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ブースター推進国でオミクロン感染者増!?【文系編集者の謎解き】

はじめに:アフリカ諸国とイスラエルのデータ比較

新規感染者数と死亡者数

今年1月に下記のような記事に取り組みました。
アフリカのコロナ政策:ワクチン接種率と新規感染者数の関係(2022年1月)
”オミクロン in ボツワナの3つの謎”から検証する、ワクチン接種とオミクロンの関係。

簡単にまとめると、オミクロン感染拡大をめぐる科学の権威たちのストーリーは、”ワクチン接種率の低いアフリカで、感染力が高い変異ができてしまった。アフリカを救え。全ての人に平等にワクチンを!”というものでした。しかし、アフリカ諸国よりも、欧米諸国+イスラエルの感染者数の方が急増してますよ・・・というのが前回までのデータが示すストーリーでした。

私は科学者ではないので、科学的なことは申し上げられないのですが、「科学者が科学に基づいて話しているのだ」と言っていることを、本当かどうか、文系編集者が謎解きに挑戦します!というのがこの記事の趣旨です。

下記は、ワクチン接種・ブースター接種の進むイスラエルと、アフリカ諸国の2022年2月1日時点でのデータです。前回同様、アフリカの全ての国を入力しているのですが、0に近い位置のところに、多くの国が集中しているため、重なって名前が見えなくなっています。

Our World in Data

相変わらず、イスラエルの感染者数の高さが目立ちます。ただし、死亡者数は、新規感染者数ほどは増えていないようなので、軽症のケースで済んでいる、もしくはワクチンが重症化を防ぐ効果はあるのかもしれません。

ワクチン接種完了者数とブースター接種者数

では、Our World in Data上にある各国の最新データでみると、ワクチン接種完了者(2回接種済み)と、ブースター接種者は下記の通りです。こちらのデータも全てのアフリカの国名を入力しています。

Our World in Data

接種完了者が多い国で感染者数、死者数が多いのはイスラエル、チュニジアのみです。ところが気になるのが、ブースター接種の方です。世界的にダントツトップのイスラエルと、アフリカではダントツトップのチュニジアで、感染者数が増えています。また、イスラエルをみると、ワクチンが重症化を防ぐ効果が出ているのかんとも思うのですが、チュニジアはイスラエルほど重症化を押さえ切れていないようです。

世界のデータで見るコロナ

ブースター接種と新規感染者数

Our World in Data

念のため、接種完了者(2回接種)の割合ではなく、ブースター(3回目)接種者数のデータです。世界にはこんなにブースター接種が進んでいる国もあルのかと、かなり驚きました。
このグラフですと、わかりにくいかと思いますので、ブースター接種が50%以上進んでいる国の感染者数を見ていきたいと思います。”傾向”を調べたいので、ざっくりと2月1日時点で最多30に入っている国を調べました。

Our World in Data

ブースター接種を50%済ませた、17か国のうち、7か国の100万人あたりの新規感染者数が、全世界中上位30か国に入っていたことになります。感染者数のランキングは数日で変わることもありますので、逆からの検証もしてみたいと思います。

100万人あたりの新規感染者数の最多20か国のブースター接種率です。
色はそれぞれ

  • オレンジ:50%以上:4か国

  • 黄:40%台:5か国

  • 白:40%未満:8か国(ただし、3か国は39%台)

  • グレー:データなし:3か国

Our World in Data

データはOur World in Dataが持っているそれぞれの国の最新となります。1月30日前後です。

ブースター接種が50%以上進んでいる国でも、感染者数は世界最多20に4か国入っています。約40%以上という括りで見ると、最多20の半分以上を占めることになります。

ブースター推進国ほど、新規感染者数が増えた!?4つの仮説

これらのデータを見ると、ブースター接種がオミクロンに効果があるというのは、どうしても信じられません。むしろ、ブースター接種を進めた国ほど、新規感染者数が増えているのではないかと思います。

陰謀論っぽく聞こえるかもしれませんが、昨年5月に発表された大阪大学の研究、そして、オミクロンの特徴感染者数を調べる検査の問題点を合わせると、ブースター接種を進めた国ほど、新規感染者数が増えた、4つの仮説でそれぞれ説明できそうな気がします。。

これまでに分かっていること
A)感染増強抗体:
新型コロナに感染すると、感染を防御する中和抗体だけでなく、感染性を高める感染増強抗体が産生されます。詳細は次章をご覧ください。

  • 新型コロナウイルスの感染性が高まる

  • 重症化する場合がある

  • 最近の変異株には、中和抗体が十分作用しない株も存在中和抗体の防御効果より、感染増強抗体の増悪効果が高くなってしまう可能性

  • 感染やワクチンの接種で感染増強抗体の産生が高まる可能性

B)オミクロンの症状:
ここで現在主流になっているというオミクロン株の特徴についてですが、ほとんどのケースが軽症と言われています。無症状に近いアレルギー症状のケースもあるようで、コロナ感染の自覚がない人も少なくないようです。
オミクロン株の症状(ZOE COVID調査):最新情報を広める重要性

C)陽性者数を感染者数としている統計の問題点:
これはパンデミック当初から言われていたことですが、コロナ検査で陽性だからといって、必ずしも感染者というわけではありません。CT値を高く設定したPCR検査は、かなりの割合で偽陽性を出していたとも言われています。

■【アメリカのコロナ事情Vol.7】ミスインフォデミック(2)PCRの闇①        ■【アメリカのコロナ事情Vol.8】ミスインフォデミック(3)PCRの闇② 

一方、感染者が100%検査を受けるわけではありません。無症状や軽症の場合、自身がコロナ感染していることを通常は疑わないものだと思います。

ブースター接種率が高い国でなぜ新規感染者数が多いのか?について、上記の3つを組み合わせた(もしくは1つを選択した)場合に考えられる理由は下記の4つです。

  1. A)+ B):
    ブースター接種を行った多くのケースで、ワクチンによって体内にできた感染増強抗体により、感染しやすいオミクロンにより感染しやすくなった。

  2. A)+ B)+ C):
    ブースター接種により、感染増強抗体が増加したことで、重症化した。ただし、オミクロンはコロナを疑わないほどの軽症であることも多く、それよりは症状の重い、”コロナを自覚して、検査を受けてみようと思うくらいの軽症”になった検査数が多くなったことで、結果的に陽性者数が多くなった

  3. C):
    ブースター接種を受ける人は、受けない人よりも、コロナ感染を心配している傾向にある
    (重症化リスクがある人、絶対に感染したくないと考えている人等)と考えると、特に症状がない場合でも、濃厚接触者の疑いがある際等に、検査を受ける確率が高くなる無症状での検査数が増えるため、偽陽性の確率も上がり、結果的に陽性者数が多くなる

  4. C):
    ブースター接種が進んでいる国は、厳しいコロナ政策を導入
    している可能性が高く、無症状でのコロナ検査も多く実施する傾向にある。この場合、無症状での検査数が増えるため、偽陽性の確率も上がり、結果的に陽性者数が多くなる。

あり得ないことではないと思いませんか?

ご参考:大阪大学の研究

本件と関係のあるポイント

  • 新型コロナに感染すると、感染を防御する中和抗体だけでなく、感染性を高める感染増強抗体が産生される。感染増強抗体が産生されると、中和抗体の作用が減弱する

  • ウイルスに対する抗体によって感染が増悪する現象を抗体依存性感染増強(ADE)と言う。

  • 最初の感染によって産生された抗体によって重症化する場合がある

  • パイクタンパク質の特定の部位に感染増強抗体が結合すると、スパイクタンパク質の構造が変化し、新型コロナウイルスの感染性が高まる

  • 最近の変異株には、中和抗体の認識部位に変異があり中和抗体が十分作用しない株も存在するため、中和抗体の防御効果より、感染増強抗体の増悪効果が高くなってしまう可能性も考えられる。

  • 既に感染増強抗体を持っている人では、感染やワクチンの接種で感染増強抗体の産生が高まる可能性が考えられる。

そして、この研究で最も重要な部分が下記です。

  • 感染増強抗体の認識部位は現行のワクチン抗原にも含まれている従って、感染増強抗体の産生を誘導しないワクチン抗原を開発することが望ましい。本研究で明らかになった感染増強抗体の認識部位を改変することで、感染増強抗体の産生を誘導しないワクチン開発が可能になると期待される。

ご参考:

概要:
大阪大学の荒瀬尚教授を中心とした微生物病研究所・蛋白質研究所・免疫学フロンティア研究センター・感染症総合教育研究拠点・医学系研究科等から成る研究グループは、COVID-19患者由来の抗体を解析することにより、新型コロナウイルスに感染すると感染を防御する中和抗体ばかりでなく、感染性を高める感染増強抗体が産生されていることを初めて発見した。
研究の背景:
(前略)実際、最近の様々な変異株が中和抗体の認識部位に変異を獲得したことから、抗体がウイルスの排除に非常に重要な機能を担っているために、ウイルスが中和抗体に認識されない変異を獲得したと考えられる。(中略)
前述の通り抗体はウイルス感染防御に重要な機能を担う一方で、ウイルスに対する抗体によって感染が増悪する現象が知られており、その現象は抗体依存性感染増強(ADE)と言われている。ADEはデングウイルス等で知られており、一度デングウイルスに感染した後、異なる型のデングウイルスに感染すると、最初の感染によって産生された抗体によって重症化する場合がある。(後略)
本研究の考察と意義:
本研究により、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の特定の部位に感染増強抗体が結合するとスパイクタンパク質の構造が変化して新型コロナウイルスの感染性が高まることが明らかになった。
感染増強抗体が産生されると、中和抗体の感染を防ぐ作用が減弱することが判明した。実際、重症患者では感染増強抗体の産生が高い傾向があり、感染増強抗体の産生が重症化に関与している可能性もある。しかし、実際に感染増強抗体が体内で感染増悪に関与しているかはまだ不明であり、今後の詳細な解析が必要である。
これまで機能が不明であったNTDがスパイクタンパク質の機能を制御している重要な領域であることが明らかになった。実際、最近の多くの変異株にはNTDにも多くの変異が認められるので、RBDの機能に影響を与えている可能性がある。従って、今までは、主にRBDの機能のみが注目されてきたが、NTDを標的にした感染制御法の開発も重要であると考えられる。
最近の変異株には、中和抗体の認識部位に変異があり中和抗体が十分作用しない株も存在するため、中和抗体の防御効果より、感染増強抗体の増悪効果が高くなってしまう可能性も考えられる。
非感染者において低レベルの感染増強抗体を持っている人が明らかになった。既に感染増強抗体を持っている人では、感染やワクチンの接種で感染増強抗体の産生が高まる可能性が考えられる。
感染増強抗体を検査することで、重症化しやすい人を調べることが可能になると期待される。また、重症化がどのように進むのか明らかになる可能性がある。重症患者の治療に対しても新たな検査指標になる可能性がある。
感染増強抗体の認識部位は現行のワクチン抗原にも含まれている従って、感染増強抗体の産生を誘導しないワクチン抗原を開発することが望ましい。本研究で明らかになった感染増強抗体の認識部位を改変することで、感染増強抗体の産生を誘導しないワクチン開発が可能になると期待される。

https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2021/20210521_3

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