アフリカのコロナ政策:ワクチン接種率と新規感染者数の関係
アフリカの感染拡大国と、ワクチン接種を含むコロナ政策
リサーチのきっかけ:ワクチン接種率が高い国の方が感染者が多い?
イスラエルとアフリカ諸国のデータを見ていて、気になったことがありました。アフリカの国としては、感染者が拡大している国、カーボベルデ共和国、チュニジアのコロナワクチン接種完了率がアフリカ内では高い水準にあるのです。そこでオミクロンが拡大した各国(上記2カ国と、サントメ・プリンシペ、ガボン、南アフリカ、モーリシャス、モロッコ)の政策について、アメリカの大使館情報を見てみました。政策の違いにかかわらず、接種率の高いチュニジア、モーリシャス、モロッコ以外の国では、オミクロン株のピークは見えているようです。
コロナ政策から想像する、アフリカの国の日常生活
実は単純にワクチン接種と感染者数の関連について調べようと始めたリサーチだったのですが、アフリカのコロナ政策を見ていると、その国の日常が垣間見れるようで、おもしろい!屋内の人数制限を1000人(!)までとしたり、ビーチでのピクニックを禁止したり・・・。先進国が”左”に倣え的な政策になっているのに比べて、同じ”ソーシャルディスタンシング”に関連した政策でも、各国の事情を反映させたと思われる政策を行っていて、とても興味深いものでした。
アフリカは、多くの日本人にとって遠い国ですので、”アフリカ”とひとまとめにしがちですが、それぞれ共通点もありつつも、全く違うという点もたくさんあります。コロナ政策から、各国の普段の生活を妄想してみるというのがなかなか楽しくて、コロナ後に行ってみたい国のリストを作ったほどです。ぜひ皆さんも妄想を楽しんでみてください。
中国のワクチン外交、一帯一路戦略
そして、最後に、アフリカのワクチン政策を見ていると、中国の動きがとても気になりました。「あれって効果がないって、セイシェルが言ってなかったっけ(モゴモゴモゴ)」とも思うのですが、アフリカの国によっては、最近に至るまで、中国からのワクチン供給を受け取っていて、かつ、その後、一帯一路の協定を結んでいます。詳細は該当国のところで、紹介しています。ぜひこの点も注視していただければと思います。
オミクロン株拡大のピークが見えた国
カーボベルデ共和国:ワクチン完了者48.2%
カーボベルデは、北西アフリカの西沖合いに位置するバルラヴェント諸島とソタヴェント諸島からなる共和国。オミクロン株によると思われる感染拡大が一時急増していたカーボベルデのワクチン完了者は、48.2%(Google情報、1月14日)と、アフリカでは高めです。コロナ感染による獲得免疫や、検査での陰性結果の代替が許可されているものの、ワクチンパスポート的なものが導入されていることがその要因でしょう。営業時間の制限がありますが、バーやレストランは深夜0時、クラブやディスコは午前4時までと、日本人視点では緩やかな印象を受けます。夜型の方が多いのでしょうか? 同国の出身者による紹介記事によると、大勢で集うことが好きな人たちが多く、カーニバルが文化としてあらゆる世代に根づいているということでした。
未成年に対する規制が、親同伴とそうでない場合で、異なる点も興味深いです。
さて、本題です。
新規感染者と、ワクチン接種回数の推移を比べてみると、イスラエルと同じように、接種回数が増えて、デルタ株の拡大を抑制できたものの(昨年6月6日頃)、その後、接種回数は増えていても、オミクロン株での感染はあまり防げていないようです。ワクチン接種率が高まると、抑制はできるものの、リバウンド率が上がるのでは?と思えてしまいます。
ワクチン接種のタイムラインをみると、2021年3月・4月までにターゲット層に必要なワクチンが届きそれを計画計画的に接種していったことが伺えます。昨年末までには、ターゲット層に向けた接種は完了しているようです。
サントメ・プリンシペ:ワクチン完了者28%
サントメ・プリンシペは、サントメ州(島)とプリンシペ州(島)といくつかの島々で構成された国で、ワクチン完了率は28%(Google情報1月17日)。
オミクロン株の拡大までは、そこまで大きな”波”はなかったようです。ただし、オミクロンはいったんピークが見えたようで、現在は急下降しています。
コロナ対策政策としては、サントメ州に比べ、プリンシペ州の方が制限が厳しいようです。ある程度の日常生活を保った上で、対策を入れ込んでいくような前者に比べ、後者は教育がストップされた上で、戒厳令まで出ています。
興味深いのは、同じ国でありながら、宗教活動に関する制限が異なることです。サントメは人数制限があるものの、活動自体の制限はありませんが、プリンシペでは宗教活動自体が禁止されています。
ワクチン政策に関しては、サントメ・プリンシペは実は、9月まではワクチン接種が順調に進んでいたようです。COVAXの他に、ポルトガル、そして中国がワクチン提供を行ったようです。
ポルトガルは、アフリカを含め、ポルトガル語を話す諸国のコロナ支援を決めており、その一環として、サントメ・プリンシペにも支援を行ったようです。中国は・・・というと、昨年12月12日の新華社の記事によると、”中国とサントメ・プリンシペ、「一帯一路」共同建設了解覚書に調印”と、着々と、コロナ支援を通じたアフリカへの”浸透”戦略を進めています。一帯一路の過去の事例では、発展途上国の港湾を担保に、その国が返せないほどのお金を貸し付け、支払いが滞ると、港湾を抑える・・・ということも。国内の各種問題が過去最悪な状態になっている中国ですが、一帯一路は静かに、かつ、ゴリゴリ進められているということは、日本・アメリカは注視すべきことかと思います。
話をワクチンに戻し、9月までにはWHOが設定した10%をクリアできたようですが、”12月までに40%”の目標は達成できていないようです。下記のグラフから、おそらくワクチンの供給がいつ届くか?ということによるのだと思いますが、9月末の達成は、かなりラストスパートを聞かせたようです。
なお、アメリカの大使館は、サントメ・プリンシペにはなく、ガボン共和国にある大使館が兼任しているようです。サントメ・プリンシペは大西洋に浮かぶ島々、ガボン共和国はアフリカ大陸の西海岸に位置します。
経済的な繋がりがあるのか、新規感染者数の推移を見ると、同じような時期に感染が広がったようです。
ガボン:ワクチン完了者:7.8%
ガボンのアメリカ大使館のサイト上にあるガボンのコロナ対策です。同じページ内に今年1月19日にアップデートした情報が掲載されているのですが、ガボン独自の情報のところは、昨年の6月時点のまま、変更されていないようです。
罰金付きのかなり厳しい政策になっています。”車から降りたらすぐにマスク着用”ということですので、屋外でもマスク着用が義務になっているようです。
ワクチン接種未接種者は、昨年6月の時点で午後9時から朝5時まで外出禁止となっていますが、ワクチン接種率はびっくりするくらい伸びていません。12月15日時点での完了者が7.8%、1回目接種者が12月13日の9.9%から、15日には17.7%になっています(同期間の完了者の割合は変更なし)。本日までにはもう少し伸びているかもしれませんが、データの更新がありません。
接種率が伸びなかった理由は、下記かもしれません。
ガボン政府がワクチン未接種者に対する戒厳令を出した昨年の6月14日頃は、感染者が最も抑えられていた時期でした。その後、9月に波がきて最多となる感染者数を記録します。この2つのグラフだけを見ると、ワクチン接種が増えたら感染者数が増えたようにも見えますが、ガボンのワクチン完了者数は11月24日時点でも4.9%と、とても低いので、新規感染者数の増減にはあまり影響を与えていないものと思われます。
ただ、不思議なのは、先ほど1回目接種者が急に増えた昨年12月13日−15日というのが、9月の波が落ち着いた、感染者最少の時期にあるということです。
その後12月31日に、感染者数は過去最多を記録し、現在は急激に減っている最中であるようです。ファウチ博士的には、「1回目接種者が増えた日付の2週間後に、感染を抑制できたということは、ワクチンの効果だ」というかと思いますが、増えたとはいえ、1回接種者が17.7%、完了者7.8%。これくらいで抑え込めるなら、イスラエルやアメリカは一体どうなってるんだ?という疑問が生じます。
もう1つワクチン接種が進まなかった理由として考えられることーーガボン政府自身がそのように発言していることーーは、昨年9月23日にアメリカから寄贈されたファイザー社製ワクチンが届くまでは、中国製であるシノファームのワクチンが軸であったということです。
グリーク・レポーター(2021年11月26日付け)によると、ガボンは昨年11月に、ギリシャからも20万人分のコロナワクチンを受け取っています。同記事は、ギリシャのサイトですが、少し気になる点が2つあります。1つは、どのワクチンなのか?社名が書いていないことです。ギリシャの人はあまり拘らないのかといえば、そういうわけでもないようで、同じ記事内のガーナに対する支援では”アストラゼネカ製のコロナワクチン”を贈ったことを明らかにしています。ガボンに贈ったワクチンの社名を出さないことはかなり奇妙です。
もう1つは、ワクチンをアフリカに寄贈しているギリシャの狙いです。私はヨーロッパ情勢はあまりフォローできていないのですが、ギリシャは財政的にかなり問題があった・・・という記憶しかありません。どちらかといえば、支援を必要とするサイドではないのかと思い込んでいましたので、最初にこの記事をみたときにはかなりびっくりしました。
ただ、記事内にはギリシャがアフリカ支援を行う理由としては、コロナとは関係ない安全保障の問題が出てきます。もちろん、コロナは生物兵器だとすれば、安全保障の問題ですから、違和感のないことなのかもしれません。気になったのは、ワクチンを寄贈するセレモニーの記者会見で、”ガボンがギリシャの支援により、2022年から国連安全保障理事会の非常任理事国に選出された””ガーナは2022年1月1日から国連安全保障理事会のメンバーとなる国”とそれぞれの国で述べていることです。
アフリカの国を支援して、国際機関での忖度を期待という風にも読めてしまうのですが・・・。
話をワクチンに戻し、先ほどのユニセフのサイト記事によると、9月に寄贈されたワクチンをもとに、2021年末までにワクチン接種率を50%までに引き上げるというのがガボン政府の目標でした。11月にはギリシャから”何らかのコロナワクチン”を受け取っています。数は十分だったはずです。
しかし、12月15日時点での接種率データによると、この目標は全く達成できていないようです。・・・12月15日以降のデータ更新がないのは、期限である12月31日までに、この目標が達成できなさそうだということと、何か関係があるのでしょうか?
結局のところ、ワクチンの効果は、ガボンの感染者数には影響していないのではないかと思います。ここは少しモヤモヤ感が残りますが、同じような現象(ワクチン接種者が増えた後に、感染者が増える)がボツワナでも起こっていて、ボツワナはもっと謎が多いようですので、別記事で深堀したいと思います。
南アフリカ: ワクチン完了者:27.7%、治験開催国
南アフリカは、オミクロン株が発見された国ですが、その後も規制はレベル1のままだったようです。南アフリカの医師会は、「感染しやすいものの、軽症がほとんど」という見解でしたから、当然かもしれません。
ちょっと驚いたのが、規制緩和の後の、屋内、屋外に集まれる人の人数。屋内1000人、屋外2000人が上限です。屋内1000人は展示会等のことを指しているのかなと思いつつも、「コロナ前は一体何人集まってたの?」と、思わずひとり言。教会での礼拝等は今でも、全く問題ないということなのでしょう。
オミクロン株の出現により、世界中からシャットダウンされてしまった南アですが、すでに抑制できたようです。欧米をはじめとする国々の反応が行きすぎたったことは明らか。
ワクチン接種完了は27.7%(Googleコロナ情報、1月17日時点)と低かったことから、WHOを中心に”アフリカでのワクチン支援を行う必要性”を叫んでいましたが、南アフリカからすると、自国の医師団の話を聞かずに、過剰反応であった上、自国よりも感染が急拡大している国に対しては、「自分たちで対応できますよ(ほっといて)」という気持ちになっているのではないかと。
ここで忘れてはならないポイントが南アはもともとアストラゼネカの治験を行っていた国であり、ワクチン接種に当初は積極的だったということです。
これがアストラゼネカ製だけの問題かと言えば、モデルナも変異株に対応できるワクチン開発を行っている話が紹介されています。
つまり、昨年の2月中旬の時点で、すでに変異株への効果が薄いこと(ブレークスルー感染が起きうること)は、想定できていたわけです。にもかかわらず、デルタ株が拡大するアメリカで、ファウチ博士、CDCは”ワクチンを打てば日常生活が戻ってくる”キャンペーンを行い、アメリカに感染爆発をもたらしました。
”オミクロンよりもオリジナルに近い変異株で効果が薄い”という研究結果を出した国に対して、変異株対策のために、ワクチンを勧めるというのも・・・。
イベルメクチンの研究に対しても感じたことですが、”医療先進国”を自負する国々のアフリカやアジアの医療に対する”フィルター”というのは・・・。”科学に基づいた判断”を強調していますが、データよりもイメージ(偏見)に基づいた判断としか思えません。結局、その偏見のツケがどこにいっているのか?といえば、彼らの自国の国民です。医療リソースが自分たちよりも不十分な国で、感染拡大を抑制できている・・・その事実をまずは受け止めることが重要なのではないかと思います。
オミクロンの感染拡大中の国
チュニジア:ワクチン完了者51.8%
地中海に面した、チュニジアのワクチン接種完了率は51.8% と、アフリカの中では高めであり、ブースター接種も行われているようで、8.1%(Google情報、1月14日時点)。
デルタ株やオミクロン株による”波”があった国の1つで、アフリカの国の中では、感染が拡大した国の1つですので、ワクチン接種が進んだのかもしれません。アメリカ大使館の情報では、”徐々にワクチンパス的なものが必要な施設が増えている”ということでしたが、昨年12月22日に大統領令により、ワクチンパスの導入が開始されています。
アムネスティの情報によると、制限されるのは、レストラン、公共施設、その他の公共・民間職場を含む多くの場所や活動となっています。これに対して反対運動が1月8日に起こっています。
一方、チュニジア政府は1月18日、初回接種4,242人、2回目接種3,128人、ブースター3,868人、トラベルショット27人を含む、合計11,265人に対して大規模接種を行ったことも明らかにしています。
オミクロン株の拡大を受けた、政策としては、大勢で集まるような機会を一時的に制限し、ワクチン接種を急速に勧めることで、感染拡大を防ごうとしているようですが、まだ、抑制効果はグラフに現れていないようです。
ちなみに、オミクロン感染が広がったアフリカの国で、いまだピークが見えていない数少ない国の1つです。
モーリシャス:ワクチン完了者72.3%
”天国に一番近い島”で知られる、モーリシャスは、アフリカ各国比較のグラフでは、低い位置で推移するグループの1つ。
”市民は引き続き公共のビーチにアクセスできますが、ピクニックはできなくなりました”という規制は、普段はビーチでピクニックなのか、とモーリシャスの人の週末が想像できます。また、”イベント、社交場、スポーツジム、結婚式、葬儀の総人数の制限を100人から50人に変更”というのも、制限がなければ、例えば、結婚式や葬儀は一体何人くらい集まるのがモーリシャスでの標準なのだろう?と、なかなか気になります。
ワクチン接種完了者はイスラエルよりも多い72.3%です。外国人旅行者に対するルールからも、ワクチン重視であることがわかります。ワクチンパスのようなものも導入されており、パスがなければ屋内施設に入ることが難しいようです。
外国人が入国する際の、PCR検査の規定も独特です。入国前の感染だけでなく、移動中の感染の有無も確認したいということかと思います。
新規感染者数は、アフリカ全体のグラフでは見えない位置にありますので、前出のチュニジア、サントメ・プリンシペ、南アフリカとの比較で出しています。他の観光業をメインとする国と同様、モーリシャスにとって、観光客が安全に戻ってきてくれる国であることは、死活問題です。厳しいコロナ対策が奏功していたのか、昨年7月以前のモーリシャスは感染者をほとんど出していません。
感染者が急激に増加した時期を、グラフを拡大して確認してみると、7月3日を最後に、モーリシャスのそれ以前の状況に比べれば、感染状況が悪くなったままの状態であるといえます。この時期に一体何が起きたのでしょうか。
7月3日は時期的には、感染拡大したアフリカの国々がちょうど感染者数が増えていく時期でもあります。ただ、モーリシャスの場合、それ以前の感染拡大の”波”が起こっていないこともあり、デルタの時期だけなぜ?という疑問は生じます。
念のため、この時期のワクチン接種率を確認してみます。7月3日の2週間前(CD Cがワクチンの効果は2回接種の2週間後としているため)の6月20日ゴロは、下記のグラフの●のところになります。
これだけみると、接種率が上がるのに合わせて、感染が拡大したようにも見えてしまいます。ただ、9月4日をピークに減少していますから、その2週間前くらいの8月19日に50%を超えたことで、ようやく効果が出てきたという見方もできます。
モーリシャスがワクチン接種を開始したのは、5月12日。アフリカで最も早く開始したのが南アフリカと、モロッコで、2月19日ですが、アフリカ全体で見れば、モーリシャスも早く始めた国の1つといえます。その後、モーリシャスでワクチン接種が急速に推進できた理由は、厳しい義務化政策・・・というのは、アメリカ大使館の情報からもわかっていたことです。しかし、実際には、アメリカ大使館の情報よりもより厳しい政策が取られたようで、義務化に従わない場合の罰則には、5年の禁固刑が含まれていました。これに対し、アムネスティ・インターナショナルがモーリシャスのワクチン政策に注意を促す声明を出しています。
アムネスティが行きすぎたワクチン義務化に反対する声明を出したり、WHOが”任意接種”を推奨していたということは知りませんでした。義務化反対の運動をされる際には、このような世界的な動きについても反対する材料として使えそうです。
ここまで厳しくワクチン接種を推進してきたモーリシャスですが、昨年12月26日移行、再び感染拡大の方向にあるようです。ただし、昨年11月16日以降、死亡者は0ですので、ワクチンは重症化を防ぐ効果はあるということは言えそうです。
モロッコ:接種完了者62.6%
北アフリカに位置し、西は大西洋、北は地中海に面しているモロッコのワクチン接種完了者は62.6%(Googleコロナ情報、1月18日)。アフリカでは政情・治安が安定しているとみられているため、多くの欧米企業が進出していることも関係しているのかもしれません。
モロッコのワクチン政策で、特筆すべきは中国製のワクチンの工場があるということ。モロッコの製薬会社Sothemaが2021年7月、シノファームのBIBPワクチンを月間500万回分現地生産し始めると発表しました。そのため、モロッコで承認されているワクチンは中国のSinopharm BIBPのほか、ロシアのSputnik V、そしてアストラゼネカ社製ということです(Wikipediaのモロッコワクチンページの”タイムライン”の情報による)。
1月に第1回目が届いて以降、毎月のように、アストラゼネカ製とシノファーム製が届いているようで、この定期便を確実に接種につながることで、接種率を上げてきたようです。ロシア製のワクチンは承認されたものの、導入はされなかったようです。
日本もアメリカも危機感を高めた方が良いと思ったのは、モロッコもまた、中国がじわじわと攻めています。モロッコ外務省は1月5日、中国の国家発展改革委員会(NDRC)と、中国が推進する「一帯一路」構想の合同実行計画協定書に署名したと発表しました。”ワクチンからの一帯一路”は何も陰謀論的な発想ではなく、”健康シルクロード構想”等、中国が公に発表した計画から、容易に想像がつくものです。
一党独裁政権の強みは、国民を重視しなくても構わないという点です。農業、不動産、金融・・・さまざまなことが崖っぷちにある中国ですが、勢力の拡大戦略は着々と進めています。これは何も「国民を無視して、浸透工作を重視しろ」といっているわけではありません。ただ、日本のコロナの状況を考えると、ブースターや子どもへの接種等、どう考えても不要な接種にワクチンを使うぐらい余っていて困るというなら、海外で必要としている国に戦略的に寄贈する方がよほど効果的です。
っと、再び、モロッコのワクチン接種状況に話を戻します。
タイムラインの情報では、昨年9月中旬には、対象者全員が完全接種を受けたとなっています。10月末以降、グラフの向きが緩やかになっているのは、対象者の接種が完了したからだと考えられます。
ところが、モロッコ政府は昨年10月21日、ワクチンパスポートを”突然”導入したようです。職場やレストラン等の建物に入る際、国内・国際線に搭乗する際等、”以上に多くの場所”で、ワクチンパスポートが必要になったと言います。これに対し、モロッコ各都市でデモが起きているとのことでした。
このデモの結果、政府は、ワクチン・パスの代わりに、陰性結果を用いることもできると方針転換しました。しかし、実際には、多くの商業施設が陰性結果さえも求めないという状況であるようです。アメリカではスターバックスが従業員のワクチン義務化を導入し、SNSで不買運動が起こっているようですが、モロッコではカフェ・レストラン経営者組合がワクチン義務化に反対しているようです。
新華社通信によると、ブースター接種も400万人近くが受けていたようです。
ところが12月中旬くらいから感染者数が増えます。1月19日には過去5カ月で最多(下記の記事)となったようで、感染の拡大傾向は現在も続いています。
この感染の急増を”ワクチン義務化が適切に行われなかったため”と、評価する人も'いるかもしれませんが、モロッコで広がるウイルスの95%をオミクロン株が占めている中、ブレイクスルー感染するオミクロン株の感染拡大を止める手段として、ワクチン接種が適しているとは思いません。
アフリカの状況から考える、ワクチンの効果、接種義務化の必要性
”オミクロンの感染拡大中の国”としてあげた、チュニジア、モーリシャス、モロッコは、アフリカの中で接種率の高さが1〜3位のところで、この3カ国のみが50%を越えています。
接種率がすでにピークを迎える中、接種率が高い国の方がなぜ感染拡大が止まらないのでしょうか。
今回のリサーチで、この答えはわかりませんでしたが、接種率が低い国で感染率が減少している中、接種率の高い国で感染拡大が止まらないならば、少なくとも、今さらワクチン接種を義務化する意味はないかと思います。
今回、長くなるためとりあげなかった”ボツワナ”。オミクロン株の謎について考えるヒントがありましたので、次回の記事で深掘りしたいと思います。
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