなフローになります。

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これはあくまで大企業を対象としたワクチン義務化に対する反対の動きです。ワクチン義務化が対象者ごと(連邦政府職員・契約者、医療従事者、学校関係・・・)に発令されているため、反対の動きもそれぞれで異なります。医療従事者の件では、”自然免疫がある職員は打つ必要がない”路線で押しているようです。

裁判にいろいろな意味で強いリベラル(共産党)派

アメリカの裁判が本当に謎なのは、同じ証拠、同じ事実を使っても、裁判官の憲法解釈により、全く真逆の判決が出てしまうことです。この1年間、保守派は裁判の弱さを露呈してしまっています。その原因として考えられるのが、過大解釈しようとする側の方がより強い”戦略”を持つからではないか思います。

ルール通り、文字通りの解釈をしている場合、「だって、憲法でそう書いてあるから」と思いがちです。一方、過大解釈する側は、同じ文面から、どのような解釈を行えば、自分の正当性を主張できるか?というのを念入りに検討します。論理武装を完璧に整えてくるので、油断するとやられます。ちなみに、”論理武装”と書きましたが、展開する論理は破綻していても問題ありません。この部分はKKらに好き勝手やられている日本人と似たようなことがアメリカでも起こっている感じです。メディアやテック企業を使った世論誘導を行う点でも、やり口は同じです。ポリコレと絡めて正当化してきます。現在のアメリカが怖いのは、お仲間の活動家も使い、時には”暴力的なこと”も起こることです。1つの裁判に、チームの総合力で挑んでくるため、強いのだと思います(それが”裁判”かどうかと言うのは、また別の話かと思いますが・・・)。

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